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誰にも旧姓を知られず新姓で呼ばれる毎日を想像したら寂しくなった

  • 2024.12.16

「あなた、名前は?」

私の職場では、お客さんからの問い合わせ対応の際に必ずしも名字を名乗らなくてもよいとされている。

◎ ◎

会社名のみ名乗っていると、受電対応の最後に「あなた、名前は?」と聞いてくるお客さんがたまにいる。「次回もまたあなたにお願いしたいから」と言って聞いてくれた方もいたが、大半は何かあった時に「〇〇さんって方にこう言われたから」と責任の所在を明らかにしたいとか、前回と同じ人に対応してもらうことでスムーズにやりとりをしたいからだろう。

別にこれは当然のことで、しっかりした人なんだなと思う。決して悪意があって私の名字を聞いているわけではない。そうわかってはいるけれど、私はこうして最後に名字を聞かれるのが前々からなぜか苦手だ。なんだか人質になって脅されているような気持ちになる。しかし結婚して名字が変わった今は違う。「あなた、名前は?」と聞かれたらさほど抵抗なく名乗ることができる。内心「まあそんな名前の人間はいないんですけどね」と思いながら。

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そういうわけで、戸籍上は夫の名字になり、職場では旧姓のまま働いている現在の状況を、私は結構心地よいと感じている。「結婚するときになぜ女性ばっかりが名字を変えないといけないのか」「名字が変わることで別の人間になってしまう気がする。今までの自分の存在が消えてしまう感覚になる」そんな声から夫婦別姓を望む人もいる中、名字が変わることをあまりマイナスに考えていなかった方だと思う。私は幼少期に父親が婿養子に変更したことの関係で一度名字が変わっていて、結婚は二度目の改姓だった。改姓に人より抵抗がないのはそのような背景もあったのかもしれないが、夫婦別姓が認められるまで入籍は見送って事実婚にするかもと話す知り合いには、そこまで名字って大切?大袈裟じゃない?という印象すら抱いてしまった。

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最近結婚した友達から、転職を考えていると相談を受けた。結局、今すぐには転職しなくては良いのではないかという話に落ち着いたのだが、最後にぽつりと呟いた友達の言葉が印象に残っている。

「今の会社は私もめぐみと同じように旧姓のまま働いてるからさ、次に転職したらとうとう今の名字で呼んでくれる人は誰も居なくなっちゃうんだろうなぁ」

そう言われたとき、はっとした。自分が同じ状況になったとき……つまり、転職して、今の名字を名乗って、誰にも旧姓を知られないまま現在の姓で呼ばれる毎日。その場面を想像したら、少し寂しい気持ちになった。自分は名字に拘りを持っていない派だと思っていたのに、実はそうではなかったらしい。もうお客さんから名前を聞かれて人質気分にならなくなったことを喜んでいたはずなのに、私もまだ旧姓に“自分”を感じている。そして旧姓で呼ばれる機会があることを嬉しいと思っている。

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なんだ、私結構旧姓のこと愛してたんじゃないか。それに気づいたら、夫婦別姓が認められるまで入籍を見送りたいと話していた知り合いの気持ちがほんの少しわかるような気がして、大袈裟なんて思ってごめんなさいと思えてきた。

今の名字が嫌いなんてことはないが、元の名字を大切にしたい人の気持ちは無視せず寄り添ってあげられる社会になってほしい。もちろん、私のようにふたつの名字を名乗って、良いところだけ齧って生きていきたい人もいるし、結婚したぞという実感を保つために改姓どんとこいの人もいる。

名前なんて、名字なんて、個を認識するためのただの記号?けれどその個に感情があるのなら、自分の記号をどうしていきたいかは選べたっていいはずだ。

■はやおきめぐみのプロフィール
早起きが得意なOL。悩みやすい性格を自覚しています。同じように悩む方の一助になれたら。365日お寿司が食べたい。X:@hyokmgm

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