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「毎朝3分あれば弁当を作れる」超多忙オードリー・タンがデリバリーではなく手作りにこだわる納得の理由

  • 2024.12.17

多忙な日々の中、効率よくタスクをこなすにはどうすればいいのか。起業家であり台湾のデジタル担当大臣に抜擢された経歴も持つ“若き天才”オードリー・タンは、さまざまなツールやテクニックを駆使して時間管理をしているという。約2年ぶりの最新刊『オードリー・タン 私はこう思考する』(かんき出版)より、彼女が実践する時間管理術について紹介する――。

台北で開かれたプレスカンファレンスで発言するオードリー・タン氏。
台北で開かれたプレスカンファレンスで発言するオードリー・タン氏。
朝目覚めたら最初にすること

2020年、オードリーが「ポモドーロ・テクニック」で時間を管理していることがメディアで報じられると、社会はこの話題でもちきりになった。多くの人がその効能を知るとともに、オードリーも改めてよさを認識した。スマートな時間管理術は明晰な思考の末にたどり着いた方法であるだけでなく、仕事に縛られず、自分の人生の主導権を握るためのカギでもあるのだ。

デジタルの世界に精通したオードリーにとって、業務効率を向上させる方法はいくらでもあり、「ポモドーロ・テクニック」は数ある時間管理術のうちの一つにすぎない。オードリーの1日の過ごし方を知れば、政務で多忙な日々のなかで効率よく仕事をこなしつつ、生活の質の向上や自らの学びのための時間をいかに生み出しているかがよくわかる。

オードリーがリモートワークをしていたころ、異なるタイムゾーンの同僚たちとオンラインで仕事をするため、眠りにつくのはいつも明け方だった。だが、彼女は通常8時間の睡眠を必要とする。政務委員になってからは毎朝9時に出勤しなくてはいけない。オードリーは1日の時間を次のように配分している。

「毎朝7時前後に目覚めますが、すぐにはベッドを出ません。昨夜の夢で見た新しい考え方やアイデアを忘れないうちに書きとめます。書き終えたらベッドを出て、朝食を食べ、昼食用の弁当を用意して出かけます」

弁当が3分以内に出来上がる簡単アウトソーシング

オードリーの時間管理は仕事や睡眠だけにとどまらない。毎日の弁当に使う食材の購入も専門業者にアウトソーシングすることで、自分の時間を自分でコントロールできるよう努めている。弁当の準備にはほとんど時間をかけない。せいぜい10分もあれば終わる。

2021年はじめ、オードリーのオフィスで取引企業の説明会が開かれた。それぞれのチームがクリエイティブなアイデアを発表するなか、目を引いたのは「享厨好食シオンチューハオシー」というスタートアップ企業のサービスだった。栄養士が1日3食の食事プランを立ててくれるというもので、時間の節約と食生活の改善が期待できる。

オードリーが享厨好食に食材を発注すると、毎週、希望のメニューに応じ、洗ってカットした食材を自宅に配送してくれる。届いた食材を冷蔵庫に入れておくだけでいい。朝起きて、その日の弁当に使う食材を開封して鍋に入れたら、10分かからずに完成する。

最近では弁当作りにかける時間を3分以内に抑えている。「最近は混ぜるだけのメニューにしているので、ますます短時間になりました。2分か3分あれば十分です」

オードリーに言わせると、飾り切りや特別な盛りつけが必要な場合を除き、食材を切るのが自分でもほかの人でもたいした違いはない。食材の準備に自分の時間を費やす必要はないのだ。機械的な作業は専門業者に外注し、調味料の配合や食材同士の組み合わせといったクリエイティブな部分は、調理する人が自由に決めればいい。

健康的な弁当箱を準備している女性
※写真はイメージです
デリバリーよりも早く効率よく健康的な食事とは

ここ数年、フードデリバリーサービスが急速に成長し、より手軽においしい料理を食べられるようになった。しかし「デリバリーでは遅いのです」とオードリーは言う。

彼女にとっては、いつでもどこでも、食べたいと思ったときにすぐに作って食べられることが大事。思ってから食べるまでの時間はとにかく短くなければいけない。専門の栄養士が下ごしらえした食材があれば、食べたいと思った瞬間にすぐ冷蔵庫から出して調理できるため、デリバリーを待つよりも早い。

「食材の準備がすんでいれば、料理の時間は短縮できます。健康な生活習慣作りにも役立つと思います」

仕事で疲れているからとデリバリーを頼む人は多い。SNSでおいしそうな料理の投稿を見ると、つい揚げ物を頼んでしまう。こういう生活は気づかないうちに体に大きな負担をかける。栄養士が選んだ食材を届けてくれたら、栄養不足や食べすぎの心配はなくなり、メンタルにもいい影響が出る。

食材を外注することは、時間の節約と健康のほかにもメリットがある。帰宅してから自分で食事の準備をすることで仕事の緊張感から解放され、リラックスできるのだ。かつては音楽を聴いたり、ネットにコメントを書いたりするのが最高のリラックス法だったが、料理することで緊張がほぐれるのを実感してから新たな習慣になった。

世界中が注目した「ポモドーロ・テクニック」

朝、弁当を作ったあと、オードリーはどのように1日の仕事をこなしているのだろうか?

まず、出勤前にLINEを確認し、退勤後にもう一度確認する。しかし、勤務中は決してLINEを見ない。LINEでもワッツアップ(WhatsApp)でも、多くの人は深く考えずにメッセージを送り合い、互いの注意力を奪いつつ文字の入力に多くの時間を費やす。

文字を打ちながら文章を考え、さらにリアルタイムでの返信を求められる状況では集中力が削がれ、一つの物事を効率よく処理することが困難になる。だから1日に2回しかLINEを開かない。自分に伝えたいことがある人には、じっくり考えてから伝えてもらうようにすることで、自分の時間を浪費せずにすむからだ。

仕事を始める前に、ポモドーロ・テクニックに基づき、1日の仕事の時間をいくつかの「ポモドーロ」(イタリア語で「トマト」の意)に分けて業務の計画を立てる。

1987年、当時大学生だったフランチェスコ・シリロによって考案されたポモドーロ・テクニックは、「25分間の作業+5分間の休憩」というシンプルな時間管理術だ。

世界中で話題になったポモドーロ・テクニックだが、実は当時の台湾ではあまり関心を集めなかった。2020年にパンデミックが起き、世界中でリモートワークが盛んになったころ、ベテランのリモートワーカーであるオードリーがこのテクニックを活用していることをメディアが報じて、初めて注目を集めるようになった。

トマト型のキッチンタイマーは、勉強と仕事の先延ばしと戦う
※写真はイメージです
5分でメール処理する高速テクニック

タイマーをかけた25分間、オードリーは一つの仕事に集中する。メールは見ないし、スマホの通知や着信にうっかり反応してしまわないよう通知音を切っておく。25分後、一つの「ポモドーロ」が終わったら5分間の休憩とし、この間にメールを確認して返信する。5分間の休憩後、再びタイマーをセットして次の「ポモドーロ」を始める。

このテクニックのよさは、一つの「ポモドーロ」の時間が長すぎない点だ。25分間、メールに返信しなくても相手に失礼にはあたらない。目的はとにかく集中して仕事をすることなので、25分間は決して手を止めてはいけない。

しかし、突然の地震など予測できない事態が起こって仕事が中断したときはタイマーを止めて、次の25分に回す。今日は七つの「ポモドーロ」をこなす予定だったとして、四つ目の仕事が中断されたら、五つ目の「ポモドーロ」を四つ目とカウントする。

5分間の休憩時間に、LINEではなくメールを確認するのはなぜだろうか?

メールは1行書くごとに送信ボタンを押すのではなく、一段落のまとまった文章になって送られてくる。オードリーは25分間の仕事のあと、5分間でメールに返信する。きちんと整理して書かれたメールの文章を読めば、2分以内に処理が可能かどうか瞬時に判断できる。可能なものはすぐに処理し、不可能なものは適任者を探してメールを転送し、対応を任せる。だから、短い時間でほとんどのメールに返信できるのだ。

午後7時までの勤務時間内にすべてのメールに目を通すが、退勤後は自分の時間として一切メールを見ない。これがオードリーの1日の過ごし方だ。自分の時間を自分でコントロールし、時間に振り回されない。できる限り効率的に「今日の仕事は今日終わらせる」のが目標だ。

大脳からの警告を遮断する集中メソッド

オードリーがポモドーロ・テクニックと併用しているのが、こなすべきタスクの重要度と緊急度を整理して管理する「GTD(Getting Things Done)メソッド」という手法だ。

GTDは、役員や管理職向けのコーチングを専門とするデビッド・アレンが2001年に『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』(二見書房)で提唱したものだ。多くの人々の経験と認知科学研究に基づくデータ検証結果から、シンプルで実用的な行動管理メソッドを生み出した。

この手法が生まれた背景には、頭のなかにつねにいくつものタスクを抱えているという現代人の事情がある。仕事をしている最中にも、次にやるべきことが割り込んできて集中力を奪っていく。GTDメソッドに従いタスクをすべて書き出すことで、大脳から「あのタスクが終わっていない」という警告が鳴り止み、集中して今の仕事を終えられるようになる。

オードリーの時間管理術は、簡単に言うとポモドーロ・テクニックとGTDメソッドからなっている。GTDでは特に二つのステップを重視する。一つは「把握」のステップ。新しいタスクが入ってきたら頭のなかに留めておかず、紙に書き出す。

もう一つは「整理」のステップ。やるべきことを定期的に整理する。重要度と緊急度によってやるべきことを分類してから、ポモドーロ・テクニックを使い、集中して処理することで効率的な仕事のリズムが作れる。

時間の管理
※写真はイメージです
自分になじむ最適な方法を見つけて

朝9時から夕方5時まで働くというオードリーの1日は、一見すると普通の人と同じように思える。しかし、ポモドーロ・テクニックや食材デリバリーの利用といった行動から、時間の枠組みを再構築して時間の主導権を握っていることがわかる。この考え方は衣食住を問わず、彼女が生活のなかで最も重要視しているものだ。

人の習慣はそれぞれ違う。チャンネルの切り替えがうまく、一度にたくさんのことができる人もいて、それ自体は決して悪いことではない。ただ、オードリー自身はそういうタイプではない。「傾聴」「学習」「理解」「反応」の四つの段階を切り替えるのに一定の時間がかかる。

オードリー・タン『オードリー・タン 私はこう思考する』(かんき出版)
オードリー・タン『オードリー・タン 私はこう思考する』(かんき出版)

新しい刺激に出会うと感情が動かされる。だから自分に一定の時間を与え、感情を落ち着かせてから改めて処理することにしている。

人は自分を正しく知るべきだとオードリーは考える。特に、大人は自分の認知モデルをある程度、理解しておく必要がある。自分の感情・認識・注意力のバランスを把握し、自分にもっともなじむ方法を見つけ出す。一度に一つのことしか処理できないなら、一つをやり終えてから別の作業に移る。

今は便利で使いやすいツールがたくさんあるから、それらを利用して時間配分を決め、一つひとつの仕事を着実に終わらせる。主体的に時間の枠組みを把握し、自分に最適なペースに組み直すことで、集中していくつもの仕事を終わらせることができる。これが効率的に仕事をこなす秘訣だ。

オードリー・タン(おーどりー・たん)
元台湾デジタル担当政務委員(閣僚)
1981年台湾台北市生まれ。幼い頃からコンピュータに興味を示し、12歳でPerlを学び始める。15歳で中学校を中退、プログラマーとしてスタートアップ企業数社を設立。2005年、トランスジェンダーであることを公表し、女性への性別移行を始める(現在は「無性別」)。米アップルのデジタル顧問などを経て、2016年10月より史上最年少で台湾行政院に入閣、無任所閣僚の政務委員(デジタル担当)に登用され、部門を超えて行政や政治のデジタル化を主導する役割を担っている。

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