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サングラスに込められた、起業と支援活動への思い。【「社内起業」を選んだ女性たち:eyeforthree長岡里奈】

  • 2024.12.23

会社に勤めながらアイデアを新事業として形にする、社内起業という制度は、会社にとってもメリットが多い。リーダーとなって挑戦する女性たちが目指すものとは?

起業と支援活動への思いが、リサイクル容器からサングラスに。

eyeforthree 代表

長岡里奈(ロート製薬)

1996年生まれ。2019年、ロート製薬に入社し、目薬の商品企画、マーケティングに従事。20年、社内ベンチャー制度「明日ニハ」1期生としてeyeforthreeの活動を開始し、翌年合同会社設立。現在はマーケター、「明日ニハ」事務局、社会起業家と多忙な日々。https://eyeforthree.com/

長岡里奈が社内起業を志した原点は、大学2年次にインドで参加したボランティア活動にある。圧倒的な貧富の差を目の当たりにし、「日本では当たり前の衛生環境がないことにショックを受けて、涙が出ました」

何か行動を起こさなければと、4年次には半年休学してインドへ。リサイクル石けんをスラムの子どもに届ける事業を開始したが、プロジェクトは帰国期限の半年でやむなく終了となった。

この経験から、いずれ持続可能なビジネスを起業したいと考えて就職先に選んだのがロート製薬だった。東南アジアにグループ会社が多く、インドに行ける可能性があること、そして、大学のOB・OG訪問で「長岡さんはロートが合うと思う」と薦められたことも決め手になった。

チャンスは思いのほか早く訪れた。入社2年目の2020年に社内起業制度「明日ニハ」がスタート。同社のビジョンであるウェルビーイングに繋がる事業案を募集するとあり、挑戦を決めた。

自身の関心領域と社内のリソースを結びつけて貢献できることは何だろうと調べるうち、目薬容器の廃棄に工場側も課題を感じていることがわかった。薬の有効成分を保つため、プラスチック製の容器にはUVカット成分が含まれていると聞いた長岡は、サングラスに再生できるのではとひらめいた。

一方、インドでは白内障の手術を受けられずに失明してしまう貧困層が多い。そこから、不要な容器をアップサイクルしてサングラスを作り、その売り上げの10%をインドの白内障患者の手術支援団体に贈るeyeforthree(アイフォースリー)のストーリーが生まれた。

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右上奥:UVカット機能を持つプラスチックをボトルに使用したロート アルガードの目薬。上奥・上:ボトルをフレームに再利用。2色のレンズがあるサステナブルサングラス(写真)のほか、同ブルーライトカット、同リーディングルーペの3種、各¥15,000をラインナップ。

ロート製薬には副業やダブルワークが浸透し、互いの挑戦を応援し合う企業風土がある。長岡の挑戦も多くの社員に支えられた。

特に紆余曲折を経たサングラスの開発では当初、廃プラだけで成形するとフレームの仕上がりが劣るといわれたが、取引先に紹介されたサングラスメーカーが親身になって知恵を絞ってくれた。「私ひとりだったら、協力会社を探すだけで何年もかかったかもしれません」

今後はライフワークと考えるインドの貧困層支援に向け、サングラスを現地生産し、安く提供するための準備を進めていくという。本業のマーケターと起業家の仕事を並走させる苦労はあるが、「もっと周りを頼っていい」、就職して得たそんな気付きが、いまの長岡を支えている。

*「フィガロジャポン」2025年1月号より抜粋

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