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【日本橋】三井記念美術館「唐ごのみ―国宝 雪松図と中国の書画―」

  • 2024.12.15

国宝《雪松図屏風(ゆきまつずびょうぶ)》と中国絵画、墨跡、古拓本を愛でる

三井記念美術館では「唐ごのみ―国宝 雪松図と中国の書画―」[2024年11月23日(土・祝)~ 2025年1月19日(日)]が開催されています。

冬季恒例の国宝《雪松図屏風》の展示と共に「唐ごのみ」と題して、「雪松図屏風」と同様に三井家で珍重された中国絵画や墨跡・古拓本を見ることが出来ました。江戸時代からの伝世品や、大名家や徳川幕府旧蔵の伝来品がその来歴と共に紹介される名物絵画の展示もあり、見どころの多い展覧会です。

※特別な許可を得て撮影しています。展示室4は国宝《雪松図屏風》をはじめとする一部作品に限り撮影が可能です。撮影の際は注意事項をご確認の上周りのお客様へのご配慮をお願いします。

 

出典:リビング東京Web

中央、国宝 雪松図屏風 円山応挙筆 江戸時代・18世紀 北三井家旧蔵 三井記念美術館蔵

古拓本(こたくほん)はコレクターの印に注目!

三井記念美術館所蔵の拓本は、そのほとんどが新町三井家9代・三井高堅(みついたかかた)旧蔵品です。 特に宋拓(そうたく)や唐拓(とうたく)の古拓本の収集に熱心だったそうで、高堅の号を冠して「聴氷閣本(ていひょうかくぼん)」と称される世界屈指の拓本コレクションを形成しています。

中国の書史は、殷時代の甲骨文に始まり、金文、石鼓文、石碑が流行した漢時代までが書体の形成時期とされています。東晋時代の書聖・王羲之(おうぎし)の登場は、書を芸術の域まで高め、書風が発展し展開するターニングポイントとなりました。

王羲之をはじめ歴代の能書から模本や拓本が作られるようになり、唐時代には模本が、宋時代には拓本が最高水準に達したとされています。

本展に展示されている唐時代や宋時代の拓本には、当代の一大収集家の旧蔵品として伝わったものもあり、帖中の鑑蔵印にも注目してみると面白いかもしれません。

初公開!《多宝塔碑(たほうとうひ)》、《興福寺断碑(こうふくじだんぴ)》

《多宝塔碑》(右)。顔真卿(がんしんけい)は、唐時代の能書家で、政治家でもあり学問芸術に秀でた芸術家でした。本帖の「肉厚で丸みを帯びた縦角」の書風は比較的初期の作品とされます。高堅が松坂三井家7代で父・高敏(たかとし)から受継いだ拓本の1つで、冒頭に高敏、高堅の所蔵印が捺されています。

左は、《興福寺断碑》。王羲之筆ですが、長安の興福寺の僧・大雅が、王羲之の書から字を集めて建てた碑の拓本だそうです。発見時、碑の半分が断裂していたため「断碑(だんぴ)」と称されています。「秋瓦居士」の高敏の号の印があり、高敏の旧蔵品と分かるそうです。

 

出典:リビング東京Web

右から、多宝塔碑 1帖 顔真卿筆 唐時代・天宝11年(752)、興福寺断碑 1帖 王羲之筆 唐時代・開元 9年(721) どちらも新町三井家旧蔵(三井高敏旧蔵) 三井記念美術館蔵

『蘭亭序』のコレクターが所蔵《蘭亭序 呉平斎本(宋拓)(らんていじょ ごへいさいぼん(そうたく))》

曲水の宴で詩集の序文に王羲之が酔った勢いで書いたのが「蘭亭序」です。筆勢に優れ、品格のある文字で書聖と称された王羲之の書は、後の時代に手本とされ模本や拓本が多数つくられました。

呉平斎(ごへいさい)は、清末に本帖を所蔵した呉雲(ごうん)と言われるコレクターで、200本もの『蘭亭序』をコレクションし、「二百蘭亭斎」と称する書斎まで作ったそうです。「蘭亭序」マニアの推し活部屋でしょうか。

王羲之筆『蘭亭序』の原本は、唐の太宗がお墓に持って行ってしまったので現存しません。太宗が宮廷の専門職人に命じて作らせた精巧な模本が写されて現代まで伝わっています。

 

出典:リビング東京Web

蘭亭序 呉平斎本(宋拓) 1帖 王羲之筆 東晋時代・永和9年(353) 新町三井家旧蔵(呉雲旧蔵) 三井記念美術館蔵

田畑を売っても収集したかった《石鼓文 後勁本(宋拓)(せっこぶん こうけいぼん(そうたく))》

明時代の一大収集家・安国(あんこく)旧蔵の《石鼓文 後勁本(宋拓)》。

石鼓文とは、太鼓型の石の側面に刻まれた銘文のことです。篆書の一書体「大篆」を学ぶ際の基本となるそうです。

安国は、十種類の石鼓文を20年かけて熱心に収集したそうで、書斎にも「十鼓斎」と名付けるほどでした。 本帖は田畑の一部を質入れして手に入れたとのことです。

 

出典:リビング東京Web

石鼓文 後勁本(宋拓) 1帖 戦国時代・前5~前4世紀 新町三井家旧蔵(安国旧蔵) 三井記念美術館蔵

北三井家旧蔵の書画、国宝《雪松図屏風》と中国絵画・書

国宝《雪松図屏風》

円山応挙(まるやまおうきょ)筆、国宝《雪松図屏風》(右)。応挙の作品として唯一国宝に指定されています。松の枝に降り積もった雪と土坡の雪を墨の塗り残しと紙の白で写実的に表し、陽の光に包まれた雪景色を金泥と金砂子で装飾的に表した円山応挙の代表作です。

本作に用いられた継ぎ目のない大判の紙は、当時とても貴重なものだったそうです。三井家では特別な作品として大切にされていたようで、美しい画面をそのままに現在まで伝わっています。

モフモフ《猿猴図》

左は、伝 牧谿(もっけい)筆《猿猴図》。南宋の水墨画家・牧谿は、室町時代以降の日本で高い人気を誇る画家でした。

枯木に捕まる猿と、竹にぶら下がる親子猿が描かれた2幅対の絵画です。墨の滲みと濃淡で表された猿のモフモフした毛並が、素朴な表情と相まってカワイイ感じがします。やや鋭い目つきの雀たちと、猿のホワッと呑気そうな姿の対比が面白い構図になっています。

もとは寒さに耐える猿の図ともされ、長谷川等伯など日本の絵師たちも多く描いている画題だそうです。

 

出典:リビング東京Web

右から、国宝 雪松図屏風 円山応挙筆 江戸時代・18世紀、猿猴図 2幅 画:伝 牧谿筆 賛:伝 竺仙梵僊筆 16~17世紀 北三井家旧蔵 三井記念美術館蔵

沈南蘋(しんなんぴん)筆《藤花独猫図》《柳下雄鶏図》《檀特鶏雛図》《於兎声震図》

清時代の画家・沈南蘋筆の花鳥動物図で、11幅対として北三井家に伝わりました。 展示室には《藤花独猫図》《柳下雄鶏図》《檀特鶏雛図》《於兎声震図》の4幅が並びます。

写実的で細密に描かれた沈南蘋筆の花鳥動物図は、「雪松図屏風」の凍てついた冬の景色に対して、自然の中で生き生きと活動する生命の温もりや彩りを感じさせます。

享保16年(1731)長崎に来航した沈南蘋は、江戸時代中期の日本の画家に大きな影響を与えました。

 

出典:リビング東京Web

沈南蘋筆 藤花独猫図 1幅 清時代・18世紀、柳下雄鶏図 1幅 清時代・乾隆15年(1750)、檀特鶏雛図 1幅 清時代・18世紀、於兎声震図 1幅 清時代・18世紀 すべて北三井家旧蔵 三井記念美術館蔵

加藤清正が献上、秀吉ゆかりと伝わる《陳大観園中竹一首》

伝 蘇軾・黄庭堅筆《陳大観園中竹一首》。蘇軾(そしょく)と黄庭堅(こうていけん)は、中世以降の日本の知識人にも人気の高い北宋時代の文人です。

本幅は箱書に、文禄・慶長の役で、朝鮮出兵した加藤清正が現地で得たものを豊臣秀吉に献上し、後に秀吉が連歌師の里村紹巴(さとむらじょうは)に下賜した、とあるそうです。表具の天地には、秀吉が馬印に用いた瓢箪の文様があり、秀吉ゆかりと伝わる品として茶席で愛でられたかもしれないとのことでした。

 

出典:リビング東京Web

陳大観園中竹一首 1幅 伝 蘇軾・黄庭堅筆 15~17世紀 北三井家旧蔵 三井記念美術館蔵

名物絵画、「雲州名物(うんしゅうめいぶつ)」と「柳営御物(りゅうえいごもつ)」

三井記念美術館には、新町三井家旧蔵の通称「雲州名物」と「柳営御物」の名物絵画コレクションがあります。「名物」とは、古代から中世において天皇家や将軍家が所有していた器物のうち、特に優れたものを区別して称した言葉です。

近世以降は、茶道具や刀剣で「名物」に匹敵する価値や鑑賞性を持つものにも用いられるようになりました。

大名茶人・松平不昧(まつだいらふまい)旧蔵品《柘榴図(ざくろず)》

「名物絵画の世界」では、松江藩第10代藩主、大名茶人・松平不昧が所蔵した「雲州名物」の名物絵画を見ることが出来ました。作品に関わる附属の資料の他、入手した作品の箱書を不昧自らが施しています。また、特製の裂でケースを作らせてその題箋(だいせん)も自ら記すこだわりよう。

熟した柘榴の実だけを水墨画でシンプルに描いた伝 牧谿筆《柘榴図》。弾けた果肉と、墨の濃淡がぽってりした柘榴の実の朱色をイメージさせます。 松平家以降は、『大正名器鑑』を著した茶人・高橋箒庵(たかはしそうあん)、根津美術館のコレクションを築いた根津青山(初代・根津嘉一郎)、新町三井家へと伝来したそうです。伝来も含めて名物絵画です。

徳川幕府旧蔵品《川苣図(かわちさず)》《竹雀図》

左は、徳川幕府旧蔵品「柳営御物」で、どちらも伝 牧谿筆《川苣図》と《竹雀図》です。《川苣図》は江戸狩野の御用絵師・狩野探幽(かのうたんゆう)の旧蔵品で、幕府に献上された後、土浦藩土屋家に下賜されたものです。葉を下に束ねられた葉野菜が置かれた図は、江戸時代以来カワヂシャと伝わる植物か小松菜のようですがどちらも違うようです。

 

出典:リビング東京Web

右から、柘榴図 1幅 伝 牧谿筆 南宋時代・13世紀、川苣図 1幅 伝 牧谿筆 14~16世紀、竹雀図 2幅 伝 牧谿筆 15~16世紀 すべて新町三井家旧蔵 三井記念美術館蔵

国宝《雪松図屏風》と中国の書画の香り高い美を味わう

古拓本のコレクターが愛でた唐拓、宋拓の世界から、北三井家旧蔵の書画、禅僧の墨跡、名物絵画まで様々な作品を楽しめる展覧会でした。国宝《雪松図屏風》を背景に、冬の茶席にも相応しい名品優品ぞろいで、中国の書画の香り高い美を味わいました。

「唐ごのみ―国宝 雪松図と中国の書画―」は 2025年1月19日(日)までです。 是非お出かけください。

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、雲母ズリ懐紙(770円)、薬種茶 温活茶(1‚620円)、を購入。 熱いお湯を注いでいただく薬種茶 温活茶は、甘みも感じる飲みやすさで、これからの季節におススメです。

〇三井記念美術館
URL:https://www.mitsui-museum.jp
住所:東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階
ハローダイヤル:050-5541-8600
交通:東京メトロ銀座線三越前駅A7出口より徒歩1分、東京メトロ半蔵門線三越前駅徒歩3分A7出口より徒歩1分、東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B9出口より徒歩4分、都営浅草線日本橋駅徒歩6分B9出口より徒歩4分

◯「唐ごのみ ―国宝 雪松図と中国の書画―」
会 期:2024年11月23日(土・祝)~ 2025年1月19日(日)
開館時間:10:00〜17:00(入館は 16:30 まで)
休館日:月曜日(但し1月13日は開館)、年末年始12月27日(金)~1月3日(金)、1月14日(火)
入館料:一般 1,200(1,000)円/大学・高校生 700(600)円/中学生以下無料
※70歳以上の方は 1,000 円(要証明)。
※20名様以上の団体の方は( )内割引料金となります。
※リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券のご提示で、2回目以降は( )内割引料金となります。
※障害者手帳をご呈示いただいた方、およびその介護者1名は無料です(ミライロIDも可)

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