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憧れ続ける十数年前の香り。私も、香りと共に誰かの記憶に残れたら

  • 2024.12.7

ピアノ教室のレッスン室に入ると、あたたかく、やさしく、ほんのりと部屋に満ちた香水の香り。
私は幼稚園児から中学生までお世話になったピアノの先生愛用の香りが、今でも忘れられません。

ついこの間、雑貨屋で香水を色々試していると、あの人の香りをいくつか見つけた。ちょっとくらい楽しかった想い出に浸れるかなと、嗅いでみたりもした。

◎ ◎

ピアノ教室に通っていた当時、香水どころかファッションやおしゃれにも興味がなく、先生が使っていた香水がどんなものか気にもなりませんでした。ただ、毎週先生が待つレッスン室に入ると、上品で甘い香りがして、私の好きな香りの一つでした。

先生は、ロングヘアのふんわり巻き髪にCHANELのアクセサリーがよく似合う、まさに「ピアノの先生」という女性でした。
ピアノを弾く姿はもちろん美しく、所作や話し方、服装や身に着ける小物、レッスンで使う筆記用具まで、とにかくすべてが優雅で気品があり、まるでどこかのお嬢様のような素敵な大人の女性でした。

◎ ◎

時は経ち、私もあの頃の先生と同じ「大人の女性」と呼ばれる年代になりました。
「大人の女性」になった今も、元はわんぱく娘の私。先生とは違い、どちらかといえば元気で明るい感じの大人に成長しました。

だからこそ、憧れるのは私にはない魅力を持った方々。ハイブランドの小物が自然に馴染む、優雅でレディな雰囲気をまとう女性に憧れています。
思えば、先生こそ今私が憧れている女性像に近く、そんな雰囲気の女性と定期的に関わりがあったのは、人生で先生だけだったと、今になって貴重なご縁に感じます。

◎ ◎

憧れに近づきたいと思いつつ、例えばファッションの系統を変えるのは、周りの目が気になってなかなか踏み出せない私。その点、香水は目には見えないので気軽にいろいろな系統に挑戦できます。甘め、爽やか、セクシー、ユニセックスなど……。
香水は、纏う香りによってその日の自分の雰囲気も気分もがらっと変えられるアイテム。
今では、仕事用・プライベート用と使い分けたり、出かけるたびに自分好みの香りとの出会いを求めてお店に立ち寄ったり、香水は特別なアイテムになりました。

そして、ブランド物の香水にも手を伸ばすようになった今、先生の愛用していた香水の香りを探す自分がいます。
香りだけでも先生の雰囲気に近づきたくて。先生のような、やわらかくやさしい香りをまといたくて。

どのブランドの何という香りだったのか、そもそもブランド物だったのか。今も販売されているのか。何もわかりません。わかるのはあの頃の記憶だけ。

◎ ◎

人の記憶の中で一番最後まで残るといわれている「香り」。
あの頃のわんぱく娘が、十数年経った今も先生の香りを覚えているなんて、先生自身も考えていないでしょう。
でも、それってとても素敵なことだと思います。私も、香りと共に誰かの記憶に残ってみたい。

私の日々纏う香りが、十数年後に私の雰囲気や人柄、共に過ごした時間を思い起こすきっかけとなってくれたら。香りと共に、誰かの思い出の一部としていつかまた触れ合うことができたら。そんな願いを込めたおまじないとして、明日からもお気に入りの香水をまとって生きていこうと思います。

そして、いつか誰かが私を思い出してくれた時、「魅力的な女性だったな」と思っていただけるように。
そうなれるように、これからも頑張っていこうと思います。

■まる麦のプロフィール
約4ヶ月ほど休職しており5月から復職。自分のことは自分が一番大切にするんだ!という思いで日々、人生と格闘中。

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