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突如、報酬が2割減に…「口約束」が守られず大損してきたお金のプロが行き着いたリカバリー方法

  • 2024.12.6

契約の際に条件を口約束で決めるのはトラブルの素だ。しかし、書面に残すのが難しい場合もある。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「私も口約束が守られずにモヤモヤした経験はある。トラブルを未然に防ぐには2つの方法があるが、それが利用できない場合には、私が実践しているリカバリー法を利用するのもいい」という――。

顧客と握手をする営業の男性
※写真はイメージです
1年間だけのつもりで、契約したが…

1年ほど前に、私は自宅のインターネット契約を、某通信会社に乗り換えました。

キャンペーンの料金大幅割引・工事費無料・キャッシュバックなどがかなり魅力的でして、連絡を取ると、「ぜひ、詳細を説明させてください」と、即、営業の方がやってきました。

その説明によると、それらキャンペーンが適用されるのは、映画観放題のサブスクなど、やたらとオプションのついたプランのみとのことでしたが、「1年間だけ継続いただければ、その後は、シンプルなプランに変更いただけますので」と、ドヤ顔でアピールしてきました。

オプション付きプランの料金はかなり高かったのですが(そして、諸々のオプションは私には不要)、1年間だけであれば、すなわち1年後にシンプルプランに変更できるのであれば、諸々のキャンペーンで、かなりお得なのです。

ただ、プラン変更の手続きを忘れてしまうのが不安で、そこを伝えると……

「では1年後に、シンプルプランに自動変更になるように設定しておきますので、ご安心下さい」

と、自信満々で答えました。それならばと、私は契約書にサインをしたのでした。

シンプルプランに自動変更されるはずが…

さて、すでに察しがついた方も多いと思いますが、1年経過後、シンプルプランには変更されていませんでした。契約当初のオプション付きプランのまま、更新されていたのです。

シンプルプランは毎月3000円程度に対し、オプション付きプランは毎月8000円以上ですから、キャンペーンを受けたとしても、2年目以降もオプション付きプランを続けていては大損なのです。

これはどうなっているんだと、コールセンターやチャット相談窓口で問い合わせるも、契約時の状況が伝わらず、埒があきません。そこで直接、店舗へ行って確認をするも、そのときの担当者はすでに退職していたのでした。

そして、代わって担当した方は、「契約が自動的に変更されることは、絶対にない」と、自動変更の約束をキッパリ否定するわけですが、こちらには証拠がないので、それ以上は突っ込むことができません。

結局、2カ月ほど、高額なオプション付きプランが継続してしまいました。

ただ、「担当者の説明に不備があったとすれば、申し訳ない」と、申し訳なさげに何度も謝罪をされ、そして、その場ですぐにシンプルプランに変更してもらったこともあり、幸い、とくに大きなトラブルにはなりませんでした(私には少しモヤモヤが残りましたが)。

口約束で後悔。そして思い出した苦い経験

さて、少々長い前置きでしたが、何を言いたかったかというと、それは、契約の決め手となるような大切な条件は、しっかりと証拠を残しておくべきだったということです。

今回のケースでは、「1年後、自動的にシンプルプランに変更となる」といった内容も契約書に追加してもらうか、さもなくば別途、念書を取ったり、録音したりするなど、何らかの形できちんと残しておくべきだったと反省しきりです。

そして、私自身、今回の失敗であらためて気づいたのが、契約書の内容はしっかり確認するのに、その契約の決め手となるような条件は、わりと口約束で済ますケースは少なくないということです(そして、トラブルになる)。

それは、ビジネスの現場においても、同様です。そして、今回の件をきっかけに、かつての、苦い思い出が蘇ってくるのでした。

書類に印鑑を押す女性
※写真はイメージです
仕事でも口約束で失敗

私がファイナンシャルプランナーとして独立して間もない頃、とある企業にて、マネーセミナー講師の募集があり、意気込んで面談へと行きました。しかし、そこで提示された報酬は1回2000円程度と、驚くほど安いものでした。

ただ、面談にて担当者が言うには、「今回は初回無料セミナーなのでこの報酬なのですが、この初回を担当した方には本編も担当してもらうので、そのときは正規の報酬となります」とのこと。

この説明に、損して得取れと、自身を納得させて、契約書にサインをしました。

しかし初回セミナー終了後、いくら待てども、本編セミナーの講師依頼はありません。

そんな中、新たに刷り上がったセミナーのパンフレットを見ると、なんと本編セミナーは、他の講師が担当となっていたのでした。

私のアンケート結果は決して悪くはなかったので、これはなぜだと担当者に聞くと、「やはり、本編セミナーはベテラン講師が良いということになりまして」との一点張りで、話は平行線。

しかし残念ながら、契約の決め手となった、本編セミナー担当云々については口約束ゆえ、どうすることもできませんでした。

担当者には、「また、次回開催時にはご依頼しますので」と、のらりくらりとかわされ続けるのでした。

不利な条件で上手く利用されモヤモヤ

また、これも独立して間もない頃のこと、とある企業からコラム執筆の依頼があったのですが、報酬は1本1000円程度と、やはり信じられないくらいに安いものでした。

ただ、担当者が言うには、「執筆者欄を大きく取って、顔写真と詳細なプロフィールを掲載しますので」とのこと。

この説明に、これは宣伝効果が見込めると、自身を納得させて、契約書にサインをしました。しかし、掲載された記事には、「執筆者:藤原久敏」とだけしか記載されておらず、ファイナンシャルプランナーとの肩書もありませんでした。

これはなぜだと担当者に聞くと、「誌面の関係上、スペースがなくなってしまいまして」との一点張りで、話は平行線。しかし残念ながら、契約の決め手となった、詳細なプロフィール掲載については口約束ゆえ、どうすることもできませんでした。

そして担当者には「また次回はしっかり掲載しますので」と、やはり、のらりくらりとかわされ続けるのでした。

いずれも、驚くほど安い報酬で契約したのは、口約束部分(本編セミナー担当時には正規料金、執筆者欄に詳細なプロフィール掲載)があってのこと。

しかし、口約束がゆえに、反故にされたわけでした。

このように、不利な条件で上手く利用され、モヤモヤしたことがあるのは、私だけではないかと思います。

「会社の業績が回復したら元に戻す」ことを条件に減額

さて、そんなモヤモヤがありながらも、なんとか仕事も軌道に乗ってきた頃、口約束が原因で、モヤモヤでは済まないようなことが起きました。

それは、報酬減額の要求。

継続的に研修講師のお仕事をいただいていた企業から、業績不振(赤字決算)を理由に、講師料減額の要求がなされたのでした。担当者が言うには、「2~3年以内には業績回復の見込みで、必ず元の報酬額以上に戻します」とのこと。

そして、「経費削減で、我々社員の給料も減らされています、どうぞご協力をお願いします」と深々と頭を下げてのお願いでした。

そこまで言われては仕方がないと、そして2~3年の間だけならばと、2割ほど減額した金額で、講師契約書の更新にサインをしたのでした。

講師料の減額成功でインセンティブを手に入れた社員

その後、3年経ち、会社の業績は回復(黒字復帰)しました。しかし、講師料は減額されたままで、元の金額に戻すとの連絡は一向にありません。そしていつの間にか、減額の交渉をしてきた担当者は退職していたのでした。

そこで、新たな担当者に、前担当者との交渉内容を訴えるも、「減額のお願いはしたが、会社としては、その期間については約束していない」とのこと。たしかに、減額期間については契約書には記載されておらず、そこは、前の担当者との口約束でした。

これには、2~3年の間だけならばと契約書にサインをした自分に、後悔しきりです。そして、この講師料減額には、金銭的に大きなダメージを負うのでした。

なお、新たな担当者に聞けば、社員の給料減額は半年だけで、すぐに元の給料に戻ったとのことでした。さらには、前の担当者は、外部講師料の減額に成功したとのことで、会社からインセンティブをたんまり受け取っていたことが分かりました。

これを聞いたときは、さすがにモヤモヤでは済まず、裏切られ、騙された気分で、精神的に大きなダメージを負うのでした。

トラブルを未然に防ぐ2つの対策

口約束でのトラブル予防策としては、基本的には以下の2つです。

1つ目は、契約の決め手となる条件も、(口約束ではなく)しっかりと契約書に盛り込む、もしくは別途、書面(念書)・録音などの形でしっかり残す。

2つ目は、契約の決め手となる条件を明記できないのなら、そもそも契約をしない。

それができれば、トラブルは避けられる可能性は高いでしょう。

しかし実際には、人間関係のしがらみや諸々の事情から、それができずに、契約の決め手となる条件は口約束となり、不利な契約をせざるを得ないこともあるでしょう。私自身、今でも、そんなケースはあります。

そこで現実的な対策としては、まずは、その不利な契約でも、精いっぱい頑張ってやることです。残念ながら、(証拠のない)口約束を争っても、契約自体は覆りません。

悔しいところですが、過去をウジウジ悔やむのではなく、現状を認め、そして、その現状でできることを考えるのが、失敗からのリカバリーの鉄則です。

すなわち、口約束をもとにした不利な契約でも、精一杯頑張っていることを(嫌味にならない程度に恩着せがましく)アピールして、新たな仕事や条件改善に結び付けるのです。

実際、講師料減額の件では、新たな担当者に、「○○さん(前の担当者)からは、業績回復すれば報酬は上がる(戻る)との約束なので、今は、この報酬で何とか頑張ります」と、減額された報酬でも頑張っていることをアピールし続け、その見返りとして、希望する案件を優先して回してもらっています。

そして幸い、会社の業績も安定したこともあり、まだ元の報酬には戻らないものの、若干の増額ともなりました。

おそらく、これはアピールしなければ(何も言わなければ)、減額報酬のまま、何も変わらなかったことでしょう。

反故にされた口約束を交渉材料にする

また、前述のマネーセミナー講師の件(初回無料セミナーのみを担当)でも、その後、別の社員の方に、「○○さん(面談での担当者)との話では、本編セミナーも担当できるとのことで、今回はこの金額でやらせていただきました」とアピールした結果、お詫びの意味もあってか、別件でのセミナー講師を依頼いただきました。

約束を反故にするような担当者は見限って、可能であれば、その口約束を交渉材料にして、他の方にアプローチするのもいいでしょう。

もっとも、アピールしたからといって、それが必ずしも新たな仕事や条件改善に結び付くわけではありません。

多くの場合は黙殺で、不利な条件のままでしょう。

実際、前述の執筆の件では、「前の記事は、顔写真やプロフィールを大きく掲載いただけるとのことで、1000円で頑張っています」とアピールを続けましたが、相変わらず報酬は変わらず、プロフィール掲載もされないままでした。

11月施行のフリーランス新法で労働環境は改善するか

それでも、(証拠のない)口約束を争っても、契約自体は覆るわけではないので、そこにムダな労力を費やすより、今ある条件で頑張る方がはるかに建設的ですよね。

もっとも、あまりにも黙殺が続くようなら(状況がまったく変わる気配がないなら)、それはそれで、先方の気質が分かったわけで、今後の付き合いを考える判断材料を得ることができたわけです。

いずれにせよ、不利な条件でも頑張っていることをアピールしてみる価値は、十分にあるでしょう。

なお、今年11月より施行された「フリーランス新法」により、書面等による取引条件の明示が義務付けられるなど、フリーランスの労働環境は整備されつつあります。

フリーランスの方には、朗報と言えるでしょう。

とはいえ、今後、この法律がどの程度浸透していくかはまだまだ不透明な部分も多く、やはり自衛が欠かせないことには変わりません。

藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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