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物件価格の高騰で増える「50年返済住宅ローン」は大丈夫なのか…返済開始後の行動で老後に天と地の差

  • 2024.12.7

住宅ローンといえば最長35年返済が常識だったが、最近は住宅価格の上昇もあって、40年、50年の超長期ローンを組んで買う人が増えている。住宅ジャーナリストの山下和之氏は「バブル期には100年返済の住宅ローンを利用して破たんした人も少なくなかった。50年返済ローンにもリスクはあるが、上手に活用すれば価格上昇であきらめかけた高嶺の花にも手が届く」という――。

東京の住宅
※写真はイメージです
最長50年返済の住宅ローンが増加

最長50年返済まで可能な住宅ローンが増えている。もともとは住宅金融支援機構が民間機関と提携して実施している住宅ローンのフラット35に、50年返済まで可能なフラット50を付け加えたのが端緒といわれるが、その後、各地の地方銀行に広がってきた。

ただ、地方銀行の住宅ローンを利用できるのは、その銀行の営業エリアに限定されることもあって、なかなか利用者は増えなかったが、3年ほど前から全国で利用できるネット銀行の多くで50年返済が可能になって、急速に広がってきた。

住宅金融支援機構では、毎年住宅ローンを利用してマイホームを買った人を対象に、住宅ローンの実態に関する調査を行っており、そのなかで利用した返済期間についての項目も設けているが、2021年度に買った人を対象とする22年4月調査までは、回答としては35年返済までしか用意していなかった。それが、40年超のローンを実施する機関、利用者が増えてきたこともあって、23年4月調査から、回答の選択肢を50年までに増やしている。

35超~50年返済の利用者が約3割増加

その結果が図表1で、22年度に買った人を対象とする23年4月調査では、「35年超~50年以内」の合計が12.6%だったのが、23年度に買った人が対象の24年4月調査では、16.0%に増えている。まだまだ全体では2割弱だが、それでも27.0%増えている計算であり、24年度に買った人の調査がまとまれば、40年超の利用者がさらに増えるのは間違いのないところだ。

【図表1】利用した住宅ローンの返済期間
50年ローンで返済金額はどれくらい軽減されるか

では、実際のところ、返済期間を長くすれば、どれくらい毎回の返済負担が減り、どれほど借入可能額が増えるのだろうか。

図表2にあるように、借入額5000万円、金利1.0%の住宅ローンを20年返済で借りると、毎月の返済額は23万円近くに達するが、それが35年返済だと14万1142円になる。20年返済に比べて9万円近く減る計算だ。

それを50年返済にすると10万数千円まで減らすことができる。35年に比べて3万5000円ほど減るのだから、かなり返済はラクになるはずだ。

毎月の返済額が減れば、借入可能額が増えるメリットがでてくる。図表3をご覧いただきたい。たとえば、年収600万円の人が、銀行の審査基準の上限である返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)35%まで借りる場合、35年返済では借入可能額は6200万円だが、50年にすれば8260万円まで借り入れ可能になる。

このところ住宅価格の高騰が続いていて、自分の年収ではマイホームなど「高嶺(高値)の花」と諦めかけていた人も、50年返済を利用すれば、「高嶺」に手が届くようになる。

【図表2】返済期間と毎月返済額の関係
【図表3】返済期間と借入可能額の関係
毎月返済額は減るが総返済額は大幅に増加

しかし、いいことばかりではない。返済期間が長くなると、返済額は減るものの、完済までの総返済額が多くなってしまうし、元金の減り方が遅くなり、返しても、返しても、簡単に元金が減らなくなる。

たとえば、借入額5000万円、金利1.0%、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は14万1142円で、完済までの35年間の総返済額は約5928万円になる。それが、50年返済なら毎月10万5929円に減るものの、50年間の総返済額は約6356万円に、400万円以上多くなってしまうのだ。

しかも、返済開始から10年後のローン残高をみると、35年返済では約3745万円だが、50年返済では約4189万円も残っている。20年後の残高は35年返済では2358万円と借入額の半分以下に減っているが、50年返済は約3293万円残っている。20年後には1000万円近い差が出てくる。

しかも、年齢によっては60歳になってもローン返済が続くことになるが、その年代になると年収が減ってしまう可能性もあるので、返済が重くのしかかってきて、老後の生活資金などの不安も出てきそうだ。

財政上の問題を抱えている女性
※写真はイメージです
バブル時にあった「100年ローン」利用者の末路

振り返ってみれば、1980年代のバブル時には、50年ローンどころか、100年ローンが登場した。いま以上に住宅価格が高騰したため、35年までのローンでは買えなくなる人が続出、そんな人たちを対象に、「100年ローンなら購入が可能になる。10年、20年後には住宅価格が上がり、売却すれば利益が出るので心配ない」といううたい文句で売り込み、多くの人が利用した。

しかし、案に相違して、1990年代に入るとバブルがはじけ、住宅価格は暴落、景気も悪化して、リストラや倒産などで収入がなくなったり、大幅に減少する人が増え、ローンを返済し切れなくなる人が続出した。

結果、自己破産が急増、自己破産する人は1980年代には年間1万人以下だったのが、98年には10万人を上回り、2003年には24万人にまで増えた。そのうち2割から3割は住宅ローンの破たんが原因だったといわれている。

この100年ローンを実施していたのは、銀行ローンを利用しにくい人をターゲットにした住宅金融専門会社だったが、ローン破たん続出で債権を回収できなくなり、すべて経営破たんして、現在は存在しない。まさにバブル崩壊時のあだ花といっていいだろう。

ステップアップを考えるなら50年返済がうってつけ?

バブル崩壊時と現在では時代環境が異なり、景気が急速に悪化したり、住宅価格が突然暴落したりすることは考えにくいが、50年ローンには、先にみたようなデメリットがあるのは事実なので、それなりに対策をとっておくのがいいだろう。

実際、都心やその周辺の高額マンションを買う人たちのうち、2割程度は50年ローンを利用しているといわれるが、そんな人たちの多くは、50年かけて返済していくとは考えていないようだ。

長い返済期間のメリットとして、毎月の返済額が減る分、キッチリと家計管理して貯蓄を進め、計画的に繰上返済して、結果的に35年返済より早めに返済を終えたいと考えている人が少なくない。

都心やその周辺の立地のいいマンションを買っておけば、5年後、10年後には価格が上がっているはずだから、買った価格より高く売れて、手元に売却代金のかなりの部分が残る。それを元手に住まいのステップアップを実現したいという考え方だ。そのためには、50年ローンがうってつけというわけだ。

逆に、50年ローンを利用してでも、いま買っておかないと、ますます高くなって、いよいよ買えなくなってしまう、そんな思いもあるのかもしれない。

繰上返済で35年返済より早く返済を終える方法

先の図表2にあったように、35年返済では毎月14万円台の返済額が、50年返済だと10万円台に減少、毎月3.5万円ほど返済額が減る。それをキチンと貯蓄すれば、1年で42万円、3年で126万円になる。

そこで、3年ごとに5回、100万円ずつ住宅ローンの繰上返済を実行していく。返済額を変えずに、残りの返済期間を短縮する期間短縮型の繰上返済だと、図表4にあるように、15年後には返済期間を69回短縮でき、残りの返済期間は29年ほどになる。

住宅ローンを利用すれば、住宅ローン減税もあり、子育て世帯などでは、年間最大35万円税金が少なくなるので、もう少し頑張って、3年ごとに300万円繰上返済すると、196回の短縮で、残り返済期間は19年を切ることになる。

さらに、500万円の繰上返済だと311回の短縮効果があり、15年後の残り返済期間は9年ほどになる。すでに返済を終えた15年と合わせても返済開始から24年ほどで完済できる計算だ。

【図表4】繰上返済による返済期間短縮効果

2025年も住宅価格は新築マンションを中心に上昇が続きそうな情勢だ。それを指をくわえて見ているだけでは、いよいよマイホームは「高嶺(高値)の花」になってしまう。それが、50年ローンなら、高嶺の花ではなく、手の届く野山に咲く花になる。

ただし、50年ローンにはデメリット、リスクもあるので、通常の35年ローンよりも慎重な計画で取得、かつ購入後も繰上返済で期間の短縮をはかるなどの対策をとれるようにしておくのが安心だ。

山下 和之(やました・かずゆき)
住宅ジャーナリスト
1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に新聞・雑誌・単行本の取材、執筆、講演、セミナー講師など幅広く活動。著書に『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』『よくわかる不動産業界』など。

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