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屋比久知奈、約7年ぶりのモアナ役でも「自然とリンク」 “作り込みすぎない”役作りを語る

  • 2024.12.6
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屋比久知奈 クランクイン! 写真:阿部桜子

映画『モアナと伝説の海2』が6日に公開された。本作の舞台は、壮大で美しい海が広がる南太平洋のポリネシアにインスパイアされた楽園のような島々で語り継がれる神秘的な伝説を基に、海に選ばれ愛された16歳の少女モアナの冒険を描いた前作から3年後。モアナは、少し大人へと成長しており、妹のシメアも登場。1000年にひとりの“導く者”となったモアナは、相棒のマウイや新たな仲間たちとともに再び大冒険に漕ぎ出していく。そんなモアナの日本版声優を前作から引き続き担当するのは、女優の屋比久知奈。前作ではオーディションで選ばれた“期待の新星”として大抜てきされ、その後は『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』など数々のミュージカル作品に出演し、今や日本のミュージカル界を代表する女優の一人となった。今回クランクイン!は、約7年ぶりにモアナを演じる屋比久にインタビュー。モアナともリンクする“リアルプリンセス”な屋比久の成長と挑戦への思いを聞いた。

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■モアナは「わたしの一部」

――続編が発表された時はどんな気持ちでしたか?

屋比久:続きがあるとうれしいなとは思いつつ、1作目がキレイに終わった印象だったので、あまり現実的に想像していなかったんです。なので続編のお話を聞いた時は本当にうれしかったし、驚きました。今回は前作から3年後の物語なのですが、まずモアナの成長を表現したディズニーさんの映像がすごいなって。表情や髪型、服装、所作など、ちょっとした変化から3年の歳月が感じられるんです。もちろんストーリー面でも成長が垣間見えて、純粋に海の向こうに憧れていた前作の16歳のモアナと違って、今回は新たな問題に立ち向かうために海に出ます。 大人になったからこそ芽生えてくる、いろいろなものを抱えた上での不安に共感しました。わたし自身も前作から7年経って収録に挑んだのですが、その間にたくさんの経験をしたので、自然とモアナとリンクして、無理なくお芝居ができたかなと思います。

――屋比久さん自身の成長が今回のモアナに反映されていたり…?

屋比久:反映されていたらいいなと思います。年齢を重ねたのに、自分ではあまり変わっていないような気がしても、周りの皆さんが「大人になったね」って言ってくださる瞬間があると思うのですが、もしかしたらわたしが意識していないところで、声や表現方法に変化が生まれているのかもしれません。この7年の間、たくさんの舞台に立たせていただいたので、とにかく一生懸命にセリフを読んでいた7年前とは違った、技術面で成長した姿をお見せできたらいいなと思って挑みました。「大人になろう」という気持ちで演じるというよりかは、自然と7年の経験や成長が出るのがいいのかなって。言葉の言い回しや感情の込め方もトゥーマッチになりすぎると、作品が持つピュアな魅力がなくなっちゃうかもとも思うので、今回はあえて余計なものを出さないというところに気を付けました。

――前作から7年経った今の屋比久さんにとって、改めてモアナはどんな存在でしょうか?

屋比久:モアナというキャラクターは、わたしの一部になってくれていると感じています。前作に挑んだ時は沖縄から東京に出てくるタイミングでもあって、モアナの言葉や作品のメッセージ、音楽にすごく支えてもらいました。きっとこれからも、大切な部分としてわたしの中で生き続けるキャラクターになると思います。自信にもなったし、初心に帰らせてくれる存在でもある。これまで大きな舞台に立たせていただいたときも、心のどこかにモアナがいたような気がしています。前作のセリフで「わたしには選ばれた理由がある」とあるのですが、わたし自身もその言葉を発したことで、「大丈夫だよ」って支えてもらったような安心感が得られました。あと『モアナと伝説の海』を見てくださった方たちからも、たくさんのうれしいお言葉をいただきました。この7年の間に何度も思い返した作品であり、愛すべきキャラクターに出会えたことはすごく幸せなことだと思います。

――本作は「ビヨンド ~越えてゆこう~」など新たな楽曲も見どころです。歌唱シーンのレコーディングはいかがでしたか?

屋比久:再び外の世界を目指す点でいうと前作の「どこまでも ~How Far I'll Go~」と似た状況ではあるのですが、ただただ海の外に恋い焦がれていた「How Far I'll Go」の時と比べて、今回のモアナは抱えてるものが全然違っているんです。外に出て新しいものを見てみたいけれども、経験や家族、プライドなど大切なものや守らなきゃいけないものが増えたからこそ、行きたいけど行けない怖さがある。人って背負うものが増えると新しいことに挑戦するのが嫌だったりするじゃないですか。今回の「ビヨンド ~越えてゆこう~」には、子どもの頃とは違う、大人のモアナの葛藤が描かれていると思います。外に出たいという純粋な心に、ジリジリとしたものが加わった楽曲というか…。盛り上がり方もぐーっと尻込みしつつ引っ張られている感じが、前作とは違う魅力なのかなと思っています。

なので、今回はそんな葛藤を表現できたらいいなと思いながら歌わせていただきました。ここでも“作り込みすぎない”ことをとても意識しています。あまり自分の声を聞くタイプじゃないのですが、改めて前作の楽曲を聞いた時に「今の自分には出せない声だな」と思いました。悔しくもありつつ、成長ってこういうことなのかなって。経験を積んだからこそ、ドスの効いた声とかいろいろな表現が身に付いたのですが、今回は前作のことを思い出しながら、とにかく真っすぐで純粋な気持ちで歌いました。でも収録する中で「ちょっと今のはモアナっぽくないな」という歌い方もしてしまったり(笑)。

――それでは何度か録り直しも…?

■屋比久を支えた「母の教え」

屋比久:そうですね。ワンテイクで終わらせてみたかったんですけど(笑)。ただ、今回は収録だからこそできるいろいろな表現を歌唱監督さんと試してみました。アウリィ・クラヴァーリョさんが歌うオリジナルの楽曲に忠実でありつつ、日本語でわたしが歌うからこそできることを探りながら。一方でイベントなど生で歌う時はある意味ワンテイクのようなものなので、その時にできる表現もあるんじゃないかなと思っています。きっと音源とは異なる表現ができるので、そういった違いも楽しんでいただけたらうれしいです。

――ちなみに『モアナと伝説の海2』で印象的だったセリフはありますか?

屋比久:「道は1つじゃない。必ず別の道がある」とモアナが言われるセリフです。この3年間、いろんな海を旅して、さまざまな経験をしてきたからこそ、今のモアナは「こうしなきゃ」や「こうありたい」という思いを持っていて、そのために仲間に頼れない瞬間も出てくるんです。そんな時にふっと入ってきたこの言葉に「確かに」と思いました。ここまでいろいろな可能性や道を選んできた中で、今立っている場所にたどり着くまでの自分の行動に間違っていたものはないし、仲間を信じたからこそ見えてくる道もある。そんな経験はわたしの中にもあったので、世界が広がるセリフだったと思います。

――今回のモアナは仲間とともに「かつて人々は海でつながっていたが、人間を憎む神に引き裂かれてしまった」という呪いを解くために海へ出ます。高校時代にアメリカ留学を経験したり、沖縄から上京したりと、屋比久さんも海を越えた挑戦を経験されていますが、その時の原動力はなんだったのでしょうか?

屋比久:バレエの先生をしていた母に「人には頑張る時があって、努力は絶対に裏切らない。努力する時に頑張ることが大事だよ」と教えられてきました。頑張ってきたことは必ず何かの形で返ってきて、結果は関係なく、努力自体が自信や糧につながります。舞台に出演する際も、稽古をして1歩ずつ階段を上ってきたという事実が、わたしを支えてくれるんです。留学の時の英語の勉強のように、1歩踏み出していく上での準備や努力が自分の中に必要だなと、いろいろなお仕事をさせていただく中でもすごく感じています。挑戦の過程と支えてくれる大切な人たちの存在がわたしにとっての原動力です。

――モアナや屋比久さんの背中を見て育つ、小さなプリンセスがたくさん生まれそうですね。

屋比久:『モアナと伝説の海2』は前作同様、勇気と元気をもらえる作品になっています。見る人の世代は関係なく、完ぺきな人はいないし、悩みを抱えているし、挑戦するのは怖い。でも葛藤がなかったら、何も生まれない気もするので、迷いを乗り越えて踏み出す1歩というのがものすごく大切で、そこから見えてくる何かがあることを教えてくれるのが本作なんです。仲間や家族がいて、大切なものがあれば、そのために頑張れる。そんな温かくて優しいメッセージが込められています。子どもたちはもちろん、この作品を見たいろんな人に、自分を信じて前に進むこと自体が大切だということを感じ取っていただけるとうれしいです。結果は必ず後からついてくると思います!

(取材・文・写真:阿部桜子)

アニメーション映画『モアナと伝説の海2』は全国公開中。

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