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【丸の内】静嘉堂@丸の内「平安文学、いとをかし ―国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」と王朝美のあゆみ」

  • 2024.12.24

初公開!《紫式部図》、王朝文学千年の魅力「いとをかし」な平安文学の世界へ

静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)で開催中の「平安文学、いとをかし ―国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」と王朝美のあゆみ」[2024年11月16日(土)~2025年1月13日(月・祝)]を見て来ました。

国宝《源氏物語関屋澪標図屏風》(俵屋宗達)、国宝《倭漢朗詠抄 太田切》のほか、初公開の《紫式部図》(土佐光起)も展示されていました。

国宝3件、重要文化財5件を含む平安文学を題材とした絵画や書の名品や、静嘉堂文庫所蔵の古典籍からも出品。

平安文学の「いとをかし」の世界に出会える展覧会です。

※特別な許可を得て撮影しています。

文学の黄金時代、平安文学『和漢朗詠集』『古今和歌集』『枕草子』、道長の栄華『栄花物語』、最古の文学批評『無名草子』

《栄花物語(えいがものがたり)》、婚礼調度にも用いられた「奈良絵本」と呼ばれる豪華な色彩本

宇多天皇から堀川天皇まで約200年間を仮名で記した最古の歴史物語です。 藤原道長(ふじわらのみちなが)の栄華を中心に記された正編30巻の作者は赤染衛門(あかぞめえもん)とされています。

続編10巻は、道長の死後、関白頼通(よりみち)、師実(もろざね)、師通(もろみち)の時代の出来事記しています。 構成が『源氏物語』の「宇治十帖」をイメージさせるのは偶然でしょうか。

出典:リビング東京Web

左から、《栄花物語》 江戸時代 17世紀 、《今昔物語集》 江戸時代 享保5年(1720) どちらも(公財)静嘉堂蔵 通期展示

《無名草子(むみょうぞうし)》史上最古の文学批評は女子会で

《無名草子》は、鎌倉時代初期に成立した史上最古の文芸批評書です。 若くして皇嘉門院の母・北政所(藤原宗子)に仕えた老尼と、京都・東山の麓に住む若い女房たちが、平安時代の物語を中心に作者や作中人物について色々な見方で批評を語っています。

『源氏物語』について語る老尼の言葉は、作者の紫式部も含めて大絶賛しているようです。 「それにしても、紫式部が『源氏物語』のような大作を書き上げたのは、現世においてだけでなく前世からの因縁もあるのだろうか…と思ってしまいます。仏様に祈ったおかげなのかもしれません。(後略)」

女房たちは『源氏物語』をまだ読めていないことがとても残念として「物語の内容を語ってください。みなさんぜひ聞きましょう。」と応えています。 (図録『平安文学、いとをかし』―国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」と王朝美のあゆみ」(静嘉堂文庫美術館)より、意訳したものを一部抜粋)

鎌倉時代の老尼と女房たちの会話は平安文学を語る女子会のような雰囲気です。

出典:リビング東京Web

《無名草子》 紙本木版 一冊 江戸時代 19世紀 (公財)静嘉堂蔵 通期展示

物語は絵巻物で読む

絵巻物は、もとは中国から輸入された経巻や画巻が源流だそうです。 平安時代にやまと絵が成立し文学が盛んになると、絵と、物語や説話を描いた絵巻物が日本独自に発展を見せます。

合戦絵巻のリアルな描写や、鮮やかな十二単の女房装束など、当時の景色や風俗など物語の世界観が絵巻物から直接伝わって来るようです。

現存最古の合戦絵巻、重要文化財《平治物語絵巻(へいじものがたりえまき)》

鎌倉時代に成立した重要文化財《平治物語絵巻》信西巻。

平治元年(1159)の平治の乱(へいじのらん)を題材とした軍記物語の絵巻物です。 内裏に集まる公卿や、色とりどりの甲冑を身に付けた武者たちの姿が、俯瞰した視点からリアリティのある描写で淡々と描かれています。

登場人物1人1人の表情や仕草が描き分けられていて、実際に現場を上から眺めているようです。 平治の乱で源義朝(みなもとのよしとも)に勝利した平清盛(たいらのきよもり)はこの後、朝廷で権勢を振るいます。

出典:リビング東京Web

重要文化財《平治物語絵巻》信西巻 紙本着色 一巻 鎌倉時代 13世紀 (公財)静嘉堂蔵 通期展示(場面替えあり)

重要文化財《住吉物語絵巻(すみよしものがたりえまき)》長谷寺観音の夢のお告げで幸せに

幼くして母を亡くした高貴な姫君が継母に虐げられ、亡き母の乳母だった尼を頼って住吉に逃れます。 かねてより姫に思いを寄せていた少将は、長谷寺観音の夢のお告げで姫を見つけ出し、2人は都に帰り幸せに暮らしました、という物語文学にたびたび登場する継子いじめの姫君のお話です。

修復により鮮やかに甦った本作は、修理後初公開です。姫君や女房たちの十二単が色彩豊かに鮮やかに描かれています。

出典:リビング東京Web

重要文化財《住吉物語絵巻》 紙本着色 一巻 鎌倉時代 14世紀 (公財)静嘉堂蔵 通期展示(場面替えあり)

時代を超える『源氏物語』の世界へ

時代を超えて読み継がれて来た『源氏物語』は、日本の文学だけでなく絵画や工芸など様々な分野に影響を与えて来ました。

「時代を超える『源氏物語』」では、国宝《源氏物語関屋澪標図屏風》(俵屋宗達)をはじめ『源氏物語』の世界観を表した現代の作品が展示されていました。

特別陳列される截金ガラス作家・山本茜による「源氏物語シリーズ」は必見です。

平安の長編恋愛小説『源氏物語』の作者を描いた《紫式部図(むらさきしきぶず)》

石山寺に参詣した紫式部が、琵琶湖に映る月を見て『源氏物語』を書き始めたという伝承を描いた《紫式部図》(土佐光起)。 初公開だそうです。

文机には白い紙と硯箱が置かれ、硯にはすった墨が黒く見えます。

墨をする手をふと止め、筆を手に文机に肘をつきじっと一点を見つめる紫式部。 湖面に映る月影に物語の構想が浮かんで来た瞬間でしょうか。

光起の筆は、紫式部の垂髪や面差しを丁寧な描線で描き、装束の色や文様も細密に描き出していて、女流文学の作者としての肖像画の重みを感じさせます。

出典:リビング東京Web

《紫式部図》 土佐光起 絹本着色 一幅 (公財)静嘉堂蔵 通期展示

国宝《源氏物語関屋澪標図屏風(げんじものがたりせきやみおつくしずびょうぶ)》

『源氏物語』の第十六帖「関屋」と、第十四帖「澪標」を描いた国宝《源氏物語関屋澪標図屏風》。 空蝉と逢坂の関での一瞬の再開と別れを描いた「関屋」。 住吉詣での光源氏との身分の違いを思い知り、参詣せずに去る明石の君の船が描かれた「澪標」。

もとは京都・醍醐寺(だいごじ)に伝わった作品で、近年の研究で醍醐寺座主をつとめた三宝院門跡・覚定(かくじょう)が絵の注文主と分かったそうです。 覚定の日記『寛永日々記』寛永8年9月13日条に、俵屋宗達筆の源氏物語の屏風が届き「結構成事也」と満足した様子が記されているそうです。

明治29年(1896)に岩﨑彌之助(いわさきやのすけ)が醍醐寺へ多額の寄付をしたことの返礼として岩﨑家に贈られました。

出典:リビング東京Web

国宝《源氏物語関屋澪標図屏風》 俵屋宗達 紙本金地着色 六曲一双 江戸時代 寛永8年(1631)(公財)静嘉堂蔵 通期展示

截金(きりかね)ガラス作家・山本茜(やまもとあかね)の透明感溢れる「源氏物語シリーズ」

今回、本展で特別陳列された截金ガラス作家・山本茜の「源氏物語シリーズ」。 第三帖「空蟬」と第四十五帖「橋姫」をテーマにした作品が展示されていました。

『源氏物語』の場面や登場人物が、透明感のある色ガラスの造形と、その中に浮かぶようにほどこされた截金の文様で表されています。

透明感溢れるガラスはまるで鮮烈な泉の水のようにも見え、溢れ出す作者のイメージの結晶のようでもあります。 作者の山本茜は、『源氏物語』五十四帖をライフワークとして截金ガラスの作品に取り組んでいるそうです。

出典:リビング東京Web

「源氏物語シリーズ」第三帖「空蟬」 山本茜 2019年 個人蔵 通期展示

平安古筆と料紙装飾の美の世界、国宝《倭漢朗詠抄 太田切(わかんろうえいしょう おおたぎれ)》、平安文学の美を味わうひととき

平安時代中期に成立した女手と呼ばれる仮名は、書の美しさが鑑賞の対象となります。 美しく装飾された料紙に能書家が揮毫した『古今和歌集』や『和漢朗詠集』は身の回りにおいて鑑賞され、調度手本と称されました。

「平安古筆と料紙装飾の美」では、国宝《倭漢朗詠抄 太田切》をはじめ装飾された雅やかな料紙に記された平安古筆の名品が展示されていました。 国宝《曜変天目(ようへんてんもく)》((公財)静嘉堂蔵)も展示されており、平安古筆と共に鑑賞していると、格式の高いお茶席によばれたような気分を味わえました。

静嘉堂@丸の内の「平安文学、いとをかし ―国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」と王朝美のあゆみ」は2025年1月13日(月・祝)までです。 是非お出かけください。

出典:リビング東京Web

国宝《倭漢朗詠抄 太田切》 平安時代 11世紀 (公財)静嘉堂蔵 通期展示

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、静嘉堂お香 紫式部(1‚280円)、懐紙 巳鈴(550円)、2025年卓上カレンダー(850円)を購入。 紫式部も、装束にたきこめたお香の香りに包まれて『源氏物語』を書いていたかもしれません。

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ 静嘉堂@丸の内

〇静嘉堂文庫美術館、静嘉堂@丸の内

URL:https://www.seikado.or.jp/

住所:〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F

※美術館入口は、明治安田ヴィレッジ(旧・丸の内MY PLAZA)の1階

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

〇「平安文学、いとをかし ―国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」と王朝美のあゆみ」

会期:2024年11月16日(土)~2025年1月13日(月・祝)

休館日:月曜日、2024年12月28日(土)~2025年1月1日(水・祝)

開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)。

土曜日は18:00(入館は17:30)まで。

第3水曜日、12月18日(水)は20:00閉館(入館は19:30)。

会場:静嘉堂文庫美術館[静嘉堂@丸の内(明治生命館1階)]

入館料:一般 1,500円、大高生 1,000円、中学生以下 無料 障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名〈無料〉を含む)700円

※混雑が予想されるため来館日時指定予約がお薦めです

参考文献:図録『平安文学、いとをかし』―国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」と王朝美のあゆみ」編集・発行 静嘉堂文庫美術館 2024年11月16日発行

〇ミュージアムショップ

営業時間:静嘉堂文庫美術館開館時間に準ずる

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