知ってた? りんごにまつわる豆知識を解説
紀元前から食べられ、人類が口にした最古の果物だと言われているりんご。西洋では「1日1個のりんごは医者を遠ざける」ということわざもあるほど、身近で栄養価が高いマルチフルーツとして知られています。この記事では、りんごにまつわる豆知識と栄養について解説したいと思います。
りんごの収穫期は、秋から冬にかけて。近年では貯蔵技術の発達で品質や風味を維持したまま長期保存が可能になり、ほぼ1年中手に入るようになりました。
りんごの皮がベタベタしてワックスをかけたように光っているのは完熟のサイン。「油あがり」と呼ばれ、りんごから分泌される天然成分で果実の鮮度を保ったり、病原菌が侵入するのを防いだりする役割をしています。人工的なワックスではないので、安心してください。
また、切ったときに芯に近い中央部に「蜜」と呼ばれる半透明部分があるりんごも十分に熟しているサイン。でも、「蜜」の正体はソルビトール(糖アルコールの一種)で、実は砂糖の60~70%程度の甘さしかなく、この部分が特別に甘いわけではないのです。
「1日1個のりんごは医者を遠ざける」と言われる理由
風邪を引いたときや体調が優れないときに、りんごのすりおろしを食べた経験がある人も多いのではないでしょうか。
りんごの甘み成分は果糖やショ糖などで、体内で素早くエネルギーに変わる特性があります。酸味は、りんご酸やクエン酸によるもので、エネルギー代謝を助ける働きがあります。つまり、りんごの甘み・酸味ともに、疲労回復に役立ちます。風邪で発熱すると体力を消耗するため、りんごのすりおろしは理にかなったフォローアップ食と言えそうですね。
また、水溶性食物繊維であるペクチンも豊富で腸内の善玉菌のエサとなり腸内環境を整える働きがあるので、お腹の調子が悪い時にもすりおろしりんごはおすすめです。なお、意外ですが果物の中ではビタミンCは少なめです。
さらに、りんごには多彩なポリフェノールが含まれ、総称して「リンゴポリフェノール」と呼ばれています。
その代表格が、プロシアニジンと呼ばれる成分。強い抗酸化作用があり、高血圧や動脈硬化などの予防効果や、抗アレルギー作用、脂肪吸収抑制などの機能性が注目されています。このプロシアニジンは皮と果肉に含まれています。また、りんごの赤い色素もポリフェノールのアントシアニンで、眼精疲労の回復や生活習慣病を招く活性酸素を抑える働きが期待されています。こちらは皮と皮の下に多く含まれるので、さまざまなポリフェノールの恩恵を受けたい場合は皮ごと食べるのがおすすめです。
なお、りんごの切り口が空気に触れると変色するのは、ポリフェノールの酸化によるもの。抗酸化力の一部が失われてしまったことになるため、切ったら早めに食べるようにしましょう。
りんごの切り方は、縦のくし切り・横の輪切りどちらが正解?
りんごで一番甘い部分は、おしり(底)に近い部分と中央のタネの周り。逆にヘタの付いた頭の部分が甘さは低めです。そのため、縦方向のくし切りにすると甘みが均一に感じられます。かたい皮の食感を軽減したい場合は、横方向に輪切りにすると気にならなくなり、タネ周りぎりぎりまで食べられます。甘みと見た目重視なら縦のくし切り、りんごの栄養を皮まで余すことなく食べたいときは横の輪切りと使い分けてはいかがでしょうか。
りんごの保存方法について
最後に、りんごは植物の成長を促すエチレンガスと呼ばれるホルモンの一種を収穫後も多く放出する性質があります。そのため、裸のまま他の野菜と一緒に冷蔵庫の野菜室に保存すると、特に葉物野菜の劣化が早くなってしまいます。
冷蔵保存する場合は、1個ずつ新聞紙やキッチンペーパーに包んでからポリ袋に入れて保存するようにしましょう。逆に、その特性を活かして、未熟で固いキウイや青いバナナをりんごと一緒にポリ袋で保管すると追熟が進む効果がありますよ。
※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』NHK出版,2019、一般社団法人 日本果樹種苗協会(果種協)ほか監修『図説 果物の大図鑑』マイナビ出版,2019、レジア編『日本の食材図鑑』新星出版社,2018、三輪正幸監修『からだにおいしい フルーツの便利帳』高橋書店,2015
(野村ゆき)