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「食べ物の消化にかかる平均時間は?消化を良くする方法は?」科学者が解説!

  • 2024.12.23

ピザやケールサラダを消化するのにかかる時間は、どのくらいだと思う? じっくり考えることは少ないかもしれないけれど、消化は私たちが機能するために必要なエネルギーと栄養を供給する大事なプロセス。しかも、消化は想像以上に複雑で、想像以上の時間を要する。

この記事では、消化の過程で起こること、消化にかかる時間、正常な消化を維持するための方法を具体的に説明しよう。

消化とは?

所要時間について話す前に、まずは消化という活動自体を理解しよう。間単に言うと消化とは、食べ物と飲み物を分解し、その栄養素が腸壁から血中に吸収されるようにする体のプロセス。血流に乗った栄養素は全身に運ばれて、体のエネルギーになったり、成長や修復のために使われたり、近い将来のために蓄えられたりする。

消化器系

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(左上から)肝臓、胆のう、十二指腸、大腸、虫垂、直腸

(右上から)食道、胃、膵臓、小腸、肛門

消化は食べ物が口に入った瞬間から始まる。口に入った食べ物が歯によって砕かれると、唾液に含まれる酵素が糖質の分解プロセスを開始するのだ。

そこからは胃や腸を含む全身の機能が連携し、体の正常な働きを維持するために必要な栄養素を抽出する。

消化の過程で起こること

消化には機械的作用と化学的作用の両方が関係している。前述の通り、消化は口の中で始まる(咀嚼によって食べ物が細かく砕かれる)けれど、本格的な消化プロセスは、酸と酵素が参入し、胃と腸の食べ物を分解することで始まる。

筋肉も重要な役割を果たしており、蠕動運動と呼ばれる波のような動きで、消化管内の食べ物を先へ先へと移動させる。蠕動運動は食べ物を消化液と混ぜ合わせ、体に吸収されやすいよう、さらに細かく分解する上でも役立つ。

消化器系の各部位にはそれぞれ専門的な役割があるけれど、食べ物の栄養素の大部分は小腸(テニスコートほどの表面積を持つ長さ6mの管)で血中に取り込まれる。

小腸はテニスコートほどの表面積で栄養を吸収している

残った食べ物は大腸に送られる。大腸では食べ物の水分が吸収されて、最終的な老廃物は排泄に回される(便になる)。また、腸内微生物叢(100兆個の非常に小さな微生物の集合体)が躍り出て、体が消化することのできない食物繊維を分解し、私たちの健康全般をサポートする重要な分子を産生する。

食べ物の消化にかかる時間は?

食べ物が消化器系を通過する(口からお尻に到達する)には、14~58時間かかる。英キングス・カレッジ・ロンドンで私たちが行った実験では平均28.7時間だった。消化スピードが速すぎたり遅すぎたりして通過時間が14~58時間の枠に入らない参加者は、便秘や下痢といった消化器系の問題を抱えている確率が高かった。

食べ物が消化器系の各セクションで過ごす時間は、食べ物の種類によって異なる。例として、胃における滞在時間は、食べ物の種類によって15分~4時間と幅広い。

食べ物の栄養の大半が吸収される小腸では滞在時間が1~5時間と長くなり、消化の最終ステージである大腸では、水分の吸収と排泄物の準備が完了するまで、食べ物の老廃物が12~24時間とどまるとされている。

自分の消化スピードを知りたいときは? 便になっても目立つもの(スイートコーンや私たちが実験で使ったような濃い青色に染めたマフィン)を食べて、それが便として出てくるまでの時間を調べれば、自分の消化器系がどのくらいのスピードで機能しているかが分かる。

食べ物の種類によって、消化スピードはどう変わる?

胃の中では、肉や野菜、穀物が別々に処理されるわけじゃない。むしろ、全部一緒にすりつぶされてドロドロになり、全部まとめて消化される。ただし、そのスピードは私たちが何を食べるかで変化する。

糖質(特に精白パンや甘いお菓子のような単純糖質)は、それが血中に取り込まれるのを遅らせる栄養素(タンパク質、脂質、食物繊維)と一緒に摂取しない限り、かなり速く吸収される。

逆に、タンパク質と脂質は分解に多くの時間と酵素を要するため、それほど早く消化されない。また、豆類、全粒穀物、野菜やフルーツなどに含まれる食物繊維は、食べ物を“かさ増し”して消化器系を適切な速度で通過させ、蓄積した老廃物を一掃し、お通じを良くするという重要な役割を果たしている。

でも、消化は早ければ早いほど良いというわけじゃない。食べ物の動きが早すぎると大事な栄養素を吸収できない可能性があるし、遅すぎると腹部の不快感や便秘につながる可能性があるので、目標はその中間。

消化スピードには飲み物も関係しており、アルコールやカフェインは消化を早めてトイレを近くする。

健康的な排便頻度は? 1日3回~週3回とされている。

消化スピードに影響を与える要素

消化スピードに影響を与えるのは、食べ物の種類だけじゃない。

例えば代謝の関係で、生まれつき消化が早い人もいる。また、運動は消化を早め、ストレスは消化を遅らせたり早めたりする。ホルモンバランスの変化も消化に影響を与え、生理中には下痢を引き起こすことがある。なお、生理中に下痢になるのは、腸などの筋肉の収縮を促進するプロスタグランジンというホルモンの分泌量が増えるから。

睡眠中は消化が遅くなる。でも、完全に止まるわけじゃない。筋肉が弛緩して消化液の分泌量が減少するため、食べ物の滞在時間は長くなるけれど、食べ物の分解と栄養素の吸収は、私たちが寝ている間も継続される。

消化を良くするためのアドバイス

油を差した機械のようにスムーズな消化を維持したいという人は、次のシンプルなアドバイスを参考にしてほしい。

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1. 水分を補給する

水は消化器系の親友と呼べる存在で、食べ物の分解、栄養素の吸収、お通じの改善に役立つ。

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2. 食物繊維の摂取量を増やす

豆類、葉物野菜、全粒穀物、ベリーなどに含まれる食物繊維は腸にとっての大ヒーロー。食べ物の“かさ”を増やし、消化管を通り抜けやすくすることで便秘を防ぐだけでなく、腸内の善玉菌のエサにもなる優れモノ。

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3. 体を動かす

運動は、筋肉づくりだけでなく、正常な消化の維持にも役立つ。食後30分以内に散歩をすると、腸の筋肉が刺激されて食べ物の移動が早くなるため、お腹の張りが軽減する。

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4. 食事を抜かない

体内時計は規則正しい生活を好むので、毎日同じ間隔で食事をすると、体が消化の準備をしやすくなる。反対に食事を抜くと体内のバランスが崩れてしまい、便秘などの消化器系の問題や食べすぎにつながることも。

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5. ストレスを管理する

脳と腸は密接につながっているので、ストレスは消化に大打撃を与える。実際、不安を感じているときは、消化を早めるストレスホルモンが分泌されるため、下痢になりやすい人もいる。深呼吸、ヨガ、ちょっとした散歩などのリラクゼーションテクニックで心を落ち着かせ、腸の健康を維持しよう。

※この記事はイギリス版ウィメンズへルスからの翻訳をもとに、日本版ウィメンズヘルスが編集して掲載しています。

Text: Dr Emily Leeming Translation: Ai Igamoto

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