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大嫌いな父親との思い出を振り返って描く家族喜劇『40歳になって考えた父親が40歳だった時のこと』

  • 2024.12.11

自分が親の年齢に近づいたからこそ、親の気持ちがわかったり、親との関係を見つめ直したり…といった経験をしたことがある方も多いのではないだろうか。『40歳になって考えた父親が40歳だった時のこと』(吉田貴司/幻冬舎)は、漫画家である作者が父親との関係に向き合った、初の自伝エッセイ。自身の「父親」についてと、自分が「父親になること」について赤裸々に描いた、笑いあり暴力あり涙ありの家族喜劇だ。所々にギャグやユーモアが満載なので、重い気持ちにならずに楽しく読むことができる。

「親のこと思い出すのはヘコむなー…」と語る作者は、昔から父親が大嫌いで、大人になるほどさらに嫌いになっていった。そんな作者が生まれたのは、1990年代バブル崩壊前夜の大阪。父親は一匹狼系タクシー運転手で酒乱。母親は陽気な浪費家だった。幼少期は平和な家庭とはほど遠く、父親の怒鳴り声やコップの割れる音、机を殴る音など大きな物音が溢れる環境で過ごしていた。夜中の夫婦喧嘩にクレームが来たり、母親の借金がバレて一大事になったり…。大変なことも多かった一方で、父親とのお風呂や釣りなど何気ない体験も思い出として残っている。そうした思い出を一つ一つ辿りながら、時に悩み葛藤する作者の心情の変化を最後まで追ってほしい。

作者は段々と、父親を一人の人間として捉え、その人生や内面に思いを馳せていく。その過程には、10歳の息子の存在も大きな影響を与えている。自分自身も「父親」の立場となり、息子との何気ないやり取りの中で、自身と父親を比べながら当時の父親の気持ちに気づき、客観的に見つめ直していく。まさに「親になったからこそわかる親の気持ち」がリアルに描かれている。

父親が嫌いな人、少し距離がある人、そのことで自分を責めてしまう人、また自分自身が父親になることに悩んでいる人に、読んでみてほしい一冊だ。本作を読み進めれば、きっと共感することも多く、その気持ちに何か変化があるはずだ。

文=ネゴト / fumi

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