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理想とは遠いのになぜか好きで、彼とは結婚できるような気がする

  • 2024.12.8

彼の転勤が決まった。

私たちは数年前、まだ私が大学院にいたころに出会い、3年ほどお付き合いをした。

そして別れてから2年。他の人と何度か恋愛もしたけれどうまくいかずに、結局彼のもとに戻ったのだった。

彼が自分にはもう君しかいないと甘い言葉を言うから、年内にプロポーズをしてねという約束付きのお付き合いだった。

◎ ◎

彼の仕事は自営業で忙しく、休日も関係なく働いている。でもそれは付き合い始めからそうで、年齢が上がるほどに業務も増え、出会った頃よりも忙しくなっているのは確実であった。

だから私たちのデートは普通のカップルとは少し違う。付き合う前からもデートらしいデートと言えば夜におしゃれなお店でディナーをする程度であり、ほとんどの場合はデートではなく、彼が私の家に深夜訪ねてきた。

彼の職場からはタクシーで20分ほどであったものの、忙しく働く彼にとって、家に帰らずにわざわざ私の家に行くのは時間を要したし、それが彼にとっての愛情表現であることはお互いにわかっていた。だけど、友人に私たちの話をすると必ず、遊ばれているだけだ、幸せになれないから離れなさいと言われたものだ。

一度は離れたものの、彼の魅力は私を離さなかった。特別格好いいわけでもないし、お金はあれど、私に貢ぐことはなかったから彼がいくらお金を持っていようと他の男性と比べても私にとって大きなメリットはなかった。

だけど彼には言葉に表せない魅力があった。過去に付き合ったときにさんざんケンカしてお互いの悪いところを知っているからかもしれない。彼とは何も飾らない自分でいれたし、変にかわいくいようとか彼のために何かしようと頑張る必要がなかった。

◎ ◎

彼と付き合う前、私は結婚に対してかなりナーバスになっていて、私は一生結婚しないんじゃないかと思っていた。

学生のときはただ好きな気持ちだけで恋愛ができていて恋愛のその先に結婚が当たり前にあったのに、今となっては、恋愛はできても、この人でいいのだろうかと結婚に関しては足踏みしてしまっていた。

それはたぶん彼との居心地の良さを知っていたからでもあり、その人とはその居心地の良さを感じれずにいたからだと思う。

もちろん、自分の理想に全て当てはまった人がこの世にいるかどうかはわからないし、生きている間にその人に巡り合えるかも定かではない。だから自分の理想から何かを諦めなくてはいけないのだけど、何を諦めていいのか、諦めたところで本当にこの人のことを一生愛していけるのかはわからなかった。

◎ ◎

今の彼は私の理想とは遠いところにある。

理想としてはデートをしたり、一緒に旅行に行ったり、恋人として過ごす時間を大切にしたいと思う一方で、彼とは忙しくて頻繁にデートすることは不可能に近いし、結婚した後も私がほとんど家のことをしなくちゃいけないことや彼の仕事をサポートしなくちゃいけないのは目に見えている。

だけど、なぜか彼のことが好きで、彼とは結婚できるような気がするのだ。

彼の転勤はたった1年なのだけれど、その後も別の場所に転勤することは決まっていてこのままの関係だと私たちは遠距離を繰り返すことになるだろう。

年内に結婚しようと私が一方的に押し付けた約束を彼は今どのように感じているのだろう。仕事が終わったら話そうという連絡の後、一向に来ない通知を待つ23時。今日も彼の帰りを待っている。

■inoriのプロフィール
恋愛至上主義。猫が好き。 X:https://x.com/______inori

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