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時代は変わった。選択的夫婦別姓を認める機は熟しているのではないか

  • 2024.12.6

私の旧姓は希少というほどではないのだが、わりあいローカルな名字で、そのせいか、名前を言っただけでも、初対面の人から〇〇県の出身ですかと聞かれることがあった。これがけっこう話の糸口になったりすることもあり、気に入っていた。

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結婚して姓が変わったが、仕事には就いていたし、その仕事もずっと続けるつもりだったので、いつも電話連絡をしていた相手や以前名刺を渡していた人には姓が変わったことを説明しなければならず、それがけっこう面倒であった。今は職場での通称使用が認められていて、そうした不便はずっと少なくなっただろうし、実際に旧姓を使用している人も多くなっていると聞く。

それでもパスポートなど戸籍名でなければならない場合もあり、戸籍上も夫婦別姓を認めるべきだという議論がある。私に言わせれば、こうしたものは認めればよいではないかと思う。選択的夫婦別姓というものは、別姓が選択できるようになるというだけで、別に望まない人に別姓を強制するわけではない。婚姻で姓を変えたい人は今までどおり姓を変えればよい。それに、婚姻とは逆の離婚の場合には、選択的に婚姻時の姓をそのまま名乗れるような制度が1976年にできているが、このときにはさほどの議論もなくすんなりと決まったように思う。

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選択的夫婦別姓に反対する議論の中には夫婦同姓を日本の伝統だという人もいるがそんなことはない。戸籍制度が始まったのは明治時代で、夫婦同姓もそれ以降の話である。また、夫婦や親子で姓が違うことにより、家族の一体感が損なわれるという人もいるが、これも個々人の選択であり、別姓で家族の一体感が損なわれるという人は別姓を選択しなければよいだけのことだろう。それに、家族の一体感なるものについても、考え方は人それぞれであり、夫の地位は妻の地位、親の地位は子供の地位と考える人もいれば、そうは考えない人もいる。夫婦別姓に対する反対論というのは、あまり根拠がない。

選択的夫婦別姓については、さっさと導入すればよいと思うのだが、ただその一方で、こうしたことが大きな政治的テーマとなったり、女性の地位向上の問題と過度に結びつけられたりすることには違和感を持つ。選択的夫婦別姓は、こういってはなんなのだが、ほとんどの国民にとってはどうでもよいことではないか。政治的テーマというのであれば、もっと重要な問題がいくらでもある。そしてまた、女性の地位向上という面でも、今の制度は夫婦同一の姓といっているだけで、妻が夫の姓を名乗らなければならないなんてことは言っていない。ただ、現実に多くの場合、妻が結婚によって姓を変えており、選択的夫婦別姓で、妻の方に旧姓を名乗るという選択肢が与えられたとみれば、その意味で女性の地位向上といえるのだが、それだけのことであろう。選択的夫婦別姓となった場合、結婚で姓を変えた女性が変えない女性に比べて、女性の地位向上についての意識が低いとまでは言う必要はない。選択の自由があるということが重要なのだから。

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そう遠くない昔、女性は若い頃、腰掛け程度の就職をして、その後は専業主婦になるというのが一般的であった。その場合には結婚によって退社するのが普通であったので、姓を変える不便というものは全くなかった。ところが、最近では結婚後もそのまま勤務することが普通になったし、自分の姓である程度の職業的実績を積んでからの結婚も珍しくなくなっている。時代は変わっている。選択的夫婦別姓を認める機は熟しているのではないか。

■皆川まなのプロフィール
昭和29年生まれ。とにかく本を読むことも、文を書くことも好きです。迷い、迷いながらも、結局仕事は非常勤も含めて69歳まで続けました。

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