1. トップ
  2. 恋愛
  3. 高級な石鹸の香りがする彼の部屋。「もっと私を見て」と心で叫んでた

高級な石鹸の香りがする彼の部屋。「もっと私を見て」と心で叫んでた

  • 2024.12.8

初めて彼の家に行った時。

マンションのオフホワイトの扉を開け、洗面所に行くと、そこには、Aesopのかすかにヴァーベナのような香りのするハンドソープが置いてあった。

男子の家なのに、Aesopの石鹸なんて置いてあるんだと内心びっくりした。たしかに、ふだんから彼は、整髪料や部屋のカーテンからスプーンまで、デザインにも素材にもとことんこだわる人だった。

だから、不思議でないといえば不思議でない。
でも、それにしても、初めていく男性の部屋に、私でも持っていないAesopのハンドソープが常用だったのは、驚きだった。

◎ ◎

当時の私は、彼に勝手に期待し、普段のコミュニケーションですれ違っては、内心もやもや、ムカムカして、1人で勝手にすねていたりした。
私がプイとすねたところで、気を利かして「どうしたの?」なんて尋ねてくる器用な人ではなかったから、私の機嫌が悪いと、どんどん無言で何事もなかったように離れていく人だった。

そもそも2人の間を繋ぎ止めるほどの愛情や情熱なんて、彼にはなかったのだと今思えば、そう思う。
私は彼に期待し、彼を求め、彼と2人で未来を築きあげたかったが、そんな意思のベクトルや熱量なんて、やはり2人でそろっていないと、向き合おうとする態度がないと、重なり合うものではない。
私の心は、いつも虚しく、どこか悲しいまま時を過ごしていた。

◎ ◎

だから、時々、初めて行った彼の家にあったブランドの良い香りのする石鹸を思い出すと、「そんな自分の容姿のことなんてどうでもいいから、もっと私のこと見てよ」そんな風に、言いたくなったのを思い出してしまう。

その時の私は、社会人になりたてで毎日仕事が辛かった。会社に行くと、あんなに苦しい思いをしないといけなかったので、プライベートでは、彼に大事にしてもらいたかった。
3歳年上で仕事に耐性がついて私の仕事の大変さに想像や共感ができない彼は、そんな私の想いなんて、知る由もなかった。

◎ ◎

それから数年後——。今の私は新しい人と出逢い、デートを重ねている。

今の彼は、食事には気をつけるが、男らしい。整髪料もつけない、服はブランドのシャツだが、きっと良いものを買って何年も着る人なんだろう。流行とは関係ない、コンサバでオーソドックスなファッションだ。
香水の匂いも、いまのところしない。

私は、やはり男っぽい、向き合える関係性、一緒にいて安心できる関係性の人が好きだ。
「なんで一緒にいるんだろう……?私たち、どんな関係?」と不安になったりすることもない。のれんに腕押し感や、(きっと)私だけが内心悶々としている関係性でもない。

自身の見た目や香りへのこだわりより、やはり、目の前の私を見てくれる、そんな包容力ある男性がいい。
いまの彼に、石鹸のこだわりはあるのか、まだ家にいったことはないので、今度直接聞いてみようと思う。

■満島のプロフィール
元大手企業の営業職OL。いまは隠居して営業職。旅行好き。

元記事で読む
の記事をもっとみる