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「私が姓を変える前提」に感じたモヤモヤは、翌日自然に解消された

  • 2024.12.7

「エビアンの名字が前触れもなく変わったら、職場のみんな驚くだろうね!」

今のパートナーとお付き合いを始めて間もない頃、私はパートナーにそんなことを言われた。どのような流れでこの話題が出たかは忘れてしまったが、きっと「もし結婚したら〜……」などと話していたのだろう。付き合いたてのカップルあるあるの、早まった話だ。

私は、「そうだね」と曖昧に笑って返した。「『私が』名字を変える前提なんだ……」と、心の中でモヤモヤしながら。

◎ ◎

私の名字は、至って普通で、この社会で生きるにはとても便利な名字のひとつだと思う。
ほぼ100%誰でも間違いなく読めて、間違いなく書ける。そのうえ少数派でも多数派でもなく、「同じコミュニティ内で名字が被って困った」なんて経験も少ない。

強いて挙げれば画数が多いことが欠点で、子どもの頃から「画数の少ない名字」に憧れていた。名前の画数が少ないことは、定期テストで名前を書く時間を短縮できるし、今後いろいろな書類を書くうえでも手が疲れなくて済む。画数が少ない名字の人を見つけては「この人と結婚しようかな」などと言っていたときもある。

今となっては自分の名字は呼吸をするように書けるし、タイピングでも自然と指が動いてしまうから、あまり気にすることではないが。

◎ ◎

だから、私は自分の名字にこれといったこだわりや思い入れはない。
自分の名字が相手のものに変わったとしても、それほど抵抗もない。
けれど、初めから「当然、女性が男性の姓にするよね」と決めつけるスタンスは、違うと思うのだ。

事実、今の日本では籍を入れるとき、女性が男性の姓を名乗ることが圧倒的に多いと聞く。周囲で結婚している人もほぼ100%そうなのだから、きっと範囲を広げても同じなのだろう。
だが、そんな慣例が巣食う日本でも一応、どちらの姓を名乗りたいか選ぶ権利がある。「女性が男性の姓にしなければいけない」ルールはない。本当はそこに「選択の自由」があるのだ。
きっとパートナーは、気軽な気持ちで「エビアンの名字が前触れもなく変わったら〜」と言ったのだろう。けれど私は、初めから選択肢を奪うような発言をされたことに、どうしても納得がいかなかった。

◎ ◎

翌日、いつも通りリビングのダイニングテーブルでふたりでくつろいでいた昼下がり、パートナーが前日の話を持ち出した。「どちらの名字にするかを考えている人が多いこと」そして、「自分は名字にこだわりがないこと」。

唐突に名字の選択権を手渡されたことに内心とても驚きつつ、平常心を装って話を聞く。どうやらあの後、「夫婦の姓」に関するニュースをたまたま見かけて、彼なりに関心を持ってくれたようだった。

前日まで抱えたモヤモヤは、自然と解消された。たぶん彼は、今までどちらかが名字を変えることを、考えるまでもないことだと思っていたのだ。それは違うということ、世間ではセンシティブな問題として扱われていることを、あの後思い知ったのだ。
私も、名字について考えを話した。自分の名字にこだわりはないこと、けれど選択の余地は欲しいこと。ひと通り話したところで「うちら、どっちでもいいんだね!」と、ふたりで笑った。真剣に話しているのが、バカみたいだった。

◎ ◎

そんな私たちでも、ふたりの名字がひとつになるとき、どちらを選択するか迫られる。お互いひとりっ子だが、幸いどちらも「家系を継いで」と強く言われたことはない。

自分たちで自由に決められることは嬉しいが、こだわりがない分、決め手もない。

「婚姻届出す前に、市役所の前でジャンケンして決めよっか」パートナーからの提案に、「それいいね」と面白がった。私たちは、これくらいでいいのかもしれない。

■エビアンのプロフィール
家訓は、「健康で長生き」

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