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久々の「お弁当の匂い」に、中高生時代の思い出が一瞬で蘇った

  • 2024.12.12

最近、大学の学食の濃い味に飽きてお弁当を持参するようになった。

大学の授業が2限からの日だけ、朝ごはんの準備のついでに作る。夕飯の残り物と冷凍庫の中からの掘り出し物を集めて、それにささっと作れる炒め物や卵焼きを足す。おかずをお弁当箱に詰めていくのは意外と楽しくて、今のところ続けられている。

お弁当箱を開くと広がる独特の「お弁当の匂い」。お弁当初日に久々に嗅いだその匂いは、私の思い出を一瞬で蘇らせた。

◎ ◎

私の学校では、中学、高校とお弁当だった。昼休みになるとクラスメイトと席をくっつけて、誰からともなくお弁当箱を開く。それまで鞄の中で密閉されていたお弁当独特の匂いが一斉に教室中に放たれる。その匂いに包まれながらワイワイガヤガヤ騒いでお弁当を食べる時間が、私たちの一番の楽しみだった。

カレーを持ってきた子が1人でもいると、教室中がカレーの匂いで満たされる。「誰?!カレー持ってきたの!」なんて言ったり、昼休み後の授業に来た先生から弁当臭いと文句を言われたり。それを理由に冬に換気をされると本当に寒かった。

中学生の時は号車(机の縦の列)で席をくっつけて食べていたから、席替え後は話したことのない子がいたりして数日の間ちょっとだけ気まずかったっけ。それでもすぐに仲良くなれていたのは、お弁当の持つパワーが関係していたのだろうか。

次の席替えになる頃にはすっかり仲良くなって、今日で最後だね、と別れを惜しむまでになっていた。気になる子が向かいに座っている時には綺麗に食べようと意識するあまり、なかなか食べ終われなかったっけ。

◎ ◎

高校になると仲の良い子で集まって食べていたからしょっちゅう席取り合戦をしていた。いかに早く手を洗って席を確保するかが毎日のミッションだった。小さな机に椅子をいくつも寄せて、ぎゅうぎゅうになって食べる弁当は、どうしてあんなに美味しかったんだろう。

誰が誰のこと好きらしいよ、あそこの2人はとうとう付き合ったんだって!なんて噂話や、この前2人で遊びに行ったの!と嬉しそうに語る友達の惚気大会。女子トークに花を咲かせているうちに、昼休みの時間はあっという間に過ぎていく。

授業の時間はあんなに長く感じていたのに。受験期になると自分の席で食べながら勉強するようになって、でもやっぱりさみしくてたまに集まったりした。お弁当を食べながらたわいない話をすることで受験期の鬱々とした気分もいくらか晴れて、午後からの授業も何とか頑張れた。時には進路について真剣に語ることもあった。

◎ ◎

昼休みの大部分を占めるお弁当タイムには、たくさんの思い出が詰まっていたのだと、今になって気づく。
今は食堂でご飯を食べるからあの濃度でお弁当の匂いを嗅ぐことはなくなった。それに、食堂の匂いはお弁当のそれとはちょっと違う。

少しむわっとするような、あんまりいい匂いではないけれど、懐かしい匂い。うっすら感じながら、私は今日もお弁当の蓋を開ける。

■ルーセントのプロフィール
理系の大学生。幼い頃から生き物と本が大好き。中高で味わえなかった青春を大学で取り戻そうと奮闘中。

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