1. トップ
  2. 恋愛
  3. 駆け引きなんてしたくない、という言葉に込めた少し面倒くさい気持ち

駆け引きなんてしたくない、という言葉に込めた少し面倒くさい気持ち

  • 2024.12.6

これは私が久しぶりにだれかと2人で遊びに出かけた時の話だ。
20歳になり、タイムカプセルを開けた時に久しぶりの再会を果たしたのを機に、電話で話すようになった人がいた。

笑い方や突っ込み方、いじられキャラな所は全く変わっていなかった。でも、将来のことを真面目に考えている姿や、学生のこの時間をどう有意義に過ごそうかと邁進している様子は、キラキラしていて、格好よかった。
周りの目とか余計なことを考えていなかった小学生の時の友達ということもあって、彼には基本的になんでも話せた。悩んでいる茶道のこと、大学のこと、バイトのこと、付き合っていた彼氏のこと、将来のこと。

◎ ◎

着飾らず、何の迷いもない返事をしてくれる彼には、なんだか彼のことを信じさせてくれる力があった。何を言うかではなく、相手がそれをどう受け取るかが全て。だから、仕事でチームをまとめること、信頼関係を築くことは大切だよねと、あいにくの土砂降りを横目に見ながら、彼のおすすめのカフェで2人で語った。

頭の中では、あなたは私に信じさせてくれてますよと思っていた。

それから、異常なまでにノルマの達成にしがみつき、受験期には朝4時起きを約1年半続けた私のことを、彼は、不思議ちゃんと呼んだ。私のことをよく笑うけど不思議な笑い方をすると言った。

システマチックで感情より先に理性が働いている。笑う時も笑おうって決めて表情筋を動かしている。目の奥でずっと何か冷静に考えているように見えるそうだ。あながち間違いじゃない。そんな風に言い当てられたのはそう多くはないけれど。
一方で、私は雑談が苦手、遊びに行った時に何かを決めるのが苦手だった。彼からは嫌なことから逃げないとか感情のコントロールは得意なのにそこだけ不器用だなと軽やかに笑われた。私はそこに嫌味を感じるどころか分かってもらえたことを嬉しいと思った。

◎ ◎

晩ごはんにラーメンを一緒に食べに行った時、麺類はすする音をたてないようにって気をつけるからご飯類より食べるのに時間がかかるという私に、「思いっきりすすってください!」と言い、ズズズーっと豪快に麺をすすって替え玉もしていた。麺が来るのを待つ間、ゆっくり食べてねーとも言ってくれた。
2軒目の居酒屋では、「好きなのを選んで。俺はなんでもうまそうに食う自信がある」と笑ってくれた。

豚骨ラーメンは人生初めて。夜に居酒屋にはしごするのも初めて。この前の電話も朝までとか初めて。
そんな私に、すげーと笑って、真面目ななつめを振り回しちゃいけないとかそんなことおくびにも出さずにオススメのお店へと連れ回してくれた。一方で、私の人生初の豚骨ラーメンだから美味しいのをお願いしますと冗談口で言う私に、頑張りますと冗談口で萎縮していた。

彼にとって私はただの昔の同級生なのだろう。でなければからかいあって横腹を軽く小突くとか、道を間違えそうになった私の背中に手を回して「こっち」と引き寄せたりなんかできるわけがない。

◎ ◎

「前付き合っていた人には本音が言えなくて苦しかったことがあるから、次、恋愛するならちゃんと駆け引きなんかせず素直に伝えたい」
「私は友達と最初に思った人はずっと友達だし、第一印象から異性として好印象な人はずっとそう」
「いろんな人がいるから一般論じゃなくてあくまで私の意見だけど、あなたの彼女は幸せだと思う」

帰りに、彼に手作りのマドレーヌを渡した。

その言葉の意味に、お菓子に込められた淡い想いに、彼は気づくだろうか。駆け引きなんてしない、察してなんて言わないとは言ってしまったけど、これは別に気づかなくったって良いと思っているから、少し面倒くさいかもしれないが許してほしい。
今はまだもう少し、この気持ちを大切に温めていきたいのです。

■なつめの抹茶のプロフィール
料理と茶道が好きな女子大生。
いわゆるリケジョだけど、言葉を紡ぐこと、紡がれた言葉を読み解くことも大好きです。

元記事で読む
の記事をもっとみる