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「ブラッシュアップライフ」などの名作を生み出してきたバカリズム…“脚本家”としての才能を過去作品から紐解く

  • 2024.12.17
バカリズム ※ザテレビジョン撮影
バカリズム ※ザテレビジョン撮影

【写真】笑顔で両手ピースをするバカリズム

お笑い芸人としてバラエティ番組やお笑いライブなどで活躍する一方、ドラマの脚本や書籍の出版、役者など多方面で活動するバカリズム。2025年1月からは、自身が脚本を務める新ドラマ「ホットスポット」(日本テレビ系)の放送もスタートする。そこで本記事では、クリエイティブな才能を発揮し続けるバカリズムの経歴を振り返りつつ、彼が手掛けてきた作品からその才能と魅力について紐解いていく。

大喜利芸人から演者、脚本家と器用にこなすバカリズム

1995年にお笑い芸人としてのキャリアをスタートさせたバカリズム。最初はコンビで活動していたものの、2005年に相方の脱退によりピン芸人に転向。フリップネタ“トツギーノ”で観客の笑いをかっさらい、翌2006年には「R-1ぐらんぷり」決勝に進出した。独特なネタ構成や絶妙にシュールな演技力は話題を呼び、芸人としての“センス”を発揮していく。さらに機転を利かせた言葉選びや斬新な着眼点、ワードセンスを活かして“大喜利”のジャンルでも頭角を現し、「IPPONグランプリ」(フジテレビ系)では最多となる6回の優勝を果たした。

そんなバカリズムの才能はお笑いのみに留まらず、ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」(フジテレビ系)やシチュエーションコメディ「ウレロ☆未確認少女」(テレビ東京系)などへの出演が続き、俳優としてもその才能を発揮。当時、プロデューサーの豊福陽子氏はバカリズムの出演作やコントライブなどを鑑賞し、「“発想力がすごい方”という印象が強かっただけなのですが、自ら作・演出されているコントライブをいくつか見るうちに、書かれるコントの設定の面白さはもちろん、秀逸な会話劇――なかでも、会話がとてもリアルで生っぽいことに衝撃を受けました。ご本人さえ興味があれば、ドラマの脚本も書けるだろうな」と考えたそう。このこともきっかけとなり、豊福氏プロデュース、バカリズム初の連続ドラマ脚本作品となる「素敵な選TAXI」(フジテレビ系)が2014年に放送された。

日常系“あるある”で賞を総ナメにした大ヒットドラマ「ブラッシュアップライフ」

“人生の分岐点”をテーマとし、竹野内豊演じるタクシー運転手と、過去をやり直したい乗客がユーモラスな会話を繰り広げ、タイムトラベルによって導かれる人生の機微を描いた「素敵な選TAXI」。先述の豊福氏のコメント通り、登場人物のちょっとした会話に絶妙なユーモアが隠されているところにバカリズムらしさが感じられる。日常に溢れるコメディを土台に、SFのようなファンタジーな世界観を、バカリズムは職人的なセンスで余すところなく発揮した。

そんなバカリズムの“ちょっとした会話のセンス”が光った作品は、「東京ドラマアウォード2023」で作品賞(連続ドラマ部門)グランプリなど計28冠を獲得したドラマ「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ系)にも通ずるものがある。本作も“人生を何度もやり直す”というSF寄りのストーリーが話題になったが、注目された要素の一つは、登場人物たちの些細な“会話劇”だ。

例えばカラオケ店に遊びに来た主人公・麻美(安藤サクラ)に、バイトスタッフの幼馴染が好意でポテトをサービスしてくれたシーン。“気持ちは嬉しいけど、ドリンクをタダにしてくれる方が実際嬉しい”とこっそり耳打ちし、友人役のみーぽん(木南晴夏)、なっち(夏帆)が共感する。実力派を集めた俳優陣の演技力ももちろんあるが、何よりも脚本において不満をこぼすタイミングや言葉選びにリアリティがある。バカリズムの手腕により、思わず「あるある~」と呟いてしまうほど再現性が高いものに仕上がった。その他にも“シール交換での心理戦”や“学生時代の先生の愚痴”など、誰もが体験したようなイベントを随所に散りばめ、他愛ない日常会話でも視聴者を飽きさせない工夫がなされている。

サスペンスや映画など新ジャンルにも積極的に挑戦し、才能をいかんなく発揮

バカリズムは自身もしばしばドラマに出演し、その存在感を遺憾なく発揮。新感覚SFショートショートドラマ「ノンレムの窓」(日本テレビ系)では、2022年から第6弾まで放送されてきた。“夢と現実”や“現実と非現実”の狭間を行き来する不思議な世界観を表現したバカリズム。作中では“窓先案内人”を演じ、声だけの出演をする斉藤由貴と不思議な掛け合いを展開。本編とは異なるスタジオパートに出演することでその存在感を発揮し、独特なやりとりで視聴者を引き込んだ。また本作についてバカリズムは、“ドラマよりコントを書いているよう”と語っている。第6弾出演者の遠藤憲一や本郷奏多も“台本を読みながら笑ってしまった”とコメントするなど、コント作品としての脚本のクオリティの高さにも定評があるようだ。

また1月に放送されたスペシャルドラマ「侵入者たちの晩餐」(日本テレビ系)では、コメディ路線の強かったバカリズムがサスペンスドラマに挑戦。スピーディーな展開や見事な“伏線回収”など、サスペンスとしてのクオリティはもちろんのこと、「ブラッシュアップライフ」のように、“同じシチュエーションが繰り返され、登場人物の視点ごとにさまざまな見え方を描いていく”というバカリズム独自の手法で見応えのある作品に仕上がっている。

そんな中でも、2022年公開の映画「ウェディング・ハイ」は脚本家・バカリズムとしての“総合力”が発揮された作品と言えるだろう。本作は、結婚式を迎えるあるカップルとそのウェディングプランナーを中心に、新郎新婦の同僚や友人、親戚など“クセ強”な面々が披露宴に集結。彼らの熱すぎる想いが暴走し、披露宴は思わぬ方向へ…というストーリーだ。連続ドラマより短い時間ですべての要素を詰め込む必要がある“映画”においても、バカリズムは多くのキャラクターを登場させ、ひとり一人にしっかりと役割を与えていた。コメディセンスに加え、脚本力やエンタメ性、キャスティングなども含めた総合力が高い作品に仕上げられたのは、バカリズムのセンスと経験があってこそなのかもしれない。

なお、バカリズムが脚本を務める「ブラッシュアップライフ」「ノンレムの窓」「侵入者たちの晩餐」「素敵な選TAXI」「ウェディング・ハイ」は、動画配信サービス・Huluにて見放題配信中。

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