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私を救うからあげ定食。白米3杯食べた私は最強の存在になっていた

  • 2024.12.16

私はある定食屋に命を救ってもらっている。
白米のお代わり自由、おつけもの、セルフサービスの水、そして米にピッタリのおかずたち……。

◎ ◎

私は高校生の頃からメンタルの不調を抱えて大人になった。大人の定義がなにかということは置いておいて、立派に職場の人間関係や10を越える連勤に心をやられる大人になったのだ。

夏場は特に厳しく、早朝から遅くまで、炎天下で責任を果たさなければならない。そして休みなく訪れる次の1週間が私の心を蝕んだ。
高校の同級生は土日休みに集まって、キラキラ楽しんでいる。仕事は5時に終わり、ジムに行ったり美容院に行っている。私は汗だく、メイクも髪もボロボロで疲れ果て、今日何を作って食べればいいのかすら分からなくなっていた。昨年までの2年間は特に、常に希死念慮が私に重苦しいベールをかけていた。

その仕事を辞められないかって?そんな簡単に人生は上手くいかない。今年もしっかりその役職は課せられた。
このままでは私は本当に料理以外で包丁を取り出すのではないかと思った。だから、そうなる前にたくさんやりたいことをやろうと思った。

◎ ◎

私は自分に対してストイックだった。自炊は野菜中心で頻度も高い。コスメも決まったものを買う。無くなるまで次にはあまり手を出さない。もちろん人付き合い以外の外食はもったいなくて罪悪感に襲われる。我慢こそ美徳であった。
そんな私がやりたいことを叶えるために、自分にお金をかけたきっかけが、疲れ果て、夕飯に困った時にふと入った定食屋のからあげ定食だった。

からあげ定食。サラダとお味噌汁もついているし、ご飯もお代わりし放題。炊飯器を持たず鍋で米を炊いていたので、無限の白ご飯を出す機械は革命的だった。おつけものを口に入れると身体から抜けていった塩分がチャージされ、脳に身体の仕組みを語りかけてくる。

そしてなによりからあげは外はカリカリ、中はジューシーで私好みだ。ありきたりな表現が使い続けられる理由を体感した。世界でいちばん美味しい食べ物だろう。味変だってできる。贅の限りを尽くせる。なんて温かいんだろう。いつもなら億劫な後片付けも、店員さんがしてくれて、感謝で涙が出るほどだった。私はホクホクとした気持ちで家路についた。
そして人生が変わっていく。

自分にしっかりご飯を食べさせる。というのは出来ているように思えて、出来ていなかった。思えば同年代の女の人と体型や肌を比べては、「これ以上食べたらどうなることか」と鏡に映る私が語りかけてくる毎日だった。

◎ ◎

自分のために白米3杯食べた私は最強の存在になっていた。食べたら走ればいい。毎朝運動するようになった。欲しかったあのコスメ、頑張って運動したんだし買ったらいい。憧れのアイシャドウパレットを買った。羨んでいた生活は、土日がなくても自分なりに作っていけることに気づいた。

連勤を頑張ったらからあげ定食。視界の端に私を責める黒い犬が見え始めたらからあげ定食。何を食べたらいいか分からなくなって、コンビニを3週したらもうからあげ定食。そうするうちに、自分になにかしてあげることが上手になった。「あ、これを我慢してて今ちょっとしんどいんやわ」という声に気づけるようになった。もっともっと、私は自分を甘やかしても良かったのだ。ずっとやってみたかったまつげパーマの予約を取った。

◎ ◎

今年はまだうずくまって泣いていない。相変わらず仕事はメンタルを削りにくるが、私には定食屋がある。そして私は私のために動く力もつけた。最強になったのだ。これからも最強を更新する予定だ。

今日はからあげ定食から少し浮気をしたが、やっぱりからあげ定食がいちばんだ。茶碗を持ち、席を2回立っている口では言えないが。
今日も命を救ってくれてありがとう。

■みみ子のプロフィール
こころと対話するおしごとをしています。シュークリームを1日5個食べたいです。砂糖がたくさんかかっていてバリバリになっているとなおよし。

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