シェール、1986年のアカデミー賞で着用したアイコニックなドレスは怒りから誕生

シェールが1986年に第58回アカデミー賞で着用したボブ・マッキーによるアイコニックなドレスは、怒りから生まれたものだったそうだ。「（難病の子どもを抱える母親を演じた『マスク』で）受賞確実だと目されていたのにノミネートすらされなかった。誰も私が演技に対して真剣だと思っていなかったのです」とドキュメンタリー『Bob Mackie: Naked Illusion（原題）』で語り、ドレスの製作秘話を明かした。

彼女が選んだのは、ビジューを散りばめたひし形のブラレットとサイドに深いスリットの入ったローライズのスカート。足もとはサイハイブーツ、さらに大きな羽根飾りのついたヘッドピースを合わせた。マッキーによると、ドレスの方向性はすぐに決まったそうだ。「シェールにとってドレスアップとは、可愛らしいドレスを着ることではなかった。つまり質の良い装いにすること。僕はその時スケッチブックを持っていたので、すぐにアイデアを絵にした。彼女とはその先1カ月は会えないだろうと思ったから、着手しなくてはいけなかった」

こうして出来上がったドレスは、彼女の狙い通りだった。助演男優賞のプレゼンターとして舞台に上がったシェールは、会場に向かって「ご覧になっておわかりかと思いますが、アカデミーから真面目な女優らしい装いについて書かれた小冊子を受け取りました」と堂々と語ったそう。「あれは、アカデミーに対してクソくらえと言った瞬間でした。彼らは、私のライフスタイルではなく、私の仕事だけを見て判断すべきだからです」

マッキーは、「シェールが初めてのオスカーで、大きなモホークのヘッドピースとお腹を出した姿でドン・アメチーにトロフィーを手渡すのを見て、人々は恐怖を感じた。『これはファッションではない』という風にね。彼らはただ恐れたのです」と振り返るが、この年の授賞式でホストを務め、活動家としても知られるジェーン・フォンダの反応は違ったそうだ。彼女のルックに興奮して、「『シェール、どうか私が舞台を降りるまで待っていて。皆のリアクションを見たい』と言ってくれました」。この2年後、シェールは『月の輝く夜に』でアカデミー主演女優賞を獲得。演技で実力を認められることとなった。

Text: Tae Terai

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