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紫式部『源氏物語 二十九帖 行幸』あらすじ紹介。源氏と内大臣の腹の探り合い。玉鬘は念願の実父との再会を果たす

  • 2024.12.4

平安時代に執筆された恋愛物語として有名な『源氏物語』ですが、古典作品であるため難しく感じる方も多いかもしれません。どんな物語なのかを知ることができるよう、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第29章「行幸(みゆき)」をご紹介します。

『源氏物語 行幸』の作品解説

『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

「行幸」でついに内大臣に、玉鬘(たまかずら)が内大臣の娘であることを打ち明ける源氏。本当は玉鬘が内大臣の娘と知っていて囲い込んだにもかかわらず、玉鬘が自分に近づくためにそのことを隠していて知らずに引き取ってしまったと説明し、自分は悪くないと口八丁に言葉を並べます。光源氏の狡猾な一面が描き出されており、人間らしい源氏像が浮かび上がります。内大臣も源氏と玉鬘の関係を内心では疑いながらも顔には出しません。ベテラン政治家同士の心理戦は今も昔も変わらないのかもしれませんね。玉鬘十帖も終盤に差し掛かり、念願だった実父との再会を果たした玉鬘のシンデレラストーリーはハッピーエンドに向かうのでしょうか。

これまでのあらすじ

秋の花盛りの六条院を野分(台風)が襲った。南の御殿では風が吹き荒れる中、傷んだ花を眺める紫の上を偶然垣間見た夕霧は、その美しさに心を奪われた。その後、源氏に付き添って六条院の女君の見舞いに回った夕霧は、父娘という関係でありながらあまりに馴れ馴れしく寄り添う源氏と玉鬘の姿に驚く。

『源氏物語 行幸』の主な登場人物

光源氏:36~37歳。玉鬘への恋心を抑えることができず、玉鬘を困らせる。 内大臣:以前の頭中将。源氏の若い頃からの友人でライバル。故葵の上の兄。 紫の上:28~29歳。源氏の妻。六条院の南の御殿に住んでいる。 冷泉帝:18~19歳。故桐壺院と藤壺の子ということになっているが実の父は源氏。 秋好中宮:27~28歳。冷泉帝の后。源氏の養女であり、里下がりをしている。 玉鬘:22~23歳。源氏に引き取られた養女であるが、実の娘ということになっている。 夕霧:15~16歳。故葵の上と源氏の実子。生真面目な性格。 柏木:21~22歳。内大臣の息子。玉鬘に求婚している。 大宮:故葵の上、内大臣の母。

『源氏物語 行幸』のあらすじ

源氏は相変わらず玉鬘への恋心を抑えられずにいたが、ふたりの関係が噂になるのも気がかりだった。また、玉鬘が実の娘であるという事実を内大臣が知ったら、源氏を正式に婿として扱い、厄介なことになるとも思案していた。

12月、大野原への行幸(みゆき・帝の外出)があり、世間は大騒ぎしてその様子を見物した。玉鬘も出かけていき、冷泉帝の他を寄せ付けない端麗な姿に心を惹かれた。そこで初めて父・内大臣や、玉鬘に求婚する者の一人である髭黒大将も見た。父は男盛りで華やかな人だと感じたが、髭黒大将は優美な装いではあるが色黒で髭が多く気に入らなかった。源氏から勧められている宮仕えも面白そうだと思い始めていたが、決めかねていた。

まずは玉鬘の裳着(もぎ・女子の成人)の儀を行い、その際に内大臣に真相(玉鬘が内大臣の娘であること)を打ち明けようと考えていた源氏は、内大臣に腰結役(こしゆいのやく・腰から下にまとった衣の紐を結ぶ役で裳着における重要な役割)を依頼したが、大宮(内大臣の母)の病気を理由に断られる。この機を逃すわけにはいかないと、大宮の邸に出向き、内大臣との仲を取り持つよう依頼した。訳あって引き取った娘が内大臣の娘であるということが判明したので内大臣に打ち明けたいとごまかして大宮に説明すると、大宮は内大臣に「話したいことがあるようなので三条宮(大宮の邸)に来てほしい」という手紙を送った。内大臣は、夕霧と雲居雁の結婚話なのだろうと断るわけにもいかず、身なりを整えて三条宮へと向かった。

久しぶりの対面でぎこちない源氏と内大臣だったが、昔話を語り合ううちにわだかまりも解けていったように見えた。酒も進み、源氏はそれとなく玉鬘のことを打ち明けた。探し続けていた娘が見つかり、内大臣は涙を流した。ふたりとも泣いたり笑ったりしながら語り合い、上機嫌で帰っていった。しかし、内大臣にとってはあまりに急な話であり不審に思わずにはいられない。玉鬘は源氏の愛人なのではないかと疑ったが、源氏の意向に背くわけにはいかないと考えた。

裳着は盛大に執り行われ、多くの人々からお祝いの品が届けられた。末摘花も時代遅れな贈り物と祝儀に不釣り合いな歌を贈り、源氏を赤面させた。腰結役の内大臣は御簾の中でほのかな光に照らされる玉鬘の顔をちらりと見て歌を詠むが、玉鬘は気後れして返歌することができず、源氏が代わりに応えた。

世間ではこの出来事が話題になり、近江の君の耳にも入った。弘徽殿女御と柏木、弁少将(いずれも内大臣の子)の前で、玉鬘へのやっかみをまくしたて、自分も宮仕えがしたいと訴えた。女御は閉口していたが、柏木・弁少将は近江の君をからかった。父・内大臣も近江の君を呼び寄せて相談に乗って助言したが、バカにされているとも知らず近江の君は喜んでいた。

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