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全員同じ姓でも家族に一体感なんてなかった。同じだからなんだ

  • 2024.12.9

名字を嫌だと思い始めたのは小学校に入った頃だろうか。からかわれやすい名字だった。なんなら、中学校の時に教師から弄ばれたことすらある。

別のエッセイでも書いたけれど、それはわたしを殴る父親の家の名字であり、その祖父母が共通するわたしときょうだいといとこはみんな似た顔だった。

◎ ◎

わたしの家はかなりの家父長制だったし、祖父母の家に行ってもそうだったから、イエと結びついた名字を、父親が持っているからわたしも持たされて、でも殴られる、大いなる矛盾だった。

家が安全でないこと、からかわれやすいこと、そのイエの顔であること……かなり早くから名字を憎みはじめたと思う。

だから、わたしはむしろ名字を変えたい側の人間で、結婚はしたくなかったが名字だけはずっと変えたかった。

◎ ◎

婚姻届を出して、名字が変わったのは嬉しかった。やっと実家のくびきから逃れられたという気がした。手続きが煩雑というけれど、変えたいのだから特に嫌ではなかった。なにかの都合で行った、旧姓併記の手続きの方がよっぽど嫌だった記憶がある。

だからといって夫婦別姓に反対しているわけではない。変えたい人は変えればいいのだし、それは話し合えばいいことだろう。たまたま、わたしは変えたい人で、仕事も勉強も、「キャリアをその名字で積み上げてきた」というわけでもないから困っていないだけだ。

◎ ◎

【夫婦別姓 反対】と検索すると、
『家族が同じ姓を名乗る日本の一体感ある家庭を守り、子供たちの健全な育成を願う。』
で始まる参議院の請願が出てくる。

しかしその請願を出している議員が旧姓で選挙に出ていたりする。矛盾している。

大声で言いたいのだが、同じ家に住む家族全員が同じ姓でも一切一体感のない家庭だったし、まったく健全に育成されなかった。

◎ ◎

というか、なにをもって一体感のある家庭となり、子どもが健全に育成されるというのかわからない。親が離婚した時に名字を変えず、母親が再婚した時にその養子にならなければ、子どもだけ名字が違う家庭というのは発生するし(ものすごく多くはないだろうが珍しくはない)、そういった子どもが全員非行に走るとか、成人してから犯罪を犯すとか、そんなわけはないだろう。

たとえばステップファミリーの子どもが「家庭に居場所がない」ように感じるとか、そういうことはあるのかもしれないけれど、わたしにも居場所は実際なかったのだし、名字は関係ないように思う。

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この文章を書いている間に、国連の女性差別撤廃委員会から、「夫婦同姓を義務づける日本の民法」の是正勧告があった。だから何ということもないが、婚姻後にどちらかの姓を選択する必要のある国は他にはないらしい。

かなり変な国だと思われているのではないかという気がする。たとえばG7などでパートナーを伴って各国の代表が集まる時、そこに同じ名字の人が2人だけいる、ということだ。もちろん、韓国などのようにそもそも名字が少ないから同姓になっていることはあるかもしれない。

だからといって他国の子どもがうまく育たないとか、たとえばフランスでマリッジではなくパックスのカップル間に生まれると情緒不安定になるとか、特に聞かない(よく調べればあるのかもしれないが、そもそも日本にも事実婚カップルの子どもなんてたくさんいるだろう)。

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名字なんて無意味だ、とまでは言わないけれど、婚姻関係にあるからといって同じにする必要はないと思う。

■真野いずみのプロフィール
機能不全家庭で育った虐待サバイバー。アセクシュアル。

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