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A.ランゲ&ゾーネ 「LANGE 1」30周年を迎えた限定モデル登場

  • 2024.12.13

松山 猛 時と人を繋ぐもの

(左)A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1」世界限定300本。715万円、(右)A.ランゲ&ゾーネ「リトル・ランゲ1」世界限定150本。要価格問い合わせ
(左)A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1」世界限定300本。715万円、(右)A.ランゲ&ゾーネ「リトル・ランゲ1」世界限定150本。要価格問い合わせ

文・松山 猛

 

1989年にベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが合併を果たした後の、1994年に戦前のドイツ時計の名門であった旧東ドイツ、グラスヒュッテのA.ランゲ&ゾーネ社が復活を果たすというニュースを知った。

歴史に翻弄された名門ブランドの復活

 

 

ランゲ社の末裔で戦後は西ドイツに暮らしていたウオルター・ランゲ氏と、スイスの時計業界で活躍してきたギュンター・ブルムライン氏がようやく巡ってきた、統一ドイツの旗印としての、A.ランゲ&ゾーネの復活を祝して作り上げたのがこのLANGE1だったのだ。

僕はその計画が進んでいることを、スイスの時計関係者から聞いていたが、果たしてどんな時計が作られるのかと大いに期待したものだった。

 

そしてスイスを取材していたある日、チューリッヒの時計店“ベイヤー”のショウウインドウに飾られたランゲ社の時計を見て、すぐさまお店の人にカタログをもらい、帰国後すぐにそれを記事にしたのを思い出す。

ブラックオニキスダイアルを備えたプラチナ 950 製モデルは完売している。
ブラックオニキスダイアルを備えたプラチナ 950 製モデル。残念ながらこちらはすでに完売している。

そのカタログはドイツ語のみで、そこからもドイツ統一を祝う愛国芯に満ちた時計であることがうかがえた。そして当初はドイツやオーストリアの時計店でのみ扱われるという時計なのだった。

ウインドウに並んでいたのは、センターストーンにダイアモンドの穴石をあしらったトウールビヨンと、もう一本の大きな日付窓を持つLANGE1であった。

 

この大きな日付窓は、ザクセンの都市ドレスデンのセンパー劇場の時刻表示からインスパイアされたもので、そのシステムを作ったのが、ランゲ者の創始者であるアドルフ・ランゲその人なのだと後に知った。

自社製ムーブメントが、LANGE1に命を吹き込む。

LANGE1は中心から左にずらした時、分表示の針を持ち、秒針はその右下に配置されている。そしてその秒針の上にパワーリザーブ表示を持つ、アシンメトリカルなデザインが印象的な時計である。

 

その大きな日付窓はビッグデイト表示として、すぐさま追従者が現れるほどのブームを引き起こしたものだ。

時計好きなら手に入れたい「LANGE1」

 

やがて日本でもこの時計の専門ブティックができ、幸運なことにやがて僕もその素敵な時計を手に入れることができ、今も愛用し続けている。

それはピンクゴールドのケースに黒い文字盤を組み合わせた、精悍な雰囲気を持つモデルで、30年近く経った今もその魅力を持ち続けてくれている。

この時計のもう一つの見どころは、サファイアクリスタルのシースルーバックから見える美しく仕上げされたムーブメントにある。

 

ポケットウオッチ時代のドイツ時計の伝統にしたがった4分の3スタイルのブリッジと、日本ではチラネジと呼ばれる、精密にテンプを制御するスクリューバランス、そのバランスを支えるバランスブリッジに、伝統的な唐草模様を手彫りしているのも魅力の一つだ。

 

そしてスワンネックと呼ばれる緩急針システムなどと、クラッシクな時計を好む者たちを楽しませてくれる、様々なディテールを満載しているのだった。

最初のLANGE1以来、そこにムーンフェイズ表示を加えたもの、パーペチアルカレンダー表示のモデル、さらにはワールドタイム表示を持つものなど、様々なバリエーションが生まれてきたのだった。

LANGE1は、誕生30周年のアニバーサリーを記念して新作モデルが発表された。
誕生30周年のアニバーサリーを記念した、新作モデルのLANGE1。

今回30周年を記念して作られたのは、プラチナ素材のケースに、オニキスの文字盤をあしらったものと、ピンクゴールドのケースにブルーの文字盤の物の二種類で、さらにサイズが異なる4種類が発表された。

 

統一ドイツのシンボルのように作られた、このLANGE1にはフアンが多く、アンティコルムやフィリップス、サザビーなどのオークションにも出品されると、エスティメートよりも高値で取引される場合が多い。

それはひとえにドイツ時計の持つ精緻な造り込みや、精悍な雰囲気の所為であろう。

 

30年前に与えてくれた衝撃のデビュー以来、ますます魅力を増していくこの時計に、魅了される人は多いに違いない。

 

 

 

 

 

「松山 猛 時と人を繋ぐもの」とは

日本の時計ジャーナリストの草分け的存在である、松山 猛さんが心惹かれた時計や人、ブランドに宿る物語を独自の視点で紹介していく連載。

 

 

 

 

筆者プロフィール

 

日本の作詞家、ライター、編集者。1946年京都市生まれ。1968年、ザ・フォーク・クルセダーズの友人、加藤和彦や北山修と共に作った『帰ってきたヨッパライ』がミリオンセラー・レコードとなる。1970年代、平凡出版(現マガジンハウス)の『ポパイ』『ブルータス』などの創刊に関わる。70年代から機械式時計の世界に魅せられ、時計の魅力を伝える。著書には『智の粥と思惟の茶』『大日本道楽紀行』、遊びシリーズ『ちゃあい』『おろろじ』など多数。

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