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契約結婚のお相手はこじらせ国王陛下!?修道女見習いの私が期間限定で契約王妃に

  • 2024.12.10

契約結婚、政略結婚、偽装結婚――。恋愛感情ではなく、何らかの条件や目的を前提に成立する結婚をテーマとした作品には、メインカップルが両想いを目指す通常の少女漫画とはまた違う、独特の緊迫感とときめきがある。

『【急募】猜疑王の契約王妃(※短期のお仕事です)』(新矢りん:漫画、乙川れい:原作、三浦ひらく:キャラクター原案/フレックスコミックス、ビーズログ文庫・KADOKAWA:原作)は、ひょんなことから契約結婚をすることになったヒロインが嫁ぎ先のワケあり国王とドタバタ恋愛劇を繰り広げる、予測不能なラブコメディだ。

修道女見習いとして日々の修行に勤しむヒロイン・エステラは、ある日突然「国のため、期間限定で国王に嫁いでほしい」と告げられる。少しでも人々の役に立てるのなら、自分にとってそれ以上の幸福はない――。清らかな心を持つエステラは、喜んでその話を受け入れる。

契約結婚の相手は、国の英雄として讃えられ、人々から慕われているヴィクリス王だ。しかし、それはあくまで表向きの姿。実際はたび重なる裏切りと謀略のため重度の人間不信に陥り、挙句には「猜疑王」などと揶揄されている気の毒な人物なのだった。

注目すべきは、ヒロイン・エステラの純真さと奉仕の精神だ。いきなり国王に嫁いでくれなどと言われたら、普通の女性なら怖気づいて尻込みするだろう。しかし、エステラは一瞬の躊躇も見せずに、茨の道だとわかっている婚姻を了承した。彼女には初めから、玉の輿に乗って幸せになってやろうという気概や野望など微塵もなかったのだ。

負の感情に支配され人を信じられなくなった人間には、何の打算も駆け引きもない純粋な優しさが何より効くものだ。エステラの差し出す混じりけのない思いやりや包容力に、頑なだったヴィクリス王の心もしだいに癒やされていく。人の傷つく姿を見るくらいなら自分が騙されたほうがマシだというエステラの気高い思いは、もしかしたら裏切りの闇を知る前のヴィクリス王の本来の姿だったのかもしれない。

契約結婚もののラブストーリーの醍醐味は、偽物だった愛が徐々に本物の思慕の念に変わってゆく過程の甘酸っぱさだ。周囲の誰をも疑い跳ね除ける猜疑心まみれのこじらせ陛下と自己犠牲の精神を持つ修道女見習い。一見、正反対な二人の紡ぐ不器用な愛の結末を見届けてほしい。

文=ネゴト / 糸野旬

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