1. トップ
  2. 恋愛
  3. こうすれば就労調整しなくても所得はゼロ扱い…FPがパート主婦に授ける103万円の壁を克服する「ウルトラC」

こうすれば就労調整しなくても所得はゼロ扱い…FPがパート主婦に授ける103万円の壁を克服する「ウルトラC」

  • 2024.12.5

衆議院選挙前後からさかんにメディアに登場するようになった「103万円の壁」。就労調整する以外に壁を克服する方法はないか。6人の子育て中のFPが、とっておきの裏ワザを披露する――。

そもそも就業調整とは何かを知る

ちょうどパートやアルバイトの皆さんが就業調整をし始めるこの時期に、103万円の壁の引き上げが話題になっています。年収が一定額を超えると手取りが減ってしまうことから「年収の壁」「○○万円の壁」と言われますが、この壁はいくつも存在します。

民衆は28年後にベルリンの壁を超えた。私たちが「年収の壁」を超えるのはいつの日か。※写真はイメージです
民衆は28年後にベルリンの壁を超えた。私たちが「年収の壁」を超えるのはいつの日か。※写真はイメージです

今議論に上がっているのは103万円の壁で、実際多くの方が収入を103万円以下に抑えるよう就業調整をしています。でも、実は大きな壁は103万円ではないかもしれません。主婦の場合、学生の場合、など立場や就業先によっても本当の壁は変わります。今の手取りを最大化させるためには壁について正しく理解することが大切です。

厚生労働省の令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査によると、配偶者のいる女性パートタイム労働者の21.8%は年収を一定額以下に抑えるために就労時間を調整しているそうです。

【図表】就業調整の理由
厚生労働省「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」より

年収の壁は4種類もある

103万円を超えると次から次へと壁が立ちはだかるのですが、年収の壁には4種類あります。


1つ目はパートやアルバイトをしている本人への課税の壁(100万円、103万円)
2つ目は扶養されている配偶者や親への税法上の扶養の壁(103万円、150万円)
3つ目は社会保険上の壁(106万円、130万円)
4つ目は会社の家族手当の壁(103万円等)

以上の4つです。

4つの壁、それぞれの特徴は何か
1.パートやアルバイトをしている本人への課税の壁(100万円、103万円)

本人への課税の壁は、実は103万円に始まるものではありません。お住まいの自治体によって多少の差はありますが、100万円を超えると住民税が課税されます。ですが、100万円を少し超えて支払う住民税は少額なため、あまり話題にはなりません。この次に来るのが103万円の壁です。103万円を超えるとパートやアルバイトをしている本人に所得税がかかってきます。

2.扶養されている配偶者や親への税法上の扶養の壁(103万円、150万円)

パートやアルバイトをしている方で配偶者や親などの扶養に入っている場合、103万円を超えると扶養されている配偶者や親の税法上の扶養を外れることになります。扶養を外れると配偶者や親の控除が減ることになり、支払う税金が増えるため、世帯の手取りが減ってしまいます。

扶養されている人の年収が103万円を超えると扶養控除、特定扶養控除がなくなります。配偶者の場合は扶養から外れてしまいますが、150万円までは配偶者特別控除が受けられます。150万円を超えると配偶者の配偶者特別控除が徐々に減るため、150万円の壁と言われています。

3.社会保険上の扶養の壁(106万円、130万円)

社会保険上の扶養の壁は130万円、条件を満たすと106万円が壁となります。

年収が130万円または106万円を超えると自身で社会保険に加入しなければいけなくなるというものです。

106万円で社会保険に加入しなければいけなくなるケースは以下の条件を満たした場合です。


(1)勤務先の従業員が51人以上
(2)賃金が月額8万8000円以上(年収換算で約106万円以上)
(3)週の所定労働時間が20時間以上
(4)2カ月を超える雇用の見込みがある
(5)学生ではない

この条件を満たした場合には、年収106万円を超えると勤務先の社会保険に加入しなければいけません。

一方、年収が130万円を超えた場合には原則全ての方が配偶者や親の社会保険の扶養から外れてしまいます。

加入している健康保険によっては3カ月の平均収入が一定額を超えるとその時点から扶養を外れるなどの基準があります。年収が130万円を超えた時点ではなく、超える見込みであることが確認されるとその時点から扶養を外れなければいけなくなることもあるので注意が必要です。健康保険によって判断が変わるため、基準を確認しておくことをおすすめします。

4.会社の家族手当の壁(103万円等)

漏れがちなのが、配偶者や親の会社の家族手当の壁です。会社によっては子どもや配偶者がいる場合に会社独自の手当がでることがありますが、この要件を税法上の扶養としているところが多くなっています。税法上の扶養となると103万円が壁となります。

主婦が子ども、それぞれに「超えてはいけない壁」がまだある
主婦が超えてはいけない壁

103万円の壁を意識されている方が多いのですが、パート主婦が超えてはいけない壁は、実は103万円ではありません。103万円を超えると配偶者の扶養から外れることになりますが、103万円を超えたとしても150万円までであれば配偶者特別控除が受けられるため、103万円を超えた時点では配偶者の税金負担は変わりません。

パート主婦本人の住民税と所得税の負担も103万円を少し超えたぐらいの場合は1000円程度のものなので、そこまで気にしなくてもいいかもしれません。

ただし、社会保険の扶養から外れてしまうと話が変わります。条件を満たし、106万円で社会保険の扶養から外れてしまった場合、社会保険料の負担が約15万円となります。一気に手取りが減ってしまうので、パート主婦が超えてはいけない壁は、106万円または130万円の社会保険上の壁であると言えるのではないでしょうか。

103万円の壁と書かれた木製ブロックを指さす人
※写真はイメージです
学生が超えてはいけない壁

子どもの場合は、配偶者の場合よりもさらに注意が必要です。子ども自身の税金は学生であれば年収130万円までは勤労学生控除の適用を受けることで税金がかからないようにすることができるため、学生も130万円まで大丈夫なのでは、と思われるかもしれません。

しかし、子どもの年収が103万円を少しでも超えると、親の扶養から外れ、親の扶養控除や特定扶養控除がなくなってしまいます。特に19歳から22歳までの子がいる場合には、特定扶養控除として所得税で63万円、住民税で45万円の控除を受けることができますが、この控除がなくなることで親の所得税と住民税の負担が一気に増えてしまいます。例えば親の年収が500万円の場合、約9万円の税金が増えます。親の扶養控除や特定扶養控除がなくなることによる負担増は大きいでしょう。

私自身がそうでしたが、学生の場合は知識も経験もないので、壁と言われてもよくわからず、うっかり超えても許されるのではないかと思ってしまいます。

ちなみに私は学生の頃、103万円を超えてはいけないことは理解していましたが、何カ所かでバイトをすれば大丈夫なんじゃないかと思っていました。怖いですね……。学生が超えてはいけない壁は103万円の税法上の扶養の壁であると言えるでしょう。

壁を超えそうなピンチに今すぐにできる壁突破策

壁を超えそうなときにできる応急処置も知っておくといいでしょう。

税法上の壁は、パートやアルバイトをしている本人の控除を増やすことで、突破することが可能です。扶養の範囲で働いているうちは自分自身の控除を意識したことはないかもしれませんが、扶養されている場合であっても、壁を超えてしまいそうなときは、生命保険料控除など、自分自身の控除を申告することで所得を減らすことができます。

もっとインパクトがあり、パート主婦が活用できるものとしては、小規模企業共済等掛金控除があります。iDeCoの掛け金がこの小規模企業共済等掛金控除に該当します。iDeCoに加入すると、掛金が全額小規模企業共済等掛金控除となり、課税所得を減らすことができます。

税金を払っていないパート主婦はiDeCoによる節税メリットはないと思っていたかもしれません。私も当初はそう思っていました。ですが、考え方を変えると税金を払っていないパート主婦でもiDeCoによる節税メリットを得ることができます。

例えば129万円給与収入を得てiDeCoに年間26万4000円(月2万2000円)拠出します。この場合、iDeCo掛金の26万円4000円は小規模企業共済等掛金控除として全額所得控除されるので、給与所得控除55万円、基礎控除48万円と合わせると所得ゼロとなります。

129万円-48万円-55万円-26万4000円=0円

全額所得控除され、自身の所得税がかからないので思っていたよりも利用価値が高いかもしれません。

注意しなければいけない点は会社からの支給額が130万円(106万円で社保加入の条件を満たす場合は106万円)を超えないようにすることです。全額所得控除されるならiDeCoの掛け金上限額は月2万3000円なので、年間27万6000円拠出すれば、130万6000円稼いでも大丈夫なのでは? と思うかもしれません。でも、この場合社会保険上の扶養を外れてしまうので要注意です。社会保険上の扶養の判断と税法上の扶養の判断基準は異なり、控除される前の支給額によって判断されます。

結局今使えるお金が増えるというよりも将来のための貯蓄にはなってしまいますが、NISAで運用をしているようなら、iDeCoの活用も検討してみてください。ただし、iDeCoの加入には2カ月程度かかるため、今年活用するのは難しいです。来年以降活用したい場合には、今から準備しておきましょう。生命保険料控除の活用であれば、12月までに保険料の支払いをすれば今からでも間に合います。

また、社会保険上の扶養の壁についても、一時的に130万円の壁を超えてしまった場合であれば、雇用先の事業主が所定の証明書を提出し、一時的なものであると認められれば、扶養を外れずに済みます。


まとめ

年収の壁を正確に理解するのは難しいものですが、子どもがバイトを始める際にも必要な知識であると思います。今回話題になったことで、わが家でも中学生の子どもたちからいろいろと聞かれて説明しましたが、税金や社会保険について、特に実生活で必要な「年収の壁」については、中学高校の家庭科や政治経済などでもっとしっかり教えたらいいのではないかと思います。

本来は高度経済成長期である1961年に農業者・自営業者に比べて税負担の重いサラリーマン世帯の負担を軽くするために導入された控除が、今は“壁”となってサラリーマン世帯を悩ませる原因になっています。

厚生労働省が就業調整を行う理由を調査していましたが、根本にあるのは、頑張って働いて得た収入を減らしたくない、手取りを最大化させたいということでしょう。

支えあう社会のしくみも理解しつつ、みんなが気持ちよく働けて、生活が豊かになる使い方ができるような制度になってほしいものです。

橋本 絵美(はしもと・えみ)
はしもとFPコンサルティングオフィス 代表
6人の子どもを持つママFP&お片づけプランナー。福岡県出身。小さな頃から「大家族のママになりたい!」という夢を持ち、慶應義塾大学商学部卒業後、学生時代から交際していた夫と結婚。現在、中学2年生から3歳まで2男4女の子育て中。

元記事で読む
の記事をもっとみる