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その時季、食すべき正統派加賀料理で一献。金沢、ハレの酒場〈よし村〉

  • 2024.12.15
その時季、食すべき正統派加賀料理で一献。ハレの酒場、金沢〈よし村〉

長い長い品書きは、腹の足しにはならないが、目の保養になる。ほぼ毎日、店主が巻紙に書き起こしているものだ。その内容に、客の食欲は翻弄される。ぶり大根、万十貝、金時草……。その数、およそ90種。その時季、金沢で食すべき食材が網羅されている。すっぽんスープ、蓮蒸し、白魚玉〆、治部煮、どじょう柳川、ふぐ唐揚げ、かきフライ……。調理法もバラエティに富む。

金沢〈よし村〉手書きのメニュー表
カウンター上にドーンと張られたこの品書きにまず度肝を抜かれる。どれもこれも魅力的!

ラインナップといい、印象的な朱塗りの立派なカウンターといい、また、海外のレストランガイドでも高評価を受けるここは、酒場、とは言い難いかもしれない。地元の名士もやってくる割烹である。金沢の中心街・片町の一角にあって、一見(いちげん)には入りにくいような、しっとりとした店構え。接待にも向く個室も2階席もある。

それゆえ、この特集で紹介するには多少の躊躇(ちゅうちょ)があったが、「アラカルトで気軽に酒場使いしていただければ」という店主の言葉に甘えることに。ならば、大きな気持ちで、百万石城下の旦那衆になった気分で一献傾けたい。この店構えにしては、案外リーズナブルな価格で楽しめるのもありがたい。一人飲みももちろんいいが、家族を連れてきたくなるような店でもある。

金沢〈よし村〉外観
片町エリアの大工町の夕暮れ。〈よし村〉のフグ提灯に明かりが灯る。暖簾の色も粋だ。

店を仕切るのは、2代目店主・吉村良一郎さん。ともに板場を守るのは、先代から仕える板長の島崎茂さんだ。注文が入るや、連携プレーで手際よく調理が進む。せっかく金沢に来たのだから、北陸の魚を食べたいという向きに勧めたいのが、なめらの骨蒸(こつむ)し。「なめらはハタのこと。刺し身もいいですけど、今日みたいに寒い日は骨蒸しがいいかもしれませんね」と店主。

金沢ビギナーでも金沢旅リピーターでも、カウンター越しに店主にあれこれ聞きながら、注文する料理を決めることができるのも、このスタイルの良さである。

加賀野菜と旬の魚を中心に北陸の滋味を味わい尽くす

ふと、カウンター横の壁を見上げると、柔和な笑顔の男性の絵が。先代の肖像画だという。先代は大阪出身で、京都や宝塚で修業したのち、妻(つまり当代の母)の出身地近くの金沢で店を開いた。以来今日まで日々、手書きのメニューを書き上げるこのスタイルも、関西の割烹で修業した先代から受け継いだ通りだ。

金沢〈よし村〉店主
心鎮めて品書きを記す店主。慣れているとはいえ、収めるべき中に全品を入れ込むワザに感動。

春の食材は、ホタルイカやタケノコ、山菜、白エビと賑やか。ホタルイカは石焼きに、タケノコは若竹煮やタケノコご飯に、白エビは刺し身や天ぷらに。4月にコシアブラが出てくると、山菜の天ぷらがぐっと充実。品書きにあると皆が注文するそう。

金沢〈よし村〉なめらの骨蒸し
なめらの骨蒸し2,800円。ボリューム満点。能登シイタケとエノキダケ、春菊、豆腐と。
金沢〈よし村〉ホタルイカ石焼き
ホタルイカ石焼き2,500円。シイタケ、行者ニンニク、ネギとジュッと焼いてポン酢で。

夏は岩ガキや能登の海藻など。加賀太キュウリに打木赤皮甘栗(うちぎあかがわあまぐり)カボチャなどの加賀野菜も華やかに登場する。どの一品も正統派。堂々たる真っ向勝負。お伴は北陸の酒がいい。店主と相談しながら、ゆっくりと決めたい。夜は長いのだ。

「気軽にいらしていただきたいですね。アラカルトが多すぎて選べないという方はご相談ください。お酒の提案もさせていただきます。ぜひ、金沢の味をお試しください。若い方も大歓迎です」

金沢〈よし村〉刺身盛り合わせ
加賀の美味が網羅された、長~い品書きから2品を。手前が刺身盛り合わせ1人前1,800円~。奥が若竹煮900円~。フキとイイダコを添えて。

Information

よし村

住所:石川県金沢市大工町22
TEL:076-232-3001
営:11時30分~14時(昼食は要予約)、17時〜22時30分
休:日曜(日・月連休なら日曜は営業して月曜休)
日本酒は1合700円~。軽く飲んで食べて1万円~。料理のおまかせ7,700円~。
HP:http://www.ajidokoro-yoshimura.com/

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