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名字を変えたい、変えたくない。どちらの願いも尊重される世の中へ

  • 2024.12.8

いま選択的夫婦別姓制度について、その可否が以前よりも議論されてきているように思う。
現行法に則ると、夫婦別姓を選択すると事実婚扱いとなってしまい、現代の世の中では生活において不便・不利が生じてしまう。
夫婦同姓でないと生きていく上で不利だなんておかしい、と感じている人は多くいるだろう。

◎ ◎

かく言う私は、結婚して自分の名字を改姓し、選択的夫婦別姓とはしなかった立場だ。
結婚当時、夫婦別姓に伴う現行法でのデメリットを鑑みて、夫婦同姓にすることで夫と話し合った。
その際、私は自分の名字に対し特に思い入れがなく、30年間呼ばれ続けた名字が変わることに対し何の抵抗もなかったこと、また私の方が有給休暇を取得しやすく改姓手続きに割く時間を確保しやすかったことから、私の名字を変えることにした。

改姓に伴う手続きは確かに面倒だったが、この煩雑さが結婚に伴う喜びそのものを体現しているようで、全く苦にならなかった。当時の私は所謂「お花畑思考」だったのだろう。

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真面目に話すと、私は改姓したことで結婚したという自覚を持ち、夫婦として新しい世帯を持つことの責任を感じることができたので、そういう意味では改姓して良かったとは思っている。
しかし裏を返すと、改姓していない夫は、結婚したという自覚を持てず、夫婦として新しい世帯を持つことの責任を感じることができていないということになる。

また日本国外に目を向けると、名字が同じでないカップルや家族は、夫婦別姓・親子で別姓であることを理由に家族の一体感を持てていないということになるが、そんなことを言うと諸外国の皆さんから猛反発を食らいそうだ。
改姓しないと家庭を持った自覚が持てない、名字が異なると家族の一体感が感じられないだなんて、そんな馬鹿な話はないだろう。

◎ ◎

ところで、結婚当時の私は医師として病院に勤務していたが、公的に改姓した後も、職場では引き続き旧姓での勤務を続けた。だから私が結婚したことを知らないスタッフが大半だったと思う。
医師免許証の改姓手続きの際には旧姓の併記をしてもらったため、私は今後、新姓でも旧姓でも勤務することができる。また厚生労働省の「医師等資格確認検索」システムでも、どちらの名字でも私を検索することができる。
私の周囲の環境は、名字が何であろうと気にならない・気にする必要がなく、恵まれていた。

いや、「恵まれていた」と思うこと自体がおかしな話なのかもしれない。
名字が変わろうと変わらなかろうと、キャリアアップ困難や働きづらさを感じる必要がない、誰もが不便を被らないような世の中が当然となればいいのにと思う。

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きっと状況が逆だったら、夫が私の名字になっていただろう。そのくらい、私たち夫婦は名字に対してこだわりがなかった。
それは、結婚のみならず、例えば相続や養子入りなど、常に変わる可能性がある流動的要素の名字に対して、私も夫も、ただの符号程度の認識を持っていたからかもしれない。
明日からいきなりまた名字が変わるとしても、改姓手続きが面倒だなぁと思うけれど、特に抵抗はない。何と呼ばれようと、私は私だし、夫は夫。名字が変わることで人格が変わる訳ではないし、今までの生い立ちが否定される訳でもない。
だから、変わろうと変わらなかろうと、名字なんて正直何だっていいと思っている。

◎ ◎

だが、これはあくまでも私(と夫)の考え。名字を変えたい人も、変えたくない人もいるだろう。
思いや希望は人それぞれなのだから、「名字を変えたい」「名字を変えたくない」、これらの考えに対し白黒つける必要は全くないと思う。
ただ、人それぞれ異なる考えや願いを、現行制度により強制的に叶えることができない、そんな世の中であってはならないと強く思う。

■大島ひよ子のプロフィール
医者をしています。コロナ禍が早く収束することを願いながら、ガムシャラに働く日々です。どうかみなさんが元気でありますように。

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