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【小泉今日子インタビュー】『ピエタ』朗読や新しいものにチャレンジする源は? 「本当に好きなものを知っておくと迷わずキャッチできる」

  • 2024.12.13

Amazon オーディブル(以下、Audible)のオーディオブックに、大島真寿美さんの小説『ピエタ』が登場! 朗読はなんと小泉今日子さん。小泉さんは作品に惹かれ2023年に舞台をプロデュースしています。作品の魅力や朗読の裏話、40代へのアドバイスを伺いました。


大島真寿美×小泉今日子×向島ゆり子 『ピエタ』 Audible版

2012年本屋大賞第3位、大島真寿美の名作!! 朗読に俳優・小泉今日子、音楽に向島ゆり子を迎えAudiobook化。
18世紀、水の都ヴェネツィア。ゴンドラが運んでいくのは、秘めた恋とかけがけのない友情――。生への限りない祝福に満ちた感動作!
18世紀、爛熟の時を迎えた水の都ヴェネツィア。
『四季』の作曲家ヴィヴァルディは、孤児を養育するピエタ慈善院で音楽的な才能に秀でた女性だけで構成される〈合奏・合唱の娘たち〉を指導していた。ある日、教え子のエミーリアのもとに、恩師の訃報が届く。
一枚の楽譜の謎に導かれ、物語の扉が開かれる――。史実を基に、立場や境遇の違う女性たちの交流と絆を瑞々しく描きだした傑作長編。
『ピエタ』 Audible版
著者:大島真寿美
ナレーター:小泉今日子
配信日:2024年12月13日


小泉今日子さんインタビュー

Audibleでのオーディオブック朗読について「音楽と共に聴けるんです」

——朗読で様々なコンテンツが楽しめる媒体、Audibleについて小泉さんはどのような印象を持っていますか?
「音声で楽しめるものって、例えば移動中、車の運転中もそうだし、家事をしているときなど生活の中にスッと入ってきやすいんですよね。映像だと目が奪われるから動きが止まってしまいがちだけど、音声なら自然に楽しめる。特にコロナ禍を経て、実はすごく必要なコンテンツなんじゃないかって思いました」 ——今回、朗読を担当した小説『ピエタ』は小泉さん自身が年月をかけて舞台化を実現するなど、とても思い入れのある作品だと思います。オーディオブックに入ることになったのは、小泉さん発信なのでしょうか。
「私が最初に『ピエタ』を読んだときに、これはいつか舞台でできたらいいなと思ったのがはじまりで。でもまさか自分がプロデュースするとは思ってもいなくて、誰かに働きかけてみようと思ったところから、どんどん話が進んで10年経ってやっと実現したんです。その後、とある本のイベントで私の朗読と向島ゆり子さんのバイオリン、大島さんのトークショーをやってみたところ、とても楽しく、感触がよかった。そんな私たち “トリオ・ザ・ピエタ”で望んだのがAudible化でした」 ——小説はかなりのボリュームですが、収録はいかがでしたか?
「週に2日、1回4時間ほどで録音したのですが、とても楽しく進められました。『ピエタ』は音楽家のヴィヴァルディに関係する女性たちの群像劇で、私が最初に小説を読んだときはヴィヴァルディといえば『四季』といった有名な曲しか知らなかったんです。でもこのAudibleでは知らなかった他の音楽も一緒に聞けますから、ここから入る人が羨ましいです(笑)」 ——登場人物は女性が多いですが、男性も出てきます。声で演じ分けされているのでしょうか。
「自分ではそこまで意識はしていなかったのですが、自然に演じ分けになっているみたいです(笑)」

『ピエタ』について「最初に読んだときは40代、いまは全員に共感しています」

——『ピエタ』は18世紀のヴェネツィアが舞台ですが、人間の描き方はとても普遍的で、人間が人生で悩むポイントは全然変わっていないというか。
「シェイクスピアの作品だって、毎年いろんな団体が上演し続けてきてますもんね。文明は発達しても、人間自体はそんなに変わっていない。『ピエタ』で描かれていることは、今もこの先もスタンダードなことなんだと思います」 ——読んだ時の年代によっても受ける印象、響くポイントが変わりますね。
「そう、私も最初に読んだときは40代だったので、一番自分に近いなと思ったのはヴェロニカでした。今はクラウディアさんが当時よりもずっと近い感じがしていますし、前はわからなかったジロー嬢など、どんどんいろんな人の気持ちに感情移入するようになったので、もう今は全員、自分の中にいます(笑)。孤児院で育った人から貴族まで、それぞれに望んでも持てなかったものがある。お金持ちだから全部を持っているわけじゃなくて、お金持ちだから持てなかったことがあるというのもきちんと描かれていて、それぞれが持つさみしさを同じ場所に置いて理解し合うというのが、すごく女性的だなと思いました」

新しいことを始める原動力「怠け者な分、やるときはやる!」

——今回のAudibleの朗読をはじめ、小泉さんはいつも新しいことにチャレンジされていますが、その原動力はどこから!?
「私ね、本当はものすごく怠け者なんです(笑)。だからつねに、罪悪感を原動力にしていて。本当は、ずっと寝っ転がっていたいんですよ。本を読んだり、韓国ドラマを観たりして時間が過ぎていったらいいのにって、いろんなことをサボっている時間が長くなると、“はっ、いけない!”って我に返る。やるときはやらないと、ダラダラする時間が許されない気がするので、自分の至福の時間を守るために動き出す感じなんです。仕事以外で外出することって、ほぼない人間なので」 ——腰を上げるときに、自分のやりたいことを見つけていく感じですか?
「これをやるんだったら、どうベストを尽くすかっていう感覚です。自分からやりたいって思うことって、実はそんなになくて。縁あって、こういうことをしましょう、こういうものを作りましょうってなったときに、全力で向き合う感じ。アイデアを考えるのは好きですし、得意なんです。ライブをやるんだったら、じゃあこういうコンセプトでこうしようとか。私たちの仕事は受け取ってくれる人がいないと成り立たない職種なので、どうしたら喜んでくれるかなっていうのは、つねに考えていますね」

40代へのアドバイス「今なんとか頑張ったら、未来の自分はラクになる」

——40代がメインターゲットのGLOW読者に向けて、ご自身の経験を踏まえてアドバイスをいただけたら。
「どの年代でもいろいろと悩みや辛いことはあるものだけど、今、なんとか頑張って、踏ん張って一歩踏み出したら、きっと未来の自分はラクになるだろうし、元気でいられる。そういう感覚がずっと昔からあって。と同時に過去の、10代の頃の苦しかった自分も救えるような気がするんです。いつの時代の自分も一緒に横にいる感覚で。5歳の私も80歳の私も仲良くできるイメージでいたら、今の自分も頑張れる。その核になっているのは、少女の頃の自分なんですけどね」 ——当時の感覚を大事にしているということでしょうか。
「そう、少女の頃にキレイだと思ったもの、素敵だと思った音楽、好きだった映画。その核の部分をプロテクトしながら大人になってきたけれど、ときどきそのプロテクトを外して核を磨くというイメージかな。つねに新しい情報を追いかけたいわけじゃなくて、自分の好きなものをキャッチする感覚なんです。たくさんのものから選ぶにしても、自分が本当に好きなものがわかっていると、迷わずにそれをキャッチできる。そこがブレていたら、これは違う、これでもないと選別しなきゃいけない。忙しくて忘れがちだけど、自分の核と向き合うことを40代でやっておくと、これから先はきっとラクになると思います」

【PROFILE】こいずみ きょうこ:1982年、歌手デビュー。「木枯しに抱かれて」「あなたに会えてよかった」「優しい雨」等の楽曲を発表。俳優として映画や舞台に多数出演し、執筆家としても活躍。2015年より株式会社明後日を立ち上げ、舞台・映像・音楽・出版など、ジャンルを問わず様々なエンターテイメント作品をプロデュース。2021年には上田ケンジと共に音楽ユニット、黒猫同盟を結成。音楽を通じて猫の保護活動を応援。2022年にデビュー40周年を迎えた。

撮影=梶田麻矢 取材・文=根岸聖子 スタイリング=藤谷のりこ ヘア&メイク=磯島メグミ
ブラウス 9万6800円(JACOB COHËN/JACOB COHËN TOKYO MIDTOWN 03-3405-0852) パンツ 4万1800円(TELA/T-square Press Room TEL03-5770-7068) ピアス 4万1800円、ネックレス 上4万6200円・下6万6000円、右中指のリング6万9300円、左人差し指のリング4万4000円、薬指のリング3万8500円(blanc iris/blanc iris tokyo TEL03-6434-0210) ※右耳のパールのピアスはスタイリスト私物

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