1. トップ
  2. 恋愛
  3. カミングアウトは必要? リリ・ラインハートが語る、バイセクシュアル公表までの葛藤と気づき【社会変化を率いるセレブたち】

カミングアウトは必要? リリ・ラインハートが語る、バイセクシュアル公表までの葛藤と気づき【社会変化を率いるセレブたち】

  • 2024.12.14
"Babygirl" Red Carpet - The 81st Venice International Film Festival2024年8月、ヴェネチア国際映画祭に登場した俳優のリリ・ラインハート。Photo: Alessandro Levati / Getty Images

「美しい肌を保つには、メンタルヘルスも大きく影響しているということを率直に語る機会を与えていただいたことに感謝しています。私は、自分が体験したことを皆さんと共有し語り継ぐことで、同様の体験をしている人たちへ少しでも慰めをもたらしたい。それが私の願いなのです」

2024年、アメリカのマルチナショナルデジタルメディア「Refinery 29」主催のビューティポッドキャストに出演した俳優でプロデューサーのリリ・ラインハートは、放送で自らの体験をこう語り始めた。1996年9月13日、アメリカ・オハイオ州クリーヴランドに生まれ育った彼女は、Netflixドラマシリーズ「リバーデイル」(2017~2023)の優等生ベティ・クーパー役で一躍世界のイットガールに。その後、コメディ犯罪ドラマ映画「ハスラーズ」(2019)のアナベル役や、クリスタル・サザーランド原作「Our Chemical Hearts」を映画化した『ケミカル・ハーツ』(2020)でグレース・タウン役を演じ、トップ俳優としての地位を揺るぎないものにした。

そんな彼女は、自身のメンタルヘルスやセクシュアリティについてオープンであることでも知られ、特に14歳のときにうつ病であることを公表した。

病を語ることは、心のセラピー

Beautycon L.A. 2024: The Future Of Beauty Belongs To Everyone - Day 12024年11月、アメリカ・LAのビューティフェスティバルにて。Photo: Leon Bennett / Getty Images

「これは、体験した私からの注意喚起です。もし、心がしんどいと思ったときは、セラピーを受けることは決して恥ずかしいことではありません。それどころか、セラピストを頼ることで心が軽くなることが多いのです。だからもし、あなたがうつ病で悩んでいるなら、決して一人で悩まないでください」

公表後から自らの体験をアメリカのライフスタイル誌に語り、アドバイスを送っているラインハートは、一時回復したものの、18歳のときにLAに引っ越した際に再発。さらに症状が悪化したため一時故郷オハイオに戻った彼女は、半年間セラピストとともに自身のメンタルの立て直しに取り組んだ。そして再びLAに戻ると「リバーデイル」で大ブレイクし、自身のキャリア初のヒット作に恵まれたことで、“人生最悪のうつ状態”から解放されたという。

そんな彼女は28歳になった今でも時折襲ってくる不安とうつと闘っていると語る一方、公表したきっかけにはある有名人が関係していたと明かす。「自分がティーンのとき、デミ・ロヴァートが自身の精神疾患について語っていました。そのとき、私はどこか心から安心したのを覚えています。当時は私を含め、たくさんの若者が精神疾患で悩んでいるのに、そばに誰も打ち明けられる人がいなかったのです。だから私は、もっと多くの人に立ち上がってほしかったし、もっと多くの人にこの病を知ってもらいたかった──その一心で自分の病の公表したのです。心を痛めたことのない人など、この世に一人もいないはずですから」

過去にうつ病のほか、脅迫性障害、身体醜形障害に悩まされたことを公表し、2024年1月には自己免疫疾患である脱毛症の治療に取り組んでいることも明かしたラインハート。そんな彼女は現在、過度のストレスは大病のもとだとしてセルフケアの大切さをSNSをはじめさまざまなメディアで説いている。

バイセクシュアル公表までの葛藤

2024 Women In Film Annual Galaビバリーヒルズで開催されたWomen In Film Annual Galaに登場。2024年10月撮影。Photo: Robin L Marshall

「映画やテレビの登場人物の設定は、たいてい同性愛者か異性愛者でバイセクシュアルはほとんどいません。ですが私は、バイセクシュアルのキャラクターも普通にいてもいいのではないかと思うのです。私を含め、バイセクシュアルの人はこの世にたくさんいますから。でも、カミングアウト前は、私がどちらの性も好きだと言うと、“きっと一時的な気の迷いだ”と言って否定されることが多かった。それが私にとってはある意味辛かったのです」

BBC」に対し、ディズニーアニメーションシリーズ「アウルハウス」(2020)で初のバイセクシュアルの主人公ルースが誕生した際にこうコメントした彼女は、同年の6月のプライドマンスには自身もバイセクシュアルであることをカミングアウトし、主人公ルースは普通に存在することを証明した。以前からLGBTQ+コミュニティのサポーターとしてさまざまな活動を展開してきた彼女だが、カミングアウトまでに相当な葛藤を抱えたことを『FLAUNT』誌にこう明かしている。

「私は、早い段階で自分が異性にも同性にも惹かれることに気づいていました。ですが、周囲はヘテロセクシュアルがデフォルトの人間関係の中にいたため、バイセクシュアルだと主張することは売名行為だと攻撃されることを恐れていました。私の親しい友人たちだけには本当のセクシュアリティを打ち明けていましたが、世間と闘いになることを望んでいなかったので、結果的に今日までずっと黙っていました。俳優という仕事をしているからといって、セクシュアリティを売り物にしていると言われたくなかったのです」

カミングアウトは誰のため?

Giorgio Armani RTW Spring 2025 - Front RowNYにて行われたジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)の2025春夏コレクションのショーにて。Photo by Lexie Moreland / Getty Images

そんな彼女は、『Advocate』誌のポッドキャスト「LGBTQ&A」のインタビューで、LGBTQコミュニティを取り巻く状況は依然として有害な固定観念や思い込みがあるとし、カミングアウトの必要性についてもこう言及している。

「10歳のとき、自分はよく女の子のことを考えているな、と思ったのを覚えています。ですが、それは口にしてはいけないことのような気がして誰にも言いませんでした。18歳のときにLAに来てから、女の子に性的に惹かれていることをはっきり認識しましたが、それでも自分は異性愛者だと自認するようにしていたのです……ある女の子にはっきりと恋心を抱くまでは。そのときから、自分がバイセクシュアルであることをカミングアウトしようと何度も思いました。でも、“適切なとき”とはいつなのでしょう? 本当に、カミングアウトはしなければならないのでしょうか?」

そんな時期を経て、現在はLGBTQIA+ コミュニティの文化活動や教育、権利擁護を通じて生活の質の向上に努める団体「Project MORE」を始め、バイセクシュアルとしてセクシュアルマイノリティの権利保護のためにさまざまな活動を展開するラインハート。“カミングアウト”の必要性についての答えは未だ見出せないとしながらも、カミングアウトについて悩んでいる人へのアドバイスとして、彼女はこんな言葉を送っている。

「自分がバイセクシュアルであることを世間に伝えるためにメディアは必要なのか、と言われればそんなことはありません。そもそも“カミングアウト”自体が必要なのか──それは未だ私にもわかりません。自分のセクシュアリティが、自分という人間のすべてを定義するわけではありませんが、多くの人は“あの人はゲイ、あの人はレズビアン”とカテゴライズすることを望んでおり、この社会ではその方が何かと都合がよくて楽になるようにできているのでしょう。自分のセクシュアリティは、新聞の一面を飾るニュースでもなんでもありませんし、秘密でも恥ずかしいことでもありません。でももし、注目を集めたくてセクシュアリティを利用するなら、それは違う。私に言えるのは、ただそれだけです」

Text: Masami Yokoyama Editor: Mina Oba

元記事で読む
の記事をもっとみる