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逆立ちの効果がすごい。その正しいやり方とコツを専門家が解説

  • 2024.12.31

近年、巷でちょっとした話題になっているのが大人の体操教室。

バク転やアクロバットに憧れをもつ大人たちがこぞって参加しているそうだけれど、それらの動きの基礎となるのが逆立ちと言っても過言ではない。

「逆立ちができるようになると、身体操作がうまくなります。ひとつのトレーニングでもありながら、新たな体の使い方を習得することで、ゴルフのスコアアップや筋トレの重量アップなど、他の競技にも良い影響を与えてくれます」

そう話すのは、パーソナルトレーナーの林健太さん。最初は恐怖心が大きく、慣れるまでは時間がかかるかもしれないけれど、天地が逆転した状態は、日常で重力を受け続ける身体にとっては様々な良い影響を与えてくれるそう。

早速、「逆立ちの効果」や「正しいやり方」について林さんに教えてもらった。(「」以下・林健太さん)

逆立ちの効果

逆立ちは、プランクなどと同様に、筋肉の伸び縮みのないアイソメトリックトレーニング。つまり、筋肉をつけることよりも、インナーマッスルの強化などに向いている種目

壁倒立や三点倒立など種類も様々あるが、どんな逆立ちでもメリットが多いので、無理のない範囲で体を刺激してみよう。

・関節可動域アップ

まずは全体重を手で支えるため、手首の十分な可動域は必要不可欠。逆立ち中は手関節が反った(背屈)状態になるが、日常の生活はその反対(掌屈)状態を作る動作が多いため、最初は無理せず慣れさせることが重要。

「料理やパソコン作業など、日常生活では背屈状態で負荷をかけることが少ないので、普段からのストレッチも大切ですが、逆立ちをすることでもその効果を得ることができます。

最初から手首に全体重がかかると、怪我につながる恐れもあるので、ステップを踏んで行ってほしいですが、腕立て伏せを行うだけでも手首に痛みや不安を感じる方は、逆立ちは避けて普段のストレッチを優先した方が良いです」

手首には小さな骨や重要な軟骨組織が存在するので、短時間で瞬間的に体重がかかる場面はより一層注意が必要だ。

・筋力アップ

「両腕を脚の代わりとして全身の体重を支えるため、十分な筋力が必要と思われがちですが、私たちが普段立っている時に無駄な力を使わないのと同じように、ある程度の筋力があれば逆立ちは可能です」

まったく運動経験のない人が逆立ちをすると、翌日は腹筋や肩などあらゆるところが筋肉痛になるだろうが、逆立ちは筋力で支えるのではなく、重心を捉えて行うため、特別ハードな筋トレを行なった人だけができる匠の技というわけではない。

筋肉痛では必ずしも筋肥大が起こるわけではないが、最低限の筋力アップには繋がる。もし筋肉痛がある場合は、微細な筋損傷や疲労の蓄積も考えられるので、回復の頃合いを見計らって継続してみよう。

・バランス感覚アップ

逆立ちはバランスを保つために胴体の安定性と制御が求められる。

腹筋群や背筋群など体幹の筋肉が、逆立ち中に背骨や骨盤を安定させ、これらの筋肉が適切な力とタイミングで働くことで、全身のバランス感覚も養われていく。

「普段の平衡感覚は、足裏や視覚からの情報などを頼りに体幹のコントロールを行っていますが、逆立ちをすることでそれらが遮断されたり反転されたりします。より不安定な状況下での体幹コントロールが必要になることで、バランス感覚も磨かれます」

バランス感覚を養うことは運動神経の向上にも繋がり、様々な競技スポーツ技術の向上はもちろん、普段の転倒予防や反応速度の強化にも繋がります。

・内臓や骨のポジションの調整

腸の形は100人100様であるためすべての人に当てはまるわけではないが、重力の影響はもちろん、先天性で下垂してしまっている場合も、逆立ちにより一時的に理想的なポジションに戻る場合も考えられる。

「逆立ちにより内臓下垂へ与える影響をまとめた研究は見当たりませんが、体調の変化を感じるという声は多々見受けられます。少なくとも血流の変化や、重力を受けていた内臓が解放されて、何らかの働きをすることは期待できるでしょう」

また、普段は刺激を得ることの少ない上半身から指先の骨まで刺激されるため、骨密度の改善も期待できる。特に背骨の間にあるクッションの役割を果たす椎間板は潰れると元には戻らないため、一方向からの重力に逆らうことができる逆立ちは、骨の健康のためにも良いと考えられる。

バーベルを担いだスクワットなど、日々背骨に大きなストレスをかけている人は、逆立ちでリフレッシュしてみるのも良いかもしれない。

逆立ちのやり方

Women's Health

逆立ちをすることで、骨盤の役割を果たすのが肩甲骨。つまり、背骨と肩甲骨のポジションが崩れた猫背や反り腰の状態を矯正して、まずは正しい姿勢を作ることが求められる。

普段から腕を真っ直ぐ頭上に上げることが難しい状態で逆立ちをしてしまうと、体重を支えることができない上に、肩などに余計な負荷がかかってしまい思わぬ怪我に繋がる可能性もあるため、決して無理をせず順を追って挑戦しよう。

・やり方1:バンザイでうつ伏せになる

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まずは腕を頭上にあげた状態でうつ伏せになり、逆立ちのボディラインをイメージすることから始める。この時にバンザイの状態を続けることが辛い人は、まずはこの姿勢がしっかりと取れる様にストレッチを行うこと。

「どれだけ筋力があっても、逆立ちの姿勢が作れる様にならなければ意味がありません。慣れてきたら手首の下あたりに、ボックスティッシュ程度の高さのあるものを置いて、より腕が真っ直ぐ頭上に上がるように柔軟性を高めると良いでしょう」

・やり方2:ぶら下がる

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背骨にかかる重力も軽減され、姿勢改善にも繋がるので逆立ちを目指さない人にもおすすめ。ぶら下がることで体は一直線に保たれるが、うつ伏せの時以上に肩甲骨周りの柔軟性は必要になる。

「鉄棒の様な真っ直ぐの棒ではなく、少し角度のついた懸垂バーがあると、関節に余計負担をかけずにより自然な角度で行うことができます。ぶら下がった状態で体を軽く左右に捻ることで、様々な方向からストレッチがかかるので、逆立ちに必要な柔軟性や体幹の筋力を身につけるためにも有効です」

ぶら下がる環境がない場合は、チャイルドポーズやダウンドッグ、フォームローラーを使ったストレッチを頻繁に行い、上背部の柔軟性や肩甲骨の可動性を高めよう。

・やり方3:ショルダープッシュアップポジションをとる

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腕立て伏せの姿勢から、肘と膝を伸ばしたまま腰を突き上げる様に手と足を近づけて逆V字になった状態がショルダープシュアップポジション。つま先立ちになり、できるかぎり肩にしっかりと体重をかけてまずは15〜30秒を目安に静止する。

「慣れてきたら脚を台の上に乗せて、さらに上半身が垂直になる様にしてみましょう。その状態でしっかりと支えることができていれば、逆立ちの状態になっても支え切ることができるでしょう」

・やり方4:壁を使う

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壁に背を向けた状態から腕立て伏せのポジションを作り、そこから後退するように足で壁を登らせていくウォールウォークを何度も行い、最終的には垂直に近い姿勢になるまでトライする。

垂直の状態で15〜30秒キープができるようになったら、最後はいよいよ壁に向かって脚を蹴り上げる逆立ちに挑戦。

「壁に向かって立ち、30cm程度離れた場所に手をついたら一気に脚を蹴り上げます。最初は壁まで脚が届かなくても、腕に体重がかかる時間を長くするだけでも十分です。もしまだ壁まで脚を蹴り上げるのが難しい場合は、頭もついて三点倒立から行うと、恐怖心もかなり小さくなるでしょう」

ーやり方1~4は逆立ちの前に毎回ひと通り行うの? 

「1から順に行い、慣れてきたら次のステップ(2へ)移ります」

ー逆立ちはどのくらいの頻度で行うべき?

「疲労感がなければ日々のストレッチなどと合わせて毎日行っても問題はないでしょう。但し、ちょっとしたミスが大きな怪我につながることもあるので、一回に行う時間は短めから始めていきましょう」

逆立ちを安全に行うために

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段階を踏んで練習していく逆立ちも、完成に近づけば近づくほど、安全への配慮の重要性が高くなる。

「一度大きな失敗をしてしまうと、恐怖心から再びチャレンジするまでに時間を要してしまうことも多いです。安全に行える確信を持ち得た体調や環境で練習することで、逆さになることへの不安感を少しでも払拭することが怪我をせずスピーディーに上達することに繋がります」

・逆立ちを行う際の注意点

普段は下半身に溜まりやすい血液も、逆立ち中は上半身や頭部に集中する。それにより、血流を改善する効果も期待できるが、万人が行っても良い運動とは言い切れない。

「逆立ちをすると眼圧は約2倍になと報告されています。特に緑内障や高血圧の人にとって逆立ちはリスクが上回りますので、行わないようにしてください。また、重力に逆らう部分が多くなるので、心臓も普段より強く血液を送り出す必要があるため負担がかかります」

もし、各ステップの練習中に違和感を感じたら即座に中断すること。加齢とともに心臓血管系や脳、そして関節などへの不安は大きくなるので、運動習慣のない人が逆立ちを行う場合は、他の運動も合わせて行うことが推奨される。

・逆立ちのコツ

逆立ちのもっとも大きな恐怖感の一つが、つぶれること。万が一逆さ状態が耐えきれなくなった時、どのように戻ればいいかを習得していないと、つぶれるという選択を取らざるを得なくなる。

他に逆立ちを終わらせる方法としては、元の軌道で戻ることや側方に降りる方法もあるが、その方法を選択する心構えだと、どうしても逆立ちの姿勢まで思い切ってできず、上達までに時間がかかってしまう。

まずは前回り(前転)がうまくできるようになると、つぶれた時や反対側に倒れそうになったときでも、頭や体を守る体の動きが身につきます。

マットなどを敷いて逆立ちの練習をする際、ステップ3からは前転の練習も並行して行うと良いでしょう」

まとめ

一見難しそうに見える「逆立ち」。でも段階を踏めば初心者でも挑戦でき、健康面でもメリットも大きい。安全に楽しく続けることで、逆立ちが特別なスキルから身近なエクササイズに変わるはず。ぜひトライしてみて。

参考文献:

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9086612/

https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/case/rakka_case.html

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16806478/

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