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「ファッションは私たちの生活に寄り添うべき」──デンマーク発ラ バガテルが自転車で運ぶ、テキスタイルの物語【若手デザイナー連載】

  • 2024.12.16

今から約3年前にマレーネ・マリングが立ち上げたラ バガテル(LA BAGATELLE)は、ヴィンテージなどの貴重なテキスタイルを用いたユニークピースを展開するレーベルだ。初参加となった2025年春夏コペンハーゲン・ファッション・ウィークでは、ラズベリーやチェリーといったフルーティーなカラーパレットにゴールドの煌めきを添えた最新コレクションを披露し、その表情豊かなラインナップでインサイダーたちの心を射止めた。

ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
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ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
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ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
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ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
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ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
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ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
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ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
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ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。
ラ バガテル 2025年春夏コレクションより。

「デザイナーになりたいと思ったことはありません。でも、服がほかの何よりも好きでした」と話すマリングは、デンマーク生まれ。10代の頃にロンドンへ移り住み、そこでファッション史の修士号を取得した。

「衣服を通じて物語を語ることにいつも惹かれていた」という彼女は、デンマーク版『ELLE』とボニエ・パブリケーションズの『COSTUME』誌の編集長として、さらにはファストファッションブランドのヴェロ モーダ(VERO MODA)のクリエイティブディレクターとして、多彩な視点からその物語を紡いできた。また、広告会社のオーナーでもある彼女は、2005年から2017年までデンマークのスタイル誌『Cover』とその関連誌である『Cover Kids』、『Cover Man』、『The Horse Rider's Journal』の発行を手がけた経歴も持つ。こういった多岐にわたる編集の経験が、ラ バガテルでのクリエイションに影響していることは驚くには当たらないだろう。

すべての始まりは、パンデミック中に出合った日本とネパールのテキスタイル

ラ バガテルのアイデアがまとまり始めたのは、パンデミックにより外出が規制されたときのことだった。マリングが本の企画から気を紛らわせていたとき、ある男性から買い取った70年代のネパールと日本のヴィンテージ生地に目が留まったという。

オフィスに小さなファブリックロールがあったんです。(企画に)締め切りなどはなかったから、ある日これを使って何か美しいものを作ったらいいかもと思い立ったんです。ネットに『誰かテーラーを知りませんか』と投稿したら、いろんな人が返信をくれて……。それがやる気になったというか。みんなに聞いたんだから、実現しなくちゃいけない、という気持ちで始めました。とても直感的でしたし、パーソナルなことをやりたいという想いがありました」

ラ バガテルのデザインは、すべてテキスタイルから始まる。ジャケットは100年前の日本製生地で仕立てられ、ドレスはスペインのウエディングレースで縁取られるなど、世界中から入手した多様な素材がそれぞれのアイテムに用いられている。一方のシルエットは伝統的で、重ね着しやすいよう考えられており、全体的に70年代のリヴ・ゴーシュやボーホーを想わせる雰囲気だ。

スタイルの種類はそれほど多くはないが、実にさまざまなファブリックで仕立てられており、それぞれにシャーロット・ランプリング、ジョーン・ディディオン、ジャクリーン・ビセットといったインスピレーションとなった人物の名前が付けられているのも特徴のひとつ。生地は世界中から取り寄せているが、アイテムはすべて地元コペンハーゲンで作られ、テーラーから直接受け取ったものを自転車でアトリエへと運んでいる。「チームが自転車で(出来上がったルックを持って)アトリエに到着するとき、写真を撮っていろんな人に見せたくなりますね。信じられないかもしれませんが、これが私たちのやり方なんです」

オーダーメイドの服作りは「本当に古風」だとマリングは言うが、それでも彼女はビジネスとして成立させる能力にも長けている。彼女は着実にコミュニティを築き、オンラインで世界中の顧客にリーチするという、モダンな手法にも積極的だ。

アトリエ・ショップの様子。
アトリエ・ショップの様子。

まるでおとぎ話に出てくるかのようなアトリエは、フレゼレクスベアの「リトル・パリ」と呼ばれる通りに面した築200年の建物のなかにある。これまでアトリエは週に1回、または予約制で顧客に開放されていたが、最近では通常の営業時間を設けることになった。とはいえ、プライベートなアトリエに招かれたような親密な感覚は変わらない。

「物語を伝えたい」「女性をエンパワーしたい」という想いが原動力に

「私にとって重要なのは、成長やビジネスプランを持つことではなく、自分が心からわくわくする服を作ることです」とマリングは言う。そのほかに彼女の原動力となっているのは、「物語を伝えたい」「女性をエンパワーしたい」という想い。彼女はヴァージニア・ウルフの『自分だけの部屋』や『ダロウェイ夫人』といった名作を例に挙げ、「女性の内面に興味がある」とも続ける。

「ほかのみんながやっていることやプロセス、社会で起こっていることをいつも考えているような雑誌編集の仕事出身なので、ここでは深く個人的なことをやってみたいと思いました。ブランドをやりたいとかではなくて、心からいいと感じられるもの、嘘偽りのない何かをやりたかったのです」

ブランド名の由来となった家の「バガテル」。
ブランド名の由来となった家の「バガテル」。

ブランド名は、デンマークの建築家ゴットリーブ・ビンデスボルの設計によるマリングの家「バガテル(Bagatel)」が由来だ。「ここでやることはすべて、この家のなかに収まるようなものにしたいと思っていました」と彼女は話す。大きければ大きいほどいいという考え方が、ファッション界で疑問視されているのは事実。デジタル化が進むほど人間らしさが重要になるのと同じで、グローバルになったこの世界ではよりローカルなものが求められているというのを、彼女は感じ取っているのかもしれない。

また、「バガテル(bagatelle)」という言葉自体にも、いくつかの意味がある。一般的には「ささいなこと」を意味するが、「軽やかな文学作品や音楽作品」を指すことも。小さくも美しいものを表現するという点で、これはマリングが目指すものにふさわしく感じられるネーミングだ。

「私が追い求めているのはエフォートレスなエレガンスなのですが、それはコペンハーゲンの長い伝統にも通じている気がします。それから、ファッションは私たちの生活に合っていなければならないとも思っています。すてきに見られたいけど、そのために必死であるようには見せたくないですよね。それに、私たちの生活に実用性は欠かせません。子どもたちを学校へと送り出したら仕事の会議に出席し、その後は友人とディナーへ出かけたりもする。そんな一日を、たったひとつのルックで過ごせたら……。私たちの生活はファッションを中心にまわっているわけではないので、ファッションが私たちの生活に寄り添うべきなのです」

Text: Laird Borrelli-Persson Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.COM

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