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紫式部『源氏物語 三十九帖 夕霧』あらすじ紹介。亡き親友の妻に恋する夕霧。真面目人間だった夕霧の浮気心が暴走し…!?

  • 2024.12.16

平安時代の恋愛小説『源氏物語』を読んだことはありますか。国語や歴史の教科書に掲載されていたり、作者・紫式部の人生がドラマ化されたりして、興味がある方も多いかもしれません。どんな物語なのかを知ることができるよう、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第39章『夕霧(ゆうぎり)』をご紹介します。

『源氏物語 夕霧』の作品解説

『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

『夕霧』は、父・源氏とは対照的に、恋も仕事も真面目な息子・夕霧の心に湧いた浮気心が暴走し、意中の相手・落葉の宮を手に入れるまでの物語です。それまで女遊びをしてこなかった夕霧は、落葉の宮を口説き落とすことができず、強引に夫婦として生活を始めます。抵抗した落葉の宮が鍵をかけて閉じこもったり、妻の雲居雁は怒って実家に帰ったり、夕霧自身も懲り懲りだと呟いたり、堅物男の色恋沙汰がどこか滑稽に描かれています。夕霧・雲居雁の夫婦喧嘩や、夫に嫌味を言う“肝っ玉母ちゃん”な雲居雁、イクメン気取りの夕霧と、見どころの多い章です。

これまでのあらすじ

夕霧の親友である柏木の死から1年が経った。夕霧は柏木の遺言で柏木の妻・落葉の宮とその母・一条御息所を見舞ううち、落葉の宮に心惹かれていった。夕霧の妻・雲居雁は、夕霧の浮気心を知り、夜遅くに浮ついて帰宅する夫を責めた。

『源氏物語 夕霧』の主な登場人物

光源氏:50歳。夕霧の父。真面目な息子を自慢に思っている。 紫の上:42歳。源氏が最も大切にしている妻。体調を崩し、療養を続けている。 女三の宮:24〜25歳。朱雀院の三女。柏木との密通が源氏に知られ、苦悩の末出家した。 夕霧:29歳。源氏の息子。故柏木の妻・落葉の宮に恋心を抱く。 落葉の宮:朱雀院の二女で、女三の宮の姉。 雲居雁:31歳。幼い頃からの恋を成就させ夕霧と結婚。前太政大臣の娘で故柏木の妹。

『源氏物語 夕霧』のあらすじ

生真面目な人という評判の夕霧であったが、未亡人となった落葉の宮を見舞っていくうちに、いつしか恋心が生まれていた。とはいっても色めいた態度を出すわけにもいかず、何か手はないかと思いあぐねているうちに落葉の宮は母・一条御息所の病気療養に付き添い、小野(比叡山の麓)にある別荘に移っていった。

小野の別荘まで見舞いに訪れた夕霧は、なかなか心を開かない落葉の宮に強引に近づき、落葉の宮のすぐそばで一夜を明かした。落葉の宮は頑なに夕霧を拒み、ふたりの間に情事こそなかったが、朝帰りをする夕霧の姿を見た僧侶が、落葉の宮の母・一条御息所に事の次第を報告し、御息所はふたりの関係を誤解してしまう。

皇女として生まれた落葉の宮は、本来は独身を通すべきであるにもかかわらず、柏木の妻となり愛のない結婚生活を送った上に夫に先立たれ、その上他の男と関係を結んでは世間から軽々しくみられるだろうと一条御息所は煩悶した。物思いに沈む落葉の宮を問いただすこともできず、ふたりの関係を認めざるを得ないのかと考えているところへ、夕霧から落葉の宮に宛てた手紙が届く。

通常の結婚となれば三日間通い続けるはずなのに、手紙だけを寄越した夕霧の不誠実に憤り、御息所は病をおして夕霧への返事の手紙を代筆した。だが夕霧がその手紙を開くや否や、妻・雲居雁が手紙を奪い隠してしまう。病の苦しみの中で御息所が書いた文字はすぐに判読できず、夕霧は隠されてしまった手紙の返事が書けない。翌日、手紙を見つけ出し慌てて返事を出すが、手紙の返事もなく一夜限りの関係だったのだと夕霧を恨みながら、御息所は亡くなった。夕霧は御息所の葬儀の世話をし、落葉の宮を慰めるが、落葉の宮はただ茫然とするだけであった。

日を改めて弔問に訪れても一向に心を開かない落葉の宮に、夕霧は次第に不満を募らせていった。これ以上口説いても落葉の宮を手に入れることができないと思った夕霧は、一条邸(落葉の宮の自邸)を改築し、落葉の宮を連れ戻した。落葉の宮は、塗籠(土壁に囲まれた部屋)に鍵をかけて閉じこもり意に添わぬ結婚に抵抗したが、夕霧は結局強引に契りを交わし一条邸で夫婦生活を始めた。

この状況に、夫婦関係の破局を覚悟した雲居雁は、姫君と幼い子どもたちを連れて実家に戻ってしまった。夕霧は雲居雁の実家に迎えに行くが、妻の怒りは解けず連れ戻すことができない。雲居雁の父は落葉の宮へ使いをやって嫌味を言い、雲居雁は実家に戻った後も沈み込んでいた。雲居雁のもとへは、夕霧の唯一の愛人・藤典侍(とうのないしのすけ・源氏の家臣である惟光朝臣の娘)から慰めの手紙が届いた。雲居雁と夕霧の間には7人、藤典侍との間には5人の子どもに恵まれていた。

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