バイオレンスな描写から美しいキャラクターデザインまで…世界から注目される“鬼才”梅津泰臣監督の軌跡をたどる

【写真】バイオレンスなシーンも多くR18指定となった「A KITE」も放送される

「A KITE」(1998年)、「MEZZO FORTE」(2000年)などを手掛けたことで知られ、唯一無二の独特な世界観が国内のみならず世界中から人気を集める鬼才・梅津泰臣監督。そんな彼が約10年ぶりに監督を務め、アニメーションスタジオ・シャフトとタッグを組む新作アニメーションシリーズ「ヴァージン・パンク」の製作が発表された。本シリーズの第1弾「Clockwork Girl」は2025年の初夏に劇場公開される予定となっており、世界中の多くのファンが公開を待ちわびている。今回はそんな日本のアニメーション界をけん引する1人でもある梅津氏のキャリアを紹介する。

ダークサイドに翻弄される美少女の運命を描いた大ヒット作

唯一無二の世界観で日本のアニメーション業界において大きな影響を与え続けている梅津氏。監督、アニメーターとして活躍する彼が初めて注目を浴びたのは、1980年代後半から90年代初頭だ。この時期の日本のアニメーション業界といえば、革新的な作品が続々と誕生していく中、特にOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)が急成長し、アニメの表現の幅が広がりを見せていた。

「ストップ!!ひばりくん！」(1983-1984年)で初めて作画監督を努め、「メガゾーン23／Part2」(1986年)のキャラクターデザイン、「機動戦士Zガンダム」(1985年)のオープニングアニメなどを手掛けた梅津氏。また、大友克洋氏らと共に制作に参加したオムニバス作品「ロボットカーニバル」(1987年)の中の「プレゼンス」で監督デビューを果たす。

当初はアニメーターとして活躍していた梅津氏だったがキャリアを積み重ねていくにつれ、自身でもオリジナルアニメの企画立ち上げから監督までを担当する機会も増えていった。中でも彼の代表作の一つとして挙げられるのは、「自分のアニメーターとしての集大成」とも語るなど思い入れの強い作品である、R18指定のアダルトアニメとして製作された「A KITE」だ。同作は女子高校生と殺人請負人という2つの顔を持つ美少女・砂羽(さわ)が生きる泥沼の世界を中心に、彼女の前に現れた同じく殺人請負人の音分利(おぶり)との出会い、そして彼らの運命を狂気的なタッチで描いている。

ダークサイドを舞台としているため、バイオレンスな描写がたっぷりのハードアクションやセクシャル的な要素も多い同作だが、同時に美しいキャラクターデザインやクオリティーの高い映像が評価され、“伝説的アダルトアニメ”との呼び声も高い。日本のみならず、アメリカやヨーロッパなどのアニメファンの間でも強烈な人気を誇り、2015年にはハリウッドで実写映画も製作されるなど広く支持されてきた。

時代を彩った伝説のアニメ作品が一挙放送

その後も「A KITE」と同じくR18指定作品として製作された、合法非合法を問わず危険な仕事の代行をなりわいとする少女のアクションアニメ「MEZZO FORTE」や、テレビアニメ「ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル」(2014年)を手掛けるなど、幅広いジャンルの作品に携わっていく。アニメのオープニング・エンディングの演出、アニメーターとして現在も第一線で活躍してきた彼だったが、2024年の9月に製作発表された「ヴァージン・パンク」では約10年ぶりに企画・原作、そして監督を務める。解禁されたPVは美しいアニメーションやキャラクターのビジュアルとは裏腹にダークな要素もたっぷりと詰まった雰囲気が伝わってくる内容だけに、ますます今後の展開も見逃せないだろう。

12月の衛星劇場では「VHSを巻き戻せ！俺たちのOVA特集 vol.6」と題して、センセーショナルな内容や先進的な作画で日本のアニメーション業界の最先端を走ってきたOVA作品をセレクトした特集がオンエアされる。

梅津氏が手掛けた作品では、12月18日(水)深夜2:10から「MEZZO FORTE」、12月27日(金)深夜1:45から「A KITE」を放送。その他、銀河を舞台に2人の奇妙な恋愛関係を描くSFアドベンチャー「アウトランダーズ」(1986年)を12月17日(火)夜8:00～から、原作者・士郎正宗氏が監督を務め、脚本・絵コンテを書き下ろした「ブラックマジック M-66」(1987年)を12月12日(木)深夜2:00から、戦国時代を舞台にからくり人形を操る少女が自分の城、そして父を殺した敵を討つ物語「からくりの君」(2000年)が、12月13日(金)深夜2:00からそれぞれ放送される予定だ。

◆文=suzuki