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覚えておきたい!避難所のトイレを快適に使い続けるためにできること

  • 2025.1.1

避難生活でトイレの我慢を強いられる環境は、体調悪化に直結します。避難所のトイレを快適に使い続けるために利用者として何ができるのでしょうか?災害時のトイレについて研究し、啓発活動を続ける日本トイレ研究所代表理事の加藤篤さんにうかがいました。

仮設トイレが3日以内に行き渡った自治体はわずか34%

避難所のトイレと聞いて皆さんは何を想像しますか? 工事現場に設置してあるような個室型の仮設トイレでしょうか? 実は、東日本大震災で被災した自治体に「仮設トイレが避難所に行き渡るまでの日数」を尋ねたところ、「3日以内」と答えた自治体はわずか34%しかありませんでした。1か月以上かかったという自治体が14%にも上り、最長では65日以上かかりました。

避難所のトイレをあらかじめ確認しておくとよい

仮設トイレの搬送には、ほとんどの場合、トラックが使われます。被災状況によりますが、建物倒壊や土砂崩れ、液状化などで道路が寸断していれば、すぐに届けることはできません。

では、どうしたら良いのでしょうか? 最近ではマンホールに直結するマンホールトイレも増えてきていますが、避難所では便器に取り付けて使う袋式の携帯トイレを備蓄している可能性があります。避難所にどういうトイレが備わっているのか、防災訓練に参加して確認しておくと良いでしょう。

トイレが汚いと起きる三つの問題

避難所のように不特定多数の人が共同で生活をする場所で、トイレを不衛生にしてしまうと、3つの問題が生じます。

第一に、集団感染のリスクが高まることです。ドアの取っ手やカギ、トイレの蓋、トイレットペーパーホルダーなど不特定多数の人が共通して触る部分が多く、接触感染が起きやすいのです。

第二に、トイレが不便、不衛生になると、トイレに行く回数を減らそうとして我慢したり、水分を摂取するのを控えたりしてしまいます。適切に水分を取らないと、脱水症になるだけでなく、誤嚥性肺炎やエコノミークラス症候群を起こしやすくなります。

エコノミークラス症候群は、窮屈な姿勢で長時間座っていると、血行不良になり、ふくらはぎあたりの血管に血のかたまりができて、足を動かした際にそれが血管を流れて肺等に詰まることで、最悪の場合、死に至ります。2004年に起きた新潟県中越地震の後、車中泊をした人たちの一部にこの病気が起き、広く知られるようになりました。東日本大震災の時の調査では、トイレを我慢したことが危険因子の一つとして挙げられました。

誤嚥性肺炎もエコノミークラス症候群も命に関わる病気です。トイレを我慢することは災害関連死の誘発にもつながりかねないのです。

最後の問題は、秩序が乱れることです。トイレが不衛生で、快適に排泄できないとイライラしてきます。その辺にゴミを捨ててもいいやと思ってしまう人が増えれば、避難所がさらに不衛生になります。秩序の乱れは治安の悪化にもつながります。トイレが女性や子どもにとって危険な場所になりかねません。
平時でも公共的なトイレの維持管理は難しいものです。大小便であふれ、ゴミが散乱する状態になってしまっては、掃除するのも並大抵ではありません。

「トイレ衛生班」を作ってみんなで清潔に

では、どうしたら良いのでしょうか? まずは、みんなができるだけ汚さないように使うことです。避難所に「トイレ衛生班」を作り、避難してきた人たちに丁寧に携帯トイレの使い方を伝えます。暗いと失敗しやすいのでトイレ用の非常用照明を確保しておきます。

能登半島地震の時に、自分の排泄が終わったら、次の人のための携帯トイレをセットしてから出るようにしていた避難所もありました。トイレに駆け込んですぐ排泄することもあると思います。そういう時も安心な良い方法だと思います。

各自がルールを守ってトイレを使うだけでなく、交代で役割分担をしてトイレ掃除をすると、清潔な状態を保つことができます。ドアの取っ手やカギなどみんなが触れるところは特に丁寧に拭くことが大切です。

メディアなどではほとんど取り上げられませんが、被災地のトイレ問題は深刻です。日頃から、地域でどういう対応をするのか、防災訓練の時などに話し合っておいてほしいと思います。

加藤篤さん
特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事
1972年生まれ。まちづくりのシンクタンクを経て、現職。災害時のトイレ調査や防災トイレワークショップの実施、防災トイレ計画の作成、小学校のトイレ空間改善を展開。「災害時トイレ衛生管理講習会」を開催し、防災トイレアドバイザーの育成に取り組んでいる。
著書『トイレからはじめる防災ハンドブック』(学芸出版社)(写真下)、『うんちはすごい!』(イーストプレス)、『もしもトイレがなかったら』(少年写真新聞社)ほか。

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