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アラン・ドロン、アヌーク・エーメ、2024年に死去したフランスの人気俳優主演作3選

  • 2024.12.10

アラン・ドロン主演『危険がいっぱい』©1963 GAUMONT


“世紀の二枚目”と言われて日本でも人気の高かったアラン・ドロンがこの8月に亡くなりました。今年2024年は、6月にアヌーク・エーメ(享年92歳)、10月にミシェル・ブラン(享年72歳)もこの世を去り、フランス映画好きとしては寂しい一年となりました。そこで、彼らを偲んで、それぞれの主演作の中から一作を紹介します。



アラン・ドロンの色男ぶりを堪能! 全盛期の美貌は必見 『危険がいっぱい』

『危険がいっぱい』©1963 GAUMONT

1935年にパリ郊外で生まれたアラン・ドロンは、1950年代後半に俳優として歩み始め、1960年のルネ・クレマン監督作『太陽がいっぱい』で完全犯罪を企む主人公を演じて世界的なスターとなりました。以降、数多くの映画に出演して二枚目俳優として愛される一方で、多くの女性と浮名を流したり、晩年はドロンが長年同居した女性とアランの子どもたちとの間で騒動が起こるなど、プライベートでも世間を大きく賑わせていました。

今回紹介する『危険がいっぱい』は、ドロンとルネ・クレマン監督が再タッグを組んだ作品です。『太陽がいっぱい』で若きドロンを主役に抜擢した監督だけに、今作でも“正統派二枚目だけれど野心を秘めた男”というドロンが最も輝く役柄をあてています。

『危険がいっぱい』©1963 GAUMONT

ドロンが演じているのは、ギャングのボスの情婦に手を出したために殺し屋から追われているマルクという男。マルクは逃れた先で出会った大富豪の未亡人バーバラに気に入られ、住み込み運転手として雇われます。南仏の豪邸ではバーバラの従姉妹のメリンダ(ジェーン・フォンダ)がなにかとマルクの世話を焼きつつ誘惑してきますが、マルクはバーバラが何かを隠していると疑いはじめ……。騙し騙され、最後に笑うのは誰なのでしょうか。

『危険がいっぱい』©1963 GAUMONT

ワケあり色男と二人の美女が繰り広げる色仕掛けの陰謀を、コミカルなシーンを織り交ぜながらモノクロ映像とジャズ音楽でスタイリッシュに描いています。当時30代前半のドロンと20代後半のジェーン・フォンダが美しく、スクリーンの相性も抜群です。

『危険がいっぱい』

1963年製作

Amazon Prime Videoの
「シネフィルWOWOW プラス」で配信中
©1963 GAUMONT

ミシェル・ブランが演じる孤独な中年男の純愛。ロマンスの名作 『仕立て屋の恋』

『仕立て屋の恋』© Cinéa/Hachette Première et Cie/FR3 Films Productions

1991年暮れに東京・渋谷のル・シネマでパトリス・ルコント監督作『髪結いの亭主』(1990年)が公開されて大ヒットしたのを受けて、ルコント監督がその前に撮った作品として『仕立て屋の恋』が上映され、こちらも話題になりました。お世辞にもハンサムとは言えない地味で孤独な中年男が若い女性の部屋をのぞき見している物語ですが、この中年男を演じているのがミシェル・ブランです。

『仕立て屋の恋』© Cinéa/Hachette Première et Cie/FR3 Films Productions

ある夜、公園で若い女性が殺される事件が起き、警察は仕立て屋のイールを疑います。イールは人嫌いで孤立している中年男で、日夜、向かいのアパートに暮らす若い女性アリス(サンドリーヌ・ボネール)をのぞき見しています。彼はアリスに恋をしていますが、ただ見ているだけなのです。そんなイールは、実は事件の真犯人を知っていました。ある時、アリスはイールが窓越しに見ていることに気付いて驚き、彼の部屋にやってきます。二人が対面したことで運命は狂いだし……。

『仕立て屋の恋』© Cinéa/Hachette Première et Cie/FR3 Films Productions

変態ともいえる男の秘めた恋を官能的に描いたルコント監督らしい作品ですが、主人公を演じたブランの存在感が際立っています。イールは薄気味悪い男なのですが、彼のアリスに対する思いを知るにつれ、純粋で愛おしい存在に変わっていくのです。だからこそ、結末には涙があふれてしまいます。

『仕立て屋の恋』© Cinéa/Hachette Première et Cie/FR3 Films Productions

ミシェル・ブランはこの作品以降、自ら監督・脚本・主演の三役をこなしたコメディ『他人のそら似』が第47回(1994年)カンヌ国際映画祭で脚本賞と高等技術院会賞を受賞するなど、多くの作品に携わり、活躍しました。

『仕立て屋の恋』

1989年製作

Amazon Prime Videoで配信中
© Cinéa/Hachette Première et Cie/FR3 Films Productions

アヌーク・エーメの美しさは不変! 運命の愛から53年後を描く 『男と女 人生最良の日々』

『男と女 人生最良の日々』© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma

「ダバダバダ、ダバダバダ……」のスキャットで知られるフランスの恋愛映画の名作『男と女』でヒロインを演じたアヌーク・エーメ。ワンレングスのボブを無造作にかきあげるアヌークの大人っぽい魅力に憧れた人も多いのではないでしょうか。
しっかりした眉と大きな目が印象的なアヌークは若い頃から美貌が注目され、『モンパルナスの灯』や『甘い生活』などに出演。アヌークが30代前半で撮影したクロード・ルルーシュ監督の『男と女』が第19回(1966年)カンヌ国際映画祭グランプリを受賞し、自身もゴールデングローブ賞の主演女優賞に輝きました。

『男と女 人生最良の日々』© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma

『男と女』は、早くにパートナーと死別したシングルの男と女が惹かれ合う過程を描いた大人の恋愛映画です。ジャン・ルイはカーレーサー、アンヌは映画監督の助手をしていて、それぞれの幼い子どもを同じ寄宿学校に預けている縁で知り合います。互いを愛し始めながらも、過去に伴侶を失っていることや子どもがいることもあり、臆病になってしまう……。

あの二人はどうなったのでしょうか。あれから53年後を描いた映画が、『男と女 人生最良の日々』です。監督はクロード・ルルーシュ、主演はアヌーク・エーメとジャン=ルイ・トランティニャン、音楽はフランシス・レイ、『男と女』のメンバーが皆80代になって再集結しているというだけで感無量です。また、アンヌの娘とジャン・ルイの息子を演じていた当時の子役も本作に出演しています。まさに奇跡のような映画なのです。

『男と女 人生最良の日々』© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma

物語は、元カーレーサーのジャン・ルイの息子が、記憶を失いかけている父のために、父がずっと追い求めている女性アンヌを捜し出すところから始まります。その思いを知ったアンヌは、ジャン・ルイが暮らす老人ホームを訪ね、二人はついに再会するのでした。

『男と女 人生最良の日々』© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma

『男と女』のアンヌのまま年を重ねたアヌーク・エーメが美しい! 風に揺れる髪をかきあげる仕草が昔と同じで、それを見たジャン・ルイが喜ぶシーンが可愛らしく、また切なくもあります。昔の二人の情熱的なシーンと現在を織り交ぜながらも、ノスタルジック一辺倒にはならず、ユーモアも交えて希望を感じさせるルルーシュ監督の手腕が見事です。『男と女』の官能的な二人の姿も、また80代となり味わい深さを増した二人の姿も、一度に楽しめて大満足の作品です。

立っているだけで絵になるアヌーク・エーメ。2024年6月18日に92歳で亡くなった大女優は、70年以上にわたって世界中の人々を魅了し続けました。

『男と女 人生最良の日々』

2019年製作

Blu-ray、DVD発売中&デジタル配信中
発売・販売元:ツイン
© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma

※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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※この記事の内容および、掲載商品の販売有無・価格などは2024年12月時点の情報です。販売が終了している場合や、価格改定が行われている場合があります。ご了承ください

構成・文

ライター 中山恵子

中山恵子

ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。

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