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「母の再婚で改姓を強制される子」という当事者の声も聞いて下さい

  • 2024.12.12

「子供の気持ちはお考えですか?」
「夫婦別姓だと子供が強制的に親と別の姓になるんですよ?」

選択的夫婦別姓についての議論をSNS上で見ていると、反対派から必ずと言っていいほどこんな発言が出る。選択的夫婦別姓の推進派は子供のことを考えていない、親と別姓だと子供が苦しむ、という趣旨のようだ。

このような反対意見を出している人々が果たして夫婦別姓の元に生まれた子供、つまり当事者であるかどうかは私の窺い知るところではない。

しかし、彼らは「母親の再婚によって改姓を強制される子供」の存在を完全に無視している。そして、選択的夫婦別姓によって不幸になる子供は未来の可能性でしかないが、母親の再婚によって改姓を強制された子供の苦しみは現在進行形で存在していると断言できる。
私自身がまさに、「母親の再婚によって改姓を強制される子供」の当事者であるからだ。

◎ ◎

私が小学1年生の頃、両親は離婚した。私は母親に養育されることとなったが、戸籍上の姓は変えず父親の姓を名乗り続けた。

慣れ親しんできた名字を変えるのは子供心にも嫌だったし、そもそも友達や先生から呼ばれる名前なので、もはや名字は自分のアイデンティティの一部だったからだ。

私が小学5年生の頃、母親は再婚した。当時は学歴も職歴もないシングルマザーを正社員として雇うような企業は少なく、再婚しなければ私と兄の学費や生活費が非常に苦しかったのだろう。

母親が結婚相談所で出会った男性と、ろくに話す機会もなく、いきなり同居が始まった。

それが当たり前かのように、再婚相手の男性の名字の表札がかかった家に引っ越しをさせられ、当然のことかのように、自分の名字も見知らぬ他人のものに変えられた。もちろん嫌とは言ったが、「中学校に上がるタイミングで変えればいいでしょ」と一蹴された。
私は元の名字が大好きだった。名字の最初の2文字を取ると、食べ物の名前になる名字で、友達はみんなその食べ物の名前で私を呼んでいた。

◎ ◎

中学校の入学式、名字が変わったことを誰にも言えないまま、名札を隠すように猫背で入場し、席に座った。式が進んでいくと、新入生の名前が1人1人フルネームで読み上げられ、呼ばれた新入生は返事をして立つ時間が始まった。
私は焦って、涙が出そうになった。私は地元の公立中に進学したため、同級生も上級生もほとんど小学校が同じで知っている人たちだったからだ。名字が変わったことが全校生徒の前でバレてしまう。

無情にも名前は呼ばれ、友達から投げかけられる奇異の目線を感じながら声を喉の奥から絞り出して返事をし、すぐに座った。屈辱的で、恥ずかしかった。
その後、廊下を歩いていると、踊り場で友達が私の家が離婚したことを噂しているのが聞こえてきた。堂々としていようと、あえてその場に通りかかると、「離婚したの?」と直接聞かれ、「うん」と答えた。顔から火が出るほど恥ずかしく、入学式の日にもかかわらず逃げるように1人で帰った。

◎ ◎

幸いその後、友達は皆変わらず接してくれたし、変わった後の名字を、まるで私が元々その名前だったかのように受け入れてくれた。それは恵まれていたと思うが、同時に私の好きだったあだ名が消えていくのも耐え難く寂しいものだった。
養父との関係も上手くいかず、家庭内で連れ子の私は疎まれていたため、10代の時は養父が憎くて憎くて仕方がなかった。私から安心できる家と名字のアイデンティティを平然と奪った人間に、懐けるはずがなかった。

選択的夫婦別姓に反対する人たちは、女親の子供が改姓を実質強要されるのは仕方がなくて、将来夫婦別姓になって親と生まれつき名字が違うことで生ずる「かもしれない」子供の苦しみは防ぐべきだと考えているのだろうか。
今ある苦しみに目を向けないのはなぜだろうか。

子供の声を聞けと言うのなら、私のような子供の声も聞いてほしいと思う。

■黒宮のプロフィール
国立大理系卒、大学院生。生物学を研究しています。鳥が大好き。

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