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「ごはんは一緒にたべるのがいい」定年後のシニア夫婦の過ごし方【石川三千花さん・エッセイ】

  • 2024.12.6

長年ともに暮らしてきた夫婦とはいえ、趣味や楽しいと思うことは違って当然。お互い好きなことをして過ごしつつ、日々のゴハンは一緒に食べたいものですね。


育児休業をとった民間企業の男性の割合が、2023年度は30パーセントを超えたという記事を新聞で読んだ。そして、18〜25歳の男性の意識調査では、約84パーセントが育休を取得したいと答えて、約63パーセントは就職活動で企業の育休取得情報を重視すると回答したそうだ。

いいぞいいぞ、そうでなくっちゃ! 育児も家事も奥さん任せなんて昭和のやり方は、許されない。高度成長期の日本じゃあるまいし、妻が働いていようがいまいが、家庭のことをないがしろにする男は敬遠されるのだ。ちょっと話は飛ぶけれど、大金を稼ぐアメリカのメジャーリーグの選手だって、試合の前に幼稚園や学校に子どもを送り届けてフツーのお父さんをやっているそうだ。

さて、若い人たちが家庭のことに協力的なのは喜ばしいことだが、われらシニア夫婦はどうなのか。よく聞く話は、定年退職した夫の居場所が家にはないだの、時間を持て余している夫がなにをしていいのかわからない、というやつ。妻と食べ歩きや旅行をしたらいいんじゃない?と思うが、妻の方は夫と一緒ではつまらないから、女友達と行く方がいいという。つまり、現役時代の夫が家のことを奥さんに任せきりにしたツケが出たわけだ。

最初から家事でも育児でも夫婦が一緒にやっていれば、どちらかひとりだけが負担に感じることはない。仕事も子育ても大忙しの若いころに協力しあった夫婦は、戦友みたいなもの。一緒に乗り切ったという信頼感がある。とはいえ、どんな夫婦でも長年一緒に暮らしていれば、文句のひとつやふたつあるのが当たり前だ。趣味や興味のあることがふたりバラバラなんて当然。だから、年を重ねたら、お互い好きなようにしたらいい。でもね、ゴハンを食べるのだけは一緒がいいね。これ、けっこう大事だと思う。

というのは、ゴハンってやっぱり作るのも食べるのも、ひとりより誰かと一緒の方が盛り上がるんだよね。特別、お料理が好きな人なら関係ないかもしれないが、年老いた私の母も、父が亡くなってからは、ひとり分を作るのが手間に感じるし、煮物なんかは少しだけ作ってもおいしくないし余ってしまうとよく言っている。夫婦どちらが作っても、ふたりで作ってもいいが「おいしいね」のひと言は、日々の喜び以外のなにものでもない。

イラスト&文/石川三千花

※素敵なあの人2024年11月号「石川三千花の素敵とそれなりの間にはvol.52」より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

この記事を書いた人 石川三千花さん

映画、ファッションについて独自の観点からイラスト+エッセイを展開。著書に『石川三千花の勝手にオスカー』(集英社)、『勝手にシネマ・フィーバー』(文藝春秋)など多数。

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