気になる、あの人、あの服。服部昌孝、米山周子らに聞いた「センスのいい友」

2024.12.14

スタイリスト・服部昌孝、〈UNITED ARROWS & SONS〉バイヤー兼セールスマスター・吉岡レオ、〈PORTRATION〉オーナー・野中卓也、〈UNION TOKYO〉マーケティングディレクター・白橋誠一郎、〈SUNSEA〉デザイナー・米山周子、フォトグラファー・三部正博

服部昌孝（スタイリスト）

“気になる人”と言われていますが……。

ありがとうございます（笑）自分がオシャレかはわかりませんが、スタイルのある人って、自然にやっていることがサマになるか、狙ってキャラを作りに行っているか。で、俺は後者。これと決めたら、一つのことをとことん突き通します。その時々で“何かに沼る”ことを繰り返してきました。

自分のスタイルを象徴する服は？

今は車とバイクに夢中で、モータースポーツ関連の服にどっぷり“沼って”います。着て楽しい、見て楽しいデザインばかりで、どれもがダサカッコイイ。そういった艶っぽくないものの方が自分らしく馴染ませやすい。

中でも、一番のお気に入りは？

〈ドーバーストリートマーケットギンザ〉で見つけて一目惚れしたのが、2023年春夏シーズンの〈ジュンヤワタナベ〉のピットジャケットです。一応レディースなんですが、サイズ感はまったく問題なし。同じシリーズで並んでいたホンダとのコラボジャケットも甲乙つけ難くて2着まとめ買いしました。

どちらも一歩間違えば、オイルのにおいがするガチの作業着に見える、そんな危うい佇まいがたまらなく好き。着る時は、怪しい風貌に見えないように〈バレンシアガ〉のキャップと合わせてバランスを取っています。

あなたが“気になる人”は？

俺と同じようにキャラ作りを頑張っているなと思うのが、（吉岡）レオ。いつもどこの何だかよくわからないキャップを被っていて、そうやって恥ずかしげもなくファッションで自己主張できるタイプってなかなかいないから、その点においてはズバ抜けていると思うよ。

〈ジュンヤワタナベ〉のピットジャケット — 胸や腕に無数のワッペンが付いた、〈マクラーレン・オートモーティブ〉とのコラボジャケット。

スタイリスト・服部昌孝 — ピットジャケットを羽織り、愛車の1971年式のダットサン240Zに乗車。英国の老舗ブランド〈デンツ〉のドライビンググローブを装着したら、出発の準備完了。

profile

服部昌孝（スタイリスト）

はっとり・まさたか／1985年静岡県生まれ。ファッション、広告、アーティストなど、多岐にわたり活躍。2020年、制作会社〈服部プロ〉を設立し、制作総指揮も務める。22年、運転免許を取得し、生活はモータースポーツ一色に。
Instagram：@masataka_hattori

吉岡レオ（〈UNITED ARROWS & SONS〉バイヤー兼セールスマスター）

“気になる人”と言われていますが……。

むしろ僕の方が、服部さんの服装や作るビジュアルをいつも気にして見ているので、そんな先輩からの推薦というのがめちゃくちゃ嬉しいです。

自分のスタイルを象徴する服は？

おしゃれは足元からと言いますが、僕は“帽子から”。それくらいキャップは自分らしさを出すうえで欠かせません。ブランドものからボロボロの古着まで70点近く所有する中から、気分で1点選んで、その日の装いを考えるのが、毎朝のルーティンになっています。

中でも、一番のお気に入りは？

ドナルド・トランプの息子、バロン・トランプが鼻血を流している、あまりに馬鹿げた刺繍が施されたキャップは代えが利きません。こんなウィットに富んだデザインで、上質なウール製というのも意外性があって面白い。自分にとって新鮮なものを常に探しているので、これはまさにツボでした。ちなみに今日はトランプ一家への敬意を込めて、赤いネクタイを締めたネイビージャケット姿でキメました（笑）。

あなたが“気になる人”は？

着ているのを見て、「何のTシャツですか？」とつい聞きたくなるのが、〈PORTRATION〉オーナーの（野中）卓也さん。ヒップホップカルチャーをディグる時には、ここが間違いない。頼りにしている先輩です！

〈アンファン・リッシュ・デプリメ〉のキャップ — パリとLAを拠点に活動するデザイナー、ヘンリー・レヴィが、“フレンチパンク”をテーマに手がけるブランドのキャップ。価格は8万円ほど。

〈UNITED ARROWS & SONS〉バイヤー兼セールスマスター・吉岡レオ — バイヤーでありながら、現在も原宿本店のセールスマスターを兼任。

profile

吉岡レオ（〈UNITED ARROWS & SONS〉バイヤー兼セールスマスター）

よしおか・れお／1993年東京都生まれ。2015年、〈UNITED ARROWS〉入社。20年、原宿本店のセールスマスターに就任。22年から現職。日々のスタイリングをインスタグラムで発信中。
Instagram：@129oer

野中卓也（〈PORTRATION〉オーナー）

“気になる人”と言われていますが……。

感度の高い人に「気になる」と言われるのは誰でも嬉しいですよ。それがまさか自分のことだなんて！

自分のスタイルを象徴する服は？

もともとDJをしていたこともあって、多感な時期はヒップホップにどっぷり浸かりました。だからレコードと同じでラッパー関連のTシャツは、10代、20代の記憶が蘇る装置なんです。袖を通すと無条件でテンションが上がる。僕にとって、こういう高揚感を味わえる服はヒップホップTシャツだけなんです。

中でも、一番のお気に入りは？

ラッパー関連のＴシャツを集めるきっかけが、ア・トライブ・コールド・クエスト（4人組のヒップホップユニット）でした。当時は、よくわからずにこのTシャツのレプリカを着て街やクラブを闊歩（かっぽ）していたんです。レコードはオリジナル版！ってこだわって集めていたのに、Tシャツに関してはなんて無知だったんだって、今振り返ると悔しい。いつか“本物”に袖を通したい、その念願が昨年ようやく叶いました。

あなたが“気になる人”は？

自分が憧れた時代に、リアルタイムでその現場を見ていた先輩！それが白橋（誠一郎）さん。スニーカー全盛期の90年代を知る人が、今どんなモデルを選ぶのかは常にチェックしています。

ア・トライブ・コールド・クエストのヴィンテージTシャツ — 所有する約50枚のTシャツの中で最も大切な一枚が1993年に発売されたア・トライブ・コールド・クエストのツアーのオフィシャルTシャツ。

〈PORTRATION〉オーナー・野中卓也 — 野中さんが店主を務める〈PORTRATION〉は冬もTシャツがずらり。

profile

野中卓也（〈PORTRATION〉オーナー）

のなか・たくや／1987年石川県生まれ。20歳で上京。DJとして活動する傍ら、2016年にヒップホップTシャツを軸にしたオンラインストア「PORTRATION」をオープン。19年、渋谷区神宮前に実店舗を構える。
Instagram：@portration

白橋誠一郎（〈UNION TOKYO〉マーケティングディレクター）

“気になる人”と言われていますが……。

恥ずかしいですが嬉しいです。店も近いですし、これからもご近所付き合いよろしくお願いします。

自分のスタイルを象徴する服は？

バスケットシューズをファッションとして取り入れるのは今じゃ当たり前ですが、僕が10代だった90年代初頭はまだ新鮮な文化でした。そんな時代の変革期に育ったからか、バッシュはワードローブの中でも特別なものに。中でもJORDANシリーズは当時マイケル・ジョーダンが時の人だったこともあって憧れの存在で、今でも《AIR JORDAN》推しなのは変わりません。

中でも、一番のお気に入りは？

この年になって、派手なシューズをコーディネートに取り入れることはあまりできなくなりました。今の好みは、ベーシックなデザインと配色。2022年秋に復刻したグレー×白の《AIR SHIP》は気分にもぴったりで、振り返ってみて「買って良かった」と改めて思うもの。ジョーダン好きとしても、持っておきたい一足です。

あなたが“気になる人”は？

服装だけでなく、おいしいお酒も知っていて料理も上手、ライフスタイルごと素敵な（米山）周子さんの“今旬なもの”はいつも気になっています。最近はもっぱらメキシコにゾッコンらしくて、先日のタコスパーティで着ていた民族衣装はどんなものなんだろう？

〈ナイキ〉バスケットボールシューズ《AIR SHIP PE》 — 1984年に生まれた《AIR SHIP》は、《AIR JORDAN 1》以前に、マイケル・ジョーダンが履いていたといわれる隠れた名品。

〈UNION TOKYO〉マーケティングディレクター・白橋誠一郎 — 本社のあった静岡県・静波を離れ、〈UNION TOKYO〉のある東京を拠点に。

profile

白橋誠一郎（〈UNION TOKYO〉マーケティングディレクター）

しらはし・せいいちろう／1977年東京都生まれ。〈STUSSY JAPAN〉入社後、ブランドの企画、PRを経て、現在はLA発のセレクトショップ〈UNION TOKYO〉のマーケティングディレクターとして従事。

米山周子（〈SUNSEA〉デザイナー）

“気になる人”と言われていますが……。

誠ちゃん（白橋誠一郎の愛称）が細かいところまで見てくれて嬉しいです。いつも気にしていてくれるってことは好きと言われるより嬉しいこと。ありがとう！

自分のスタイルを象徴する服は？

旅して出会う服。「鉄は熱いうちに打て」というがごとく、すぐ熱くなるタイプです。好きになったら電光石火のようにもっといろんなことを知りたくなります。今夢中なのは手作業が愛おしいメキシコの洋服。民芸品、食べ物、文化も。知れば知るほど深く好きになる。

中でも、一番のお気に入りは？

メキシコが大好きな友達とのタコスパーティで着るセットアップ。大きなソンブレロを被り気持ちを温めながらパーティへ向かい、タコス作りの時はメキシコのお母さんから譲ってもらったエプロンを上から着る。たとえ毎日は着られなくてもひそかにクローゼットで出番を待ち、出番が来たらその空間で自分も友達もみんなが楽しくなるような活躍をする洋服が大好きです。

あなたが“気になる人”は？

三部（正博）さん。どんなものを身に着けていても、その姿は三部さん自身が撮る写真のようだなぁと感じます。先日も、さりげなく持っていた山ブドウの籠バッグに目が釘づけになり、朝まで語り明かせそうなくらい話が止まらなくなってしまいました。

メキシコの民族衣装 — メキシコから帰国後、日本で見つけた1960年代の民族衣装。

〈SUNSEA〉デザイナー・米山周子 — 肩から下げたバッグも民族衣装と同じ時代のメキシコのもの。ずっと通っている喫茶店〈ヴェルデ〉のカウンター席でくつろいでいるところを撮影。

profile

米山周子（〈SUNSEA〉デザイナー）

よねやま・しゅうこ／新潟県生まれ。2008年、ヨネゴロウさんの愛称で親しまれる夫の米山忠義と共に〈SUNSEA〉をスタート。9年ぶりに旅したメキシコ、25年ぶりに再開したスキーに、現在は夢中。

三部正博（フォトグラファー）

“気になる人”と言われていますが……。

周りにたくさんいる、個性的な人やセンスのいい人の中から、僕をピックアップしていただけて、非常に恐縮です。

自分のスタイルを象徴する服は？

せっかく服を着るなら作っている人の背景まで好きになりたいと思うんです。だから量産された服ではなくて、手仕事の光るものや、考え方に共感できるものを買うようにしています。決まったジャンルがあるわけではありませんが、こういった自分なりの基準が、周子さんの言う「いつも自分のスタイルにまとまっている」ということにつながっているのかも。

中でも、一番のお気に入りは？

山ブドウの籠バッグは、なんとなく女性のものという印象を持っていたのですが、このバッグは編み目が粗くて、大ぶりだったので、これなら自分が持つのもいいかなと思って。民芸の視点で見ても、武骨と言われそうな歪んだ形も僕にとってはいいなと思う味わいの一つなんです。とはいえ、買って良かったのか自分でも半信半疑でしたが、今回の周子さんの推薦を受けて、自信を持って大事と思えるものになりました。

あなたが“気になる人”は？

今回の数珠つなぎは僕で終わりみたいですが、もし次があるなら、岡山を拠点にする〈TUKI〉のデザイナー、原田（浩介）さんを紹介したいです。いつもは履き込まれたスニーカーを履いている中華屋の親父さんみたいな雰囲気ですが、話を聞いているといい革靴もたくさん持っているみたいです。いい意味で東京の雰囲気に染まっていなくて、真空状態の洗練した感覚を持ち続けている人だと思います。

〈宮本工芸〉の籠バッグ — 津軽伝統の山ブドウ皮細工で作った籠バッグ。パソコンやB4サイズのノートも楽々と入る。

フォトグラファー・三部正博 — 2023年から、東京と箱根の2拠点での生活を始める。週末は、ゆっくりとした時間が流れる箱根の吉村順三建築の別宅で過ごすことが多いそう。

profile

三部正博（フォトグラファー）

さんべ・まさひろ／1983年東京都生まれ。パーソナルワークと並行し、美術、建築、音楽、ファッションの分野でコミッションワークを手がける。
HP：http://3be.in/

元記事で読む

BRUTUS

の記事をもっとみる