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【3.6怖〜4.0怖】読み進めるほどに怖くなるホラーガイド444

  • 2024.12.6
読み進めるほどに怖くなるホラーガイド444

選出と判定を務めた、14人の怖いものマニアたちと担当ジャンル。

森直人:映画
人間食べ食べガエル:映画、YouTube
朝宮運河:映画
門賀美央子:小説、書籍
緑の五寸釘:漫画
吉田悠軌:怪談
深津さくら:怪談
人生つみこ:ゲーム
向江駿佑:ゲーム
DIZ:ドラマ
劔樹人:ドラマ
藤津亮太:アニメ
皆口大地:心霊ドキュメンタリー
ジェットコ社会人:お化け屋敷

3.6怖

【映画】『 戦慄の絆』
監督:デヴィッド・クローネンバーグ/カナダ=米/1988年
双子のエリオットとビバリーは幼い頃から一心同体に育ち現在は共に産婦人科医を開業。すべてを分かち合ってきた彼らだが、ある女性患者との出会いによりその均衡が崩れる。「鬼才クローネンバーグの傑作の一つ。今年ドラマにもなりました」(森 直人)

【映画】『サスペリアPART2』
監督:ダリオ・アルジェント/伊/1975年
残虐な殺人を犯した人間の存在を指摘した超能力を持つ女性ヘルガが、何者かに惨殺される。叫び声を聞きつけたピアニストのマークは、事件の真相を突き止めようとする。「前作の『サスペリア』とは全くの別物。出来は甲乙つけ難く、こちらを推す人も多い」(森 直人)

【映画】『グリーン・インフェルノ』
監督:イーライ・ロス/米=チリ/2013年
アマゾンを訪れた環境活動家の学生たちは、帰路に就く最中に飛行機がジャングルに墜落。命からがら彷徨(さまよ)う彼らを待ち受けていたのは、人肉を食らう食人族だった。「1980年のイタリア映画『食人族』を再解釈。ハイボルテージの残酷描写がてんこ盛りです」(森 直人)

【心霊ドキュメンタリー】『このテープもってないですか?』
出演:いとうせいこう、井桁弘恵ほか/日/2022年
BSテレビ東京で2022年12月に3夜連続で放送されたテレビ番組。視聴者から募集した貴重な番組録画テープをスタジオメンバーとともに見ていくバラエティ番組の体裁で進むが、途中で不気味な映像や発言が挟み込まれていく。(BRUTUS編集部)

【小説】『ミスト 短編傑作選』
著:スティーヴン・キング/1980年
キングの初期作品から選り抜かれた傑作選。映画やドラマ化された代表作の一つ『霧』も収録。「目の前が見えず疑心暗鬼になった人々が物を奪い合い、新興宗教も流行る。コロナ禍で、ここに書かれる人間の“おかしさ”は絵空事ではないと感じました」(朝宮運河)

【小説】『恐怖 アーサー・マッケン傑作選』
著:アーサー・マッケン/訳:平井呈一/2021年
出身地であるイギリスの土俗信仰や妖精など“欧州伝説の恐怖心”がベースになったクラシックホラー、待望の邦訳が復刊。「神学や民間信仰などに造詣が深い、民俗系ホラーの先駆者的巨匠。言い伝えと文明社会の繫げ方が見事です」(朝宮運河)

【小説】『ずっとお城で暮らしてる』
著:シャーリイ・ジャクスン/訳:市田泉/2007年/創元推理文庫
家族が皆殺しにされた屋敷に暮らす生き残りの姉妹。外界を憎み空想に閉じこもる少女たちに起こる様々な事件と破壊的な終末。「規則正しく暮らす育ちのいい子のようだが、彼女目線で書かれる文章が明らかにおかしく、ひたひたと恐怖を実感。幽霊など超常現象は起きませんが、歪んだ精神が生み出す世界の恐ろしさはインパクト満点。“静かな幽霊屋敷もの”の代表作です」(朝宮運河)

【漫画】『恐之本』
著:高港基資/2012年
心霊からサイコパスまで、タイトル通り「恐」を集めた全10巻。「長年、コンビニ向け廉価版でしか読めなかった作品たちがめでたく単行本化。ホラー漫画らしい絵が非常に上手で、ここぞという時に登場する、嗤(わら)う女の霊が残すインパクトがすさまじい。小細工はしない、直球の怖さです」(緑の五寸釘)

【漫画】『よみがえる少女』
著:蕪木彩子/1994年
クラスの男子と仲良くなったことで嫉妬され、理科の実験で硫酸をかけられる少女。そして外科医の父から、あり得ない治療方法を提案される。「“内臓”と書いて“蕪木彩子”と読むべき、スプラッターホラーの名手。著者の作品には、人体破壊を求める読者が常に群がっています」(緑の五寸釘)

【ドラマ】『拝み屋怪談』
監督:清水厚、大畑創/日/2018年~/KADOKAWA/12,540円(DVD)
郷内心瞳の小説をドラマ化。東北地方で拝み屋を営む主人公の元に、次々と恐怖の体験や相談事が寄せられる。「原作者の郷内さんは実際に宮城県で拝み屋の仕事をしています。ドラマは、藤田富さんが演じる拝み屋が聞いた話と、彼自身が体験した話が語られるオムニバス。話の説明が少なく、不親切にも感じるストーリーが多いのですが、そこがいい。僕の好みの作りです」(劔 樹人)

3.7怖

【映画】『2000人の狂人』
監督:ハーシェル・ゴードン・ルイス/米/1964年
南北戦争下に北軍に殺された南部の村の2,000人の住人の怨霊が100年後に北部からの旅行客に襲いかかる。「スプラッターの元祖とも呼ばれる監督の代表作。明るい音楽の下で繰り広げられる残酷な描写は圧巻。ただ行きすぎていて笑えてくる瞬間も(笑)」(森 直人)

Alamy/アフロ

【映画】『インキーパーズ』
監督:タイ・ウェスト/米/2011年
結婚式当日に新郎に捨てられた女性が、客室で自殺をして以来、花嫁衣装の女性の霊が彷徨(さまよ)うと噂されるホテルが閉館することに。2人の従業員は興味本位で、閉館までの間に幽霊の証拠を摑(つか)もうと捜査に乗り出す。「派手な超常現象が起こらない分、リアリティがあります」(人間食べ食べガエル)

【映画】『透明人間』
監督:リー・ワネル/米=オーストラリア/2020年
天才科学者の恋人に束縛される生活から脱出したセシリア。その後彼は悲しみに暮れ自死するが、彼女の周囲で不可解な出来事が起こるように。「人間の怖さを煮詰めた作品。死んでもなお恋人に付きまとわれる恐怖、そして誰にも信じてもらえない恐怖に戦慄」(人間食べ食べガエル)

【映画】『マレフィク 呪われた監獄』
監督:エリック・ヴァレット/仏/2002年
古い牢獄に収監された囚人は、壁の隙間から、呪文が記された古い日記帳を見つける。脱獄に生かせるのではと画策するが——。「記された黒魔術が意図した方向に効力を発揮しない展開にひねりがあり、独特の映像表現も含めて恐ろしく、面白い作品です」(人間食べ食べガエル)

【映画】『心霊写真』
監督:バンジョン・ピサンタナクーン、パークプム・ウォンプム/タイ/2004年
フォトグラファーのタンは、ある日女性を轢(ひ)き逃げしてしまう。数日後、タンが現像した写真に女の顔のようなものが浮かび上がった。「タイでは社会現象になるほどヒットした作品。次第に追い詰められていく描写にゾワッとします」(人間食べ食べガエル)

【映画】『哭声/コクソン』
監督:ナ・ホンジン/韓/2016年
田舎の平和な村に、ある日得体の知れないよそ者がやってくる。男に関する謎めいた噂が広まると同時に、村人が自身の家族を惨殺する事件が相次ぐ。「アジアホラーの盛り上がりの中核にいるナ・ホンジンの代表作。村の閉塞感や土着文化が独特の不気味さを感じさせます」(人間食べ食べガエル)

【映画】『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』
監督:エドゥアルド・サンチェス、ダニエル・マイリック/米/1999年
3人の大学生は伝説の魔女のドキュメンタリー制作のため森へ。「怖いよりも気味が悪い一作。登場人物が正気を失っていくのが、オカルト的な理由か心理的なものなのかが定かでない点も怖いです」(人間食べ食べガエル)

©1999 Blair Witch Film Partners Ltd. A l l Rights Reserved. Artwork & Supplementary Materials ® & ©2016 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

【小説】『怪談小説という名の小説怪談』
著:澤村伊智/2022年
実力派ホラー作家が紡ぐ7つの短編集。深夜の高速道路で始まった怪談会、子供との散歩中に遭遇したおぞましい物件。古今語り継がれてきた怪談を、独自の筆致で描き出す。「正体不明なものが次々と繫がっていく恐怖。澤村さんにとっての“怖さ”が何なのかよくわかる」(門賀美央子)

【小説】『独白するユニバーサル横メルカトル』
著:平山夢明/2009年/光文社文庫
タクシー運転手の主人に長年仕えた道路地図帖が語る、主人と息子のおぞましい所行。ほか連続殺人鬼に救いを求める少女の物語などが収録された短編集。表題作が日本推理作家協会賞短編部門を受賞。「人間の残酷さを芸術の域にまで高めた著者。精神的にも肉体的にもひどい目に遭うのだけれど、不思議な美しさがあります。また弱者の目線が必ず描かれ、彼の物語を救いにしている人もいるはずです」(朝宮運河)

【小説】『六番目の小夜子』
著:恩田陸/1992年/新潮文庫
とある高校に伝わる「サヨコ」という言い伝え。3年に1度、先代のサヨコから指名された生徒が極秘に任務を実行するのだが、その年に美しく謎めいた転校生がやってくる。恩田陸のデビュー作でドラマ化、舞台化されるなど話題に。「青春小説の名手である著者が、胸の痛みやきらめきなどとホラーをうまく組み合わせて書いた作品。都市伝説を土台にしたホラー小説のはしりで、瑞々しさもありながら怖さもしっかりと」(朝宮運河)

【漫画】『笑う肉面』
著:犬木加奈子/1996年
表題作は学校一の美少女の弱みにつけ込み、顔の交換手術を持ちかけ、美少女の彼氏を奪おうとする金持ちの娘の話。「ブームを牽引したホラー漫画の女王による残酷物語。少女ホラー漫画の三種の神器“恋愛、美醜、勧善懲悪”を完全調和させ、極上のホラーに仕上げる手腕はさすが」(緑の五寸釘)

【怪談】加藤一「香津美の実家」(から始まる一連の話)
『「弩」怖い話ベストセレクション 薄葬』(竹書房怪談文庫)収録
一人娘の香津美を嫁にもらう条件は、彼女の実家での同居だった。暮らし始めると、夫だけが怪異に襲われるように。その謎は、仏壇の裏にある箱にある?「伝説的なシリーズ怪談の第1章です」(吉田悠軌)

【ドラマ】『マリアンヌ -呪われた物語-』
監督:サミュエル・ボダン/仏/2019年/Netflixオリジナル
幼い頃の悪夢を基に書いたホラー小説が大ヒットした主人公は、故郷で悲劇に遭う。「オープニングから出てくる老婆がすごく怖い。優しさの象徴であるおばあちゃんが恐ろしいというギャップにやられました」(DIZ)

【アニメ】『地獄少女』(第1期)
監督:大森貴弘/日/2005~06年
恨みや憎しみを持つ相手をウェブサイト「地獄通信」に書き込むと、地獄少女・閻魔あいが地獄に流してくれる。あいの元には様々な依頼が届く。「第23話『病棟の光』は、地獄流しを実行したあいですら割り切れない表情を見せる不条理極まりない結末がインパクト大」(藤津亮太)

3.8怖

【映画】『ファニーゲーム』
監督:ミヒャエル・ハネケ/オーストリア/1997年
別荘で穏やかな午後を過ごす一家の元に、見知らぬ青年が訪れる。「何の罪もない家族の元に快楽殺人を嗜好する侵入者がやってくるという不快な映画。家のセキュリティが年々強固になる中、私的空間が侵害される恐怖も年々増幅されているのかも」(森 直人)

【映画】『ヒルズ・ハブ・アイズ』
監督:アレクサンドル・アジャ/米/2006年
トレーラーで砂漠を横断中の家族は、ある廃坑の町に迷い込んでしまう。待っていたのは、恐ろしい食人集団だった。「放射能の影響で奇形化した怪物が襲ってくる社会派ホラー。アメリカの闇が形象化された作品で、理屈を考えれば考えるほど怖いです」(森 直人)

【映画】『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』
監督:ロブ・ゾンビ/米/2005年
『マーダー・ライド・ショー』の続編。痛みと恐怖を崇拝するある家族は、捜査の手をすり抜け、再び殺戮を繰り返す。「『悪魔のいけにえ』フォロワーの中でも、個人的には一番いい出来だと感じる作品です。脚本の作りも秀逸です」(森 直人)

【映画】『ヘレディタリー/継承』
監督:アリ・アスター/米/2018年/U‒NEXTで配信中
祖母の死を機に家で怪奇現象が起こるように。13歳の孫娘も不可解な行動をとり始める。「『エクソシスト』などホラー教養の高い監督の優秀なデビュー作。ゆえにマニアからの評判が高い正統派作です。音楽の使い方も見事。怖さを助長します」(森 直人)

【映画】『アザーズ』
監督:アレハンドロ・アメナーバル/米=スペイン=仏/2001年
広大な邸宅で、日光アレルギーを持つ娘と息子と3人で一日中闇の中で暮らすグレース。3人の使用人を雇ったことを機に屋敷に怪現象が起こるように。「怪現象の表現も物語の展開もよくできていて、後発の屋敷ものの中ではかなり怖かった作品です」(森 直人)

【映画】『血ぬられた墓標』
監督:マリオ・バーヴァ/伊/1960年
18世紀に魔女裁判で処刑された王女は、100年後に復活し、一族への恨みを晴らそうとする。「イタリアのゴシックホラーの古典的名匠の代表作。ホラーながらも特有のファンタジータッチな世界観は、大林宣彦監督の『ハウス』などにも影響を与えました」(森 直人)

【映画】『たたり』
監督:ロバート・ワイズ/米/1963年
舞台はアメリカ・ニューイングランド。不吉な噂ゆえに長らく借り手のつかなかった奇怪な幽霊屋敷に、心霊研究のために学者と助手が越してくる。「『回転』と同じく、屋敷ホラーの古典です。幽霊自体が出てこなくても、その気配や不穏な雰囲気だけで十分怖いです」(森 直人)

【映画】『ドリラー・キラー』
監督:アベル・フェラーラ/米/1979年
売れない画家として鬱屈とした日々を送るレノは、ホラー本への没頭を契機に、夜な夜な電動ドリルを手に殺人を繰り返すように。「都市生活者の人間ドラマがホラー的に変換された作品です。舞台となるニューヨークの闇やよどみ、禍々しさが伝わってきます」(森 直人)

【映画】『Pearl パール』
監督:タイ・ウェスト/米/2022年
2022年の映画『X エックス』で若者たちを手にかけた老婆パールの若き日を描く。ダンサーに憧れる彼女は次第にその本性をあらわにしていく。「ミュージカル映画のキラキラとした世界観とB級ホラーを掛け合わせた一作。恐ろしい化学反応が起こっています」(森 直人)

【映画】『ゲット・アウト』
監督:ジョーダン・ピール/米/2017年
アフリカ系アメリカ人の写真家クリスは、白人の彼女ローズの実家へ招待される。歓待されるが、随所に違和感を覚えるように。「人種差別をベースとする社会派ドラマをホラー的に描いた革新的な一作。風刺的なブラックコメディでもある知的な戦慄の恐怖と笑い」(森 直人)

【小説】『黒水村』
著:黒史郎/2008年
課外学習の一環で、山中にある閉鎖的で老人ばかりが住む庫宇治村を訪れた、単位の足りない生徒7人と引率の教師。だが、その地にはあまりに恐ろしい伝承があった。「日本作家では珍しい、パニックホラー作品の名手である黒史郎さん。閉鎖的な村が舞台の本作は、彼の定番であり傑作」(門賀美央子)

【小説】『怪奇小説傑作集1』
著:W・F・ハーヴィーほか/訳:平井呈一/1969年
英米の名作ホラー小説を集めた全5巻のアンソロジーの第1巻。自らの死を予兆する現象に次々と出会う男の逃れがたい運命を描いた「炎天」などを収録。「怪奇ホラー好きなら通るべき重要な古典が詰まった、基礎中の基礎とも言える作品集」(門賀美央子)

【小説】『怪奇小説傑作集3』
著:C・ディケンズほか/訳:大西尹明ほか/1969年
英米ホラーの傑作短編集、第3巻。ラヴクラフト「ダンウィッチの怪」をはじめ、イギリス・ヴィクトリア朝期の代表的な作家であるディケンズの鉄道怪談「信号手」も掲載。「ディケンズの怪談の中でも白眉。さすがは文豪、と感じられる展開力」(門賀美央子)

【小説】『あやめ 鰈 ひかがみ』
著:松浦寿輝/2004年
友人宅での酒宴のため魚を買って地下鉄に乗るが、降りられなくなる初老男が主人公の「鰈」など、夢とうつつの間を彷徨(さまよ)う男たちの物語3編。「自分のどうしようもなさを、幻の中で見せられるという恐怖。人生に後悔が多い人ほど、身につまされる話かもしれません」(門賀美央子)

【小説】『鼻のある男 イギリス女流作家怪奇小説選』
著:ローダ・ブロートンほか/訳:梅田正彦/2006年/鳥影社
19世紀後半~20世紀前半という、イギリス怪奇小説の黄金時代を生きた女性作家8人の短編集。“鼻のある男”に恐怖心を覚える表題作のほか、オーストラリア人夫婦が手に入れた刀の祟りが主題のブロスター「超能力」などを収録。「女性怪談作家の翻訳はこれまで意外と紹介されてこなかったので新鮮。特にブロスターの話は珍しい“日本刀怪談”なので面白いですよ」(門賀美央子)

【小説】『終わらない悪夢』
著:ジョン・コリアほか/編:ハーバート・ヴァン・サール/訳:金井美子/2008年
幅広い時代の英国ダークホラーを20編収録。「屋根裏部屋に幽閉された産後女性が幻覚に取り憑(つ)かれるエイブラハム・リドリー『私の小さなぼうや』は恐ろしい結末が一文で明かされ秀逸。ジョン・レノンの小説も読めます」(門賀美央子)

【小説】『虚魚』
著:新名智/2021年
両親を事故死させた男に復讐するため、体験した人が死ぬ怪談を探す怪談師の三咲。ある日“人を殺せる”怪談の噂を耳にした彼女は、真偽を確かめるべく、話の出所へと近づいていく——。「語り手が増えている怪談師ブームという今の背景を、とても上手に組み込んでいる作品だと思います」(門賀美央子)

【怪談】竹内義和「わたしにも聞かせて」
フォークグループ・かぐや姫の解散コンサートが録音されていたカセットテープに「わたしにも聞かせて」とささやく女性の声も。「テープを流すたびに違う展開になるんです。テーマこそ同じでも毎度新鮮に楽しめる話」(吉田悠軌)

【怪談】いたこ28号「8ミリフィルムの少女」
いたこさんが大学に通っていた頃の話。映画サークルに入ったばかりのいたこさんは、サークルの新作映画の編集を担当することに。撮影した8ミリフィルムを見ていると、いるはずのない少女が映り込んでいることに気がつくが……。「大学怪談らしい、若さと勢いが感じられます」(吉田悠軌)

【ゲーム】『サイレントヒル2』
Xbox、PS2ほか/2001年
ジェイムスの心の闇を穿つストーリーはシリーズ屈指の重厚さ。ラジオがない状況や、狭い空間で敵と遭遇する場面が増えるなど、1作目よりプレー時の緊迫度が増している。(向江駿佑)

3.9怖

【映画】『ホステル』
監督:イーライ・ロス/米=チェコ/2005年
「アメリカ人のバックパッカーが東欧旅行で羽目を外していたらえらい目に遭うという『悪魔のいけにえ』を彷彿とさせるフォーマット。ただその“えらい目”がひどい!容赦ない拷問が待ち受けているので、派手なスプラッター表現を楽しみたい人におすすめです」(森 直人)

【映画】『八仙飯店之人肉饅頭』
監督:ハーマン・ヤウ/香港/1993年
マカオで実際に起きた猟奇事件をベースにしたカニバリズムホラー。「残酷映画として一部でカルト化していたアジアホラー。いろんな人の肉を刻んで饅頭にして販売しているおかしなおじさんがいるという設定そのものと、過激なスプラッター表現が醍醐味です」(森 直人)

【映画】『女神の継承』
監督:バンジョン・ピサンタナクーン/タイ=韓/2021年
タイ東北部の村で祈禱師一族の血を継ぐ女性・ミンはある時から謎の体調不良に見舞われる。「『哭声/コクソン』のナ・ホンジンがプロデュースしており、アジアホラーのレベルの高さを感じさせる作品。終始、じめっとした独特の不気味さが漂います」(森 直人)

【映画】『イレイザーヘッド』
監督:デヴィッド・リンチ/米/1977年
職工のヘンリーは、恋人の妊娠を機に結婚。しかし生まれたのは、肢体が不自由でおぞましい形相の赤ん坊だった。「デヴィッド・リンチのホラー的想像力が発揮されたアートシネマの傑作。グロテスクだけど美しいビジュアルに良くも悪くも惹きつけられます」(森 直人)

【映画】『オーディション』
監督:三池崇史/日/1999年
妻と死別したビデオ制作会社の社長・青山は、映画のオーディションにやってきた女性に魅了されるが、彼女にはもう一つの顔があった。「海外での人気が高いJホラーの傑作。人間の怖さが凝縮されています。主演の石橋凌さんが足を切られる“痛い”描写が忘れられません」(森 直人)

【映画】『ミザリー』
監督:ロブ・ライナー/米/1990年
瀕死の事故に遭ったベストセラー作家のポールは、中年女性のアニーに命を救われる。ポールの小説の熱狂的な愛読者だった彼女は、初めは献身的に介護をするが——。「現実に起こりそうな設定で、人間の闇を存分に見せてくれる一作。その不条理な展開が本当に怖かった!」(森 直人)

【映画】『呪怨』
監督:清水崇/日/2002年
介護ボランティアをする女子大生は、寝たきり老婆の様子を見るためにある家を訪れる。彼女はそこで、少年と女性の霊に遭遇する。「“俊雄くん”という貞子に次ぐホラーアイコンを生み出したという点でも重要。彼を使っていかに観賞者を怖がらせるか、ロジカルに考えられた一作です」(森 直人)

【映画】『呪詛』
監督:ケヴィン・コー/台湾/2022年
かつて山奥の村で宗教的禁忌を破った女性ルオナンは、以後精神を病み生まれたばかりの娘を施設に預けることに。6年後、回復した彼女は娘を引き取るが、不可解な出来事に遭遇するようになる。「終始不穏な空気が醸し出す演出がうまく、王道ホラーとしてよくできた作品です」(森 直人)

【小説】『踏切の幽霊』
著:高野和明/2022年
舞台は1994年の東京。心霊ネタの仕事を振られた雑誌記者の松田は、列車の停止騒ぎが頻発する下北沢の踏切へ調査に向かう。そこは1年前、若い女性が殺された現場だった。「物語が進むにつれ、予想だにしない真相が見え始める巧みな長編ホラー小説。幽霊描写の頻度が絶妙です」(門賀美央子)

【小説】『ブラックウッド怪談集』
著:A・ブラックウッド/1978年
近代イギリス怪奇小説の三巨匠の一人であるブラックウッドの中短編9編を収録。「特に、川下りをする若者が遭遇したオカルトを描く『ドナウ河のヤナギ原』が秀逸です。キャンプやアウトドアに親しむ人が多い今、自然を舐めたら怖いと心から感じるはず」(門賀美央子)

【小説】『あやし~怪~』
著:宮部みゆき/2000年
縁談が決まった木綿問屋の若旦那の子を身に宿し、追い出された女中・おはる。若旦那から頼まれ、彼女へ使いに出た小僧が見たものとは。「居眠り心中」をはじめ、江戸時代を舞台に人間の情念が渦巻く怪奇譚9つを収録。「圧倒的な読みやすさ。ホラー入門としてもぴったり」(門賀美央子)

【小説】『死国』
著:坂東眞砂子/1996年/角川文庫
舞台はお遍路がある四国。死んだ娘を蘇らせようと、禁じ手である四国八十八ヵ所を逆順してしまう母親によって、帰省した親友など周囲を巻き込む大きな怪異事件が続発してしまう。1999年に映画化もされた、Jホラーを代表するヒット作。「土俗信仰を描いたホラー作品の一つの原点であり、日本各地に違った種類の恐怖が潜んでいることを実感します。土俗系や民俗系ジャンルが好きな方は必読の、モダンホラーの傑作です!」(朝宮運河)

【小説】『川端康成異相短篇集』
著:川端康成/編:高原英理/2022年
川端作品から“異相”をテーマに編んだ短編集。「おすすめは1926年発表の『心中』。家族を残して出奔した男から、妻の元に“子どもにゴム毬をつかせるな。その音が聞こえて来るのだ”という奇妙な手紙が届く。わずか3ページで表現される、抜群の怖さは必見」(門賀美央子)

【小説】『忌録: documentX』
著:阿澄思惟/2014年/A.SMITHEE
神隠し、呪詛、心霊ビデオなど著者が収集した事件の記録資料を収録したモキュメンタリー。「WEBでのみ発表された、隠れたベストセラー。少女の失踪事件をきっかけに怪しい出来事が連鎖し、真相が浮かび上がってくるさまは不穏です。電子書籍版のみである理由は写真を多用しているためで、文章だけでなく視覚的にも働きかけるように、重層的かつ様々なギミックを使って怖がらせることが考えられています」(朝宮運河)

【小説】『人間椅子』
著:江戸川乱歩/1925年
容姿にコンプレックスを持つ椅子職人が椅子となり、女性の感触に溺れていく。ホラー小説の草分け的存在、江戸川乱歩の代表作。「乱歩はアイデアが素晴らしい。人間が絶対に見てはいけない変態的な空間を、粘つくような文体で描いている。怪しい夢の世界に胸打たれます」(朝宮運河)

【怪談】大迫純一「峠の電話ボックス」
『あやかし通信―九夜でおくる怖い話』(実業之日本社)収録
峠道にポツンと置かれた電話ボックスには奇妙ないわれがあった。深夜にそこを通りかかった者たちの危険な好奇心は、やがて破滅の恐怖へと姿を変え……。「派生した怪談がのちにたくさん生まれた、ある意味テンプレ化した名作」(深津さくら)

【ゲーム】『Home Sweet Home』
Steamほか/2017年/Yggdrazil Group
タイが誇る最恐作品。部屋の雰囲気やお経など、ややJホラー味がありながらも、おまじないや呪術など、日本にない文化も垣間見えて興味深い。「女性の幽霊が手に持ったカッターナイフの刃を出し入れするカチカチ音の不気味さをぜひ体験してほしい」(人生つみこ)

【ドラマ】『ゼム』
製作総指揮:レナ・ウェイス、ミリ・ユンほか/米/2021年/Amazonオリジナル
ノースカロライナから白人ばかりが住むロサンゼルスに越した黒人家族が酷い差別を受けながら、得体の知れない幻影に襲われる。「ホラーでありながら黒人差別の実態が辛く、次のエピソードに進むのも躊躇(ちゅうちょ)するほどです」(DIZ)

【ドラマ】『トリハダ』
監督:三木康一郎/日/2007年~/クロックワークス
フジテレビ系列で放送された人間の恐ろしさを題材にしたドラマシリーズ。幽霊や超常現象は描かれず、日常で誰にでも起こり得る設定になっている。「トリハダ5の第1話『気づくことが恐怖のはじまり』に出演している俳優、笹野鈴々音さんのお芝居がかなり怖いです。メイクなどで造形を作り込んでいるわけではないのに一度見たら忘れられない。彼女の存在が作品に大きなインパクトを残しています」(劔 樹人)

©2007 フジテレビ・ホリプロ

4.0怖

【映画】『私はゴースト』
監督:H・P・メンドーサ/米/2012年
人里離れた一軒家に取り憑(つ)いた亡霊エミリーは霊媒師のシルヴィアの力を借りながら、自らの死や成仏できない背景に関しての秘密を明らかにしていく。「幽霊側の視点で描かれた新しいアプローチの作品です。彼女の閉塞感から追い詰められるような恐怖を感じます」(人間食べ食べガエル)

【映画】『降霊』
監督:黒沢清/日/2001年
穏やかな日々を送る効果音技師の克彦と純子の夫婦だが純子には霊能力があった。ひょんなことから少女誘拐事件の捜査に関わることになるが、それに便乗して私欲を出した彼女は——。「オカルトものかと思いきや、人間の愚かさや闇が恐怖として迫ってくる作品。後味の悪い映画です」(人間食べ食べガエル)

【映画】『 ババドック 暗闇の魔物』
監督:ジェニファー・ケント/オーストラリア/2014年
アメリアはある晩、息子から『ミスター・ババドック』という絵本を読んでほしいとせがまれる。その不気味さに破り捨てるが、いつの間にか絵本は戻ってくる。「親と子の関係性にフォーカスした作りがうまく、絶望感が迫ってきます」(人間食べ食べガエル)

【映画】『メシア・オブ・ザ・デッド』
監督:グロリア・カッツ、ウィラード・ハイク/米/1973年
画家である父の行方を捜すために、アトリエのある海辺の町に来たオーレッティ。やっと見つけた日記には100年前のゾンビ伝説が記されていた。「全体を通して嫌な空気感が漂っていて、じわじわ追い詰められる感じが怖いです」(人間食べ食べガエル)

【映画】『ディセント』
監督:ニール・マーシャル/英/2005年
6人の女性グループは、アパラチア山脈奥地の地下洞窟へ冒険旅行に出かける。しかし落盤によって出口がふさがれ、迷宮のような洞窟に閉じ込められてしまう。そこで彼女たちを待つのは、謎の生物との死闘だった。「即物的な怖さが迫ってくる点が何より醍醐味です」(人間食べ食べガエル)

【映画】『ジェーン・ドゥの解剖』
監督:アンドレ・ウーヴレダル/英/2016年
一家3人が惨殺された家屋の地下から発見されたのは、身元不明の女性の遺体。遺体安置所で遺体の解剖を進めていくにつれ、様々な怪奇現象が発生する。「一つ一つの逃げ道を潰して、絶望感をじわじわ高めていく作劇がうまい作品です」(人間食べ食べガエル)

【映画】『パラノーマル・アクティビティ 第2章/TOKYO NIGHT』
監督:長江俊和/日/2010年
車椅子生活を送る山野家の姉・春花は、ある朝不自然に移動している車椅子を見て違和感を抱く。「悪魔という馴染みのない対象がテーマにもかかわらず、日本の家が舞台になっていることで生々しい恐怖を感じます」(人間食べ食べガエル)

【小説】『改訂 雨月物語 現代語訳付き』
著:上田秋成/1768年
江戸時代に書かれ、日本の怪談の原型を作った上田秋成の短編怪異小説集。岡山の伝承を基に、妻を裏切った男の凄絶な末路を描いた「吉備津の釜」のほか、全9編が収録されている。「虐げられた者たちの怨念が見え隠れするというのは、非常に日本的であると言えます」(門賀美央子)

【小説】『あやし うらめし あなかなし』
著:浅田次郎/1995年
人情味に溢れる作風で知られる浅田次郎が贈る、怪談短編集。全7編のうち「赤い絆」と「お狐様の話」は自身が子供の頃に聞いた話が基。「『お狐様の話』は民間信仰の狐落としがテーマ。凄惨ですが、あえて抑え気味にしている描写が怖くもあり、優しくもあります」(門賀美央子)

【小説】『高原英理恐怖譚集成』
著:高原英理/2021年
ゾンビや都市幻想などホラーの古典的素材を幻想小説に仕上げた中編小説集。「澁澤龍彥さんの後を継ぐといわれる鬼才の集大成。ゴシックカルチャーに造詣が深く、独特な不穏さで高い恐怖度を達成しています。詩歌にも通ずる端正な文章で、純文学のような読み心地のする作品」(朝宮運河)

【小説】『歯車 他二篇』
著:芥川龍之介/1927年
弱りゆく自身の心象風景を基にした、最晩年の芥川がよく表れた本書。表題作のほか「玄鶴山房」「或阿呆の一生」が収録されている。「物語自体は幻想的に描かれていますが、“死のドキュメンタリー”とも取れる。死期が迫ってくる様子をこれほどまでに直視して書くなんて……!」(門賀美央子)

【小説】『丘の屋敷』
著:シャーリイ・ジャクスン/訳:渡辺庸子/1959年/創元推理文庫
スティーヴン・キングの『シャイニング』にも影響を与えたとされる、幽霊屋敷小説の古典であり最高峰。物語は人生に疲れていた女性が、新しい体験を望み、怪奇現象が起こるとされる屋敷での調査に参加するところから始まる。「物理的にではなく、精神的にその屋敷から逃れられなくなる過程に怖さが詰まっています。この小説の構造やストーリーを参考にしている作品は今でも多いですよ」(門賀美央子)

【小説】『パラサイト・イヴ』
著:瀬名秀明/1995年
バイオホラーの金字塔。生物化学者の利明は事故で亡くなった妻の肝細胞をひそかに培養するが、未知の生命体に変貌を遂げてしまう。「すべての人間に共通する“細胞”がモチーフになっている話なので、誰もが怖いと感じるはず。ホラーは苦手だけどSF好きという方にもおすすめ」(門賀美央子)

【小説】『ざくろの実 アメリカ女流作家怪奇小説選』
著:メアリー・ウィルキンズ・フリーマンほか/訳:梅田正彦/2008年
19世紀半ばから20世紀半ばに活躍した女流作家8名の作品を集めたアンソロジー。「古き良きホラー小説を読みたい方へ。“影”に恐怖を感じる方は、メアリー・ウィルキンズ・フリーマン『壁にうつる影』をぜひ」(門賀美央子)

【漫画】『僕が死ぬだけの百物語』
著:的野アンジ/2021年~/小学館
自殺願望のある少年が、一晩に一つずつ怪談を語っていく形式で進んでいくのだが……。「怪談自体がどれも純粋に怖いのですが、話を重ねるにつれて少年の様子が徐々におかしくなってくる。今、6巻まで出ているのですが、なぜ百物語をしているのか、少年の異変の理由は何なのかが明かされないまま進むのが、かなり不気味。百物語がモチーフのホラー漫画は昔からありますが、すごいことになりそうな予感」(緑の五寸釘)

【漫画】「ガンジョリ」
著:いがらしみきお/2007年/『いがらしみきおモダンホラー傑作集 ガンジョリ』収録
雪道で立ち往生した若者が村に迷い込み、殺人鬼に襲われる。「動物漫画『ぼのぼの』の作者が描いたとは思えない、不快感溢れるホラー。殺人鬼よりも恐ろしいのが、ガンジョリという神様。絵柄も強烈に気持ち悪いです」(緑の五寸釘)

【漫画】「にんじん大好き!」
著:松本洋子/1993年/『魔物語』収録
にんじん嫌いの男の子が、神様にお願いしてにんじんが大好きになる、かわいらしい話かと思いきや。「『なかよし』の付録として掲載されて、全国の少女たちを恐怖のどん底に叩き落としたトラウマ作品です。ラスト1ページで、すべてが最悪の世界へと変貌します」(緑の五寸釘)

【漫画】『りんたとさじ』
著:オガツカヅオ/2009年
謎のバイトをしている霊感体質の“りんた”と、彼に振り回されて次々と不思議な体験をする“さじ”。「ラブコメっぽいものの騙されることなかれ。脳を揺さぶる結末に絶句します。怪異の描き方が抜群にうまく、人間が太刀打ちできないものとして、不気味さを際立たせています」(緑の五寸釘)

【怪談】雨宮淳司「直腸内異物」
『「超」怖い話 超‒1 怪コレクション〈Vol.3〉』(竹書房文庫)収録
田舎の診療所で働く看護師の話。ある日、診療所にやってきた少年の腸には歯ブラシが入っていた。次はたわしが。両親に問い合わせると、意外な答えが返ってきて……。「寝る前に現場のイメージが浮かぶほど強烈な怪談です」(吉田悠軌)

【怪談】福澤徹三「孤島の宿」
『怪を訊く日々』(幻冬舎)収録
親戚とともに山口県のある島へ旅行に行ったという女性の話。宿泊先の旅館は古びていて、部屋は汚く、ご飯はまずく、さらに仲居さんの態度も悪い、と散々な場所だった。深夜には隣の部屋から絶叫が聞こえてきて……。「『孤島の宿』はもちろん、『怪を訊く日々』全体を通して、主人公が嫌な気持ちになって希望をも失っていくさまを執拗に描いていきます。身につまされるような嫌な感じが味わえる怪談集です」(吉田悠軌)

【ゲーム】『サイコブレイク』
Steam、Xbox、PS4ほか/2014年
チャプターごとにほぼ別のゲームと言えるほど設定やプレースタイルが変わるゲーム。精神世界を描いたストーリーは難解だが、実際にはとにかく「物理的」な対処を迫られることがグロテスクさにも結びついている。「続編で描かれるアフターストーリーもぜひ」(向江駿佑)

【ドラマ】『ダーマー モンスター:ジェフリー・ダーマーの物語』
製作総指揮:ライアン・マーフィーほか/米/2022年/Netflixオリジナル
実在したシリアルキラー“ミルウォーキーの食人鬼”ことジェフリー・ダーマーの犯行の裏にあった黒人差別の現実を映し出す。「社会派ドラマですが、死体損壊のシーンはグロテスクです」(DIZ)

【ドラマ】『ほんとにあった怖い話』
監督:多数/日/1999年~
現在まで定期的に制作されるフジテレビの人気シリーズ。「お気に入りは、松浦亜弥さん主演の『黒髪の女』。学校を休んで家にいると、窓の外に赤いコートを着た黒髪の女が立っています。誰に降りかかってもおかしくない理不尽な話に、恐怖を感じます」(劔 樹人)

【アニメ】『まんが日本昔ばなし』
企画:川内彩友美/日/1975~94年
注目回は1978年放送の「とうせん坊」。村で馬鹿にされていた男が、観音様に祈り百人力を得る。男は相撲大会で対戦相手を皆殺しにし、山に籠(こ)もるが……。「独特の後味が鮮烈。小林治・須田裕美子という亜細亜堂のコンビによる大胆な映像も魅力です」(藤津亮太)

【心霊ドキュメンタリー】『ほんとにあった!呪いのビデオ』
監督:中村義洋、寺内康太郎、白石晃士ほか/日/1999年~/ブロードウェイ/4,180円(DVD)
「心霊ドキュメンタリーの金字塔。映像を流した後に該当箇所をリプレイするフォーマットは本作が打ち出したもの。1~7巻を手がけていた中村義洋監督の作品はリアリティがあってトラウマに」(皆口大地)

【お化け屋敷】『史上最恐のお化け屋敷 呪われの人形』
東映太秦映画村/京都・太秦/無休(1月中旬にメンテナンス休業あり)
五味弘文監修。撮影中に不運の死を遂げた子役の遺品である人形の呪いを解くべく、来訪者はミッションを課される。「リアルな装置、お化け役の俳優の演技の巧みさ。東映の技術が結集したお化け屋敷」(ジェットコ社会人)

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森 直人

もり・なおと/1971年和歌山県生まれ。映画評論家。著書に『シネマ・ガレージ』(フィルムアート社)など。

【選評】
ホラー映画史において重要な作品を選びました。アトラクション的な面白みのある作品から、身に覚えのない不条理な恐怖にさらされ、我々を絶望のどん底に落とし入れる戦慄の作品まで幅広く。

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人間食べ食べカエル

にんげんたべたべかえる/Twitterでホラー映画を中心に感想を配信する通称「人喰いツイッタラー」。

【選評】
自分にも降りかかってきそうな地続きの恐怖をもたらす作品に高得点をつけつつ、エンタメ性が高かったり斬新な映像表現が楽しめたりと恐怖以外のホラーの魅力が詰まった作品もセレクトしました。

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朝宮運河

あさみや・うんが/1977年生まれ。ホラーや怪談、幻想文学に関する取材や書評を行う。

【選評】
18世紀のゴシックロマンスから250年以上“恐怖の技術”は発展し続けています。鉄板の古典からフェミニズムなど現代的テーマを孕(はら)んだ作品までホラーの広がりと奥行きを感じさせる作品を、境界領域まで含み選びました。

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門賀美央子

もんが・みおこ/1971年生まれ。文筆家、書評家。著書に『ときめく妖怪図鑑』(山と溪谷社)など。

【選評】
選書の観点は以下3点。読み継がれてほしい定番、ゲームチェンジャー的な存在、個人的に好きな“怖い”と感じる作品。セレクトには、いずれかが適合するもの、またすべて揃っているものもあります。

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緑の五寸釘

みどりのごすんくぎ/ホラー漫画コレクター。ホラー漫画専門レーベル〈釘書房〉編集長。

【選評】
ホラー好きから苦手な人まで楽しめるように多様な恐怖を揃え、そして比較的新しいものに重点を置き、今まさに読んでほしい面白い作品を選びました。連載中のものも多いのでリアルタイムで結末を見届けてください。

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吉田悠軌

よしだ・ゆうき/1980年生まれ。怪談師。近著に『中央線怪談』(竹書房)など。

【選評】
入門者向けに「この人の実話怪談ならまずこれを!」「誰でも伝わる恐怖の強度の高さ」の2点に絞って得点付けしました。ただし怪談の恐怖とは一律ではなく、奇妙・畏怖・不安・哀切・憧憬など様々な面があるものです。

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深津さくら

ふかつ・さくら/1992年生まれ。怪談師。著書に『怪談まみれ』(二見書房)など。

【選評】
実話怪談は、普通や常識から飛び出した「怪異」についての語りです。一度聞いたらこの世界が恐ろしいものに変貌してしまうような恐怖を湛えたものの怖さは高めに、恐怖を超える奇妙さを持ったものを低めにしています。

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人生つみこ

じんせい・つみこ/ホラーゲーム専門VTuber。毎日23時頃に実況を配信。

【選評】
皆さんが配信で観たことがあるかもしれない作品を中心に選びました。実際に購入できたり、無料で遊べたりする怖いタイトルも取り上げているので、ぜひ遊んでみていただきたいですね。

見るのと遊ぶのとでは怖さは段違いですから。

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向江駿佑

むかえ・しゅんすけ/ゲーム研究者。専門はビデオゲーム研究と表象文化論。

【選評】
可能な限りバラエティに富んだタイトルを選びました。アクション、ノベル、ゾンビ、クトゥルフなど一通り揃っています。怖さレベル低でもしっかり後味が悪かったりするので、体調を整えてからプレーしてみてください。

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DIZ

ディズ/映画アクティビスト。SNSを中心に映画の魅力を発信し、Twitterのフォロワーは21万人超。

【選評】
グロテスクな描写や、驚かせる系のホラーよりも、人間の怖さや深いテーマを扱った作品を中心に選んでいます。優れた脚本や、美しい美術や役者、高度な演出や撮影技術に酔いしれてください。

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劔 樹人

つるぎ・みきと/1979年新潟県生まれ。〈あらかじめ決められた恋人たちへ〉ベーシスト。漫画家。音楽仲間の怖い話を漫画化した『怪のリディム』(扶桑社)発売中。

【選評】
怖いのは因果応報ではなく、無差別に襲ってくる恐怖。自分にも起こり得るかもと感情移入して観てしまう作品に、高得点をつけました。

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藤津亮太

ふじつ・りょうた/1968年生まれ。アニメ評論家。著書に『ぼくらがアニメを見る理由』(フィルムアート社)など。

【選評】
ゾンビやゴア描写に関してはアニメよりも実写に軍配が上がります。では怖いアニメとは何か。意識したのは後味の悪さです。大人がジワッと怖さを感じる“エグみ”の強い作品を選出しました。

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皆口大地

みなぐち・だいち/1987年埼玉県生まれ。YouTube『フェイクドキュメンタリー「Q」』発起人。

【選評】
いちホラーファンとしてビデオ店に通って観漁(あさ)っていた頃に特にワクワクした作品を中心に選んでいます。映像のクオリティが高く、映し出される恐怖に共感してもらいやすい作品をより高く位置づけています。

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ジェットコ社会人

じぇっとこしゃかいじん/遊園地マニア。ブログ「AIRTIME」で、国内外の数々のライドをレビュー。

【選評】
お化け屋敷は定番のウォークスルー型以外にライド型、サウンドホラー型など様々なので、なるべく満遍なく選定しました。今回選んだ10施設はどれも、造形、演出のレベルが高く、おすすめです。

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