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「大学受験本番で全問1問ズレマークの失態」からこうして立ち直った…発達障害の女性がつぶやく8文字の言葉

  • 2024.12.4

ADHDやASDといった発達特性を持つ人の中には「必要以上に落ち込みやすい」人も少なくない。自身も発達特性を持ちつつナレーター、声優として活躍する中村郁さんは「私たちはさまざまなミスやトラブルで落ち込みすぎたり、心無い人の言葉に傷ついたりする場面が多い。そんなときに心を守り、うまく乗り越えるための工夫が必要だ」という――。

※本稿は、中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

屋外の階段に座り込んでいる悩まし気な男性
※写真はイメージです
人生にトラブルはつきものだと心得る

私は凪いだ海のような穏やかな毎日を過ごしたいと思っています。しかし、次から次へとさまざまなトラブルを自ら起こしたり、引き寄せたりしてしまいます。これまでさまざまなミスを繰り返してきましたが、一番ショックだったのは、センター試験の現代文でマークシートをすべて1つずつずらして塗りつぶしてしまったことです。

うっかりミスはたくさんありましたが、これは翌日まで寝込むほど落ち込みました。しかし、私は翌日の夜、悔し涙を流しながらこう呟きました。

「このパターンな!」

私はわかっていたよ、我が人生にこんなパターンもあることを。つまりセンター試験を捨てろということだ。よっしゃ、捨ててやろうじゃないか。真夜中に自分にこう言い聞かせ、私は私大の試験へ頭を切り替え、精神を集中させたのでした。

「このパターンな!」。

1つずれマーク事件で、うら若き高校生の私が身に付けた言葉です。若き時代に身に付けたこの術で、私は今もさまざまな場面を乗りきっています。

昨年、私はスピーチコンテストに出場しました。一次予選はZoom審査。しっかりと練習し、スピーチに臨みましたが、開始直後、突然Zoom画面が真っ暗。私は恐ろしいほどの機械音痴なので、こうなるともうお手上げです。はたして、相手に私が見えているのか、それすらわかりません。

言われてとても辛かった「あなた、本当に使えないね」

しかし私は、「このパターンな!」と呟き、事態を客観視。そのままスピーチを続けました。審査員に聞こえていようが聞こえていまいが最後までやりきろう、と決めたのです。

この判断は正解でした。画面は真っ暗でしたが声だけは最後まで聞こえていたそうで、トラブルにも動じずやりきったその姿勢が評価点に繋がり、予選を通過することができました。ちなみにこのスピーチコンテストでは、本選で優勝することができました。

仕事において、予期せぬ要求をされることもあれば、予期せぬトラブルが起きることもあります。そんなときこそ、「このパターンな!」と呟き、自分自身に起きた状況を一度冷静に客観視してみてください。不思議とどんなトラブルにも、めげずに立ち向かうことができますよ。

私が言われてとても辛かった言葉で、「あなた、本当に使えないね」という言葉があります。

自分の存在が役に立たないと言われて、申し訳なさと悲しさと情けなさで消えてしまいたくなったことがあります。みなさんも、もしかしたらこのような言葉を投げかけられた経験があるかもしれません。

発達障害を持つ人は、その特性ゆえに、仕事場の人間関係で辛い経験をしている人がとても多いです。いじめられた経験がある人もたくさんいます。今現在、とても辛い状況にある方もいるでしょう。

バラバラのキーキャップ
※写真はイメージです
あなたをピカピカに磨く魔法の言葉

人間関係のトラブルほど、心を蝕むものはありません。あなたを思って注意してくれる人の言葉は受け入れるべきですが、あなたの人格を否定するようなことを言われたとしたら、ただちにその人からは離れるべきです。

想像力に欠け、相手の立場に立って物事を考えることのできないしょうもない人の言うことなど、気にしなくて構いません。

アメリカの俳優で、作家でもあるクリス・コルファーの名言を紹介します。「何度も何度も傷つけられたら、相手を紙ヤスリだと思えばいい。多少かすり傷は受けれど、自分はピカピカになり、相手は使い物にならなくなる」

辛い経験は、必ずあなたの力になります。辛い経験をしてきた人は、辛い人の気持ちがわかります。傷ついている人の存在に気づくことができます。優しく寄り添える人になれます。紙ヤスリより、よっぽど強くて優しい心を持っています。

私たちは十分に傷ついてきました。もうピカピカに磨かれているのです。もしあなたが今、誰かに攻撃されているとしたら、あなたがピカピカに光っているから、眩しくて、羨ましくて、相手は攻撃してくるのかもしれません。

あなたを攻撃する人には、「磨いてくれてありがとう」と心の中で呟きましょう。ただの紙ヤスリは、そのうちボロボロになっていくので、放っておきましょう。

自己完結するときに使える最高の言葉

生きていたらショックな出来事に遭遇することもありますよね。私も最近、ナレーションのオーディションに3回連続落ちて、少し元気がありません。

このようなときに、ショックな出来事を真っ向から受け止めると、心は壊れてしまいます。そうならないために、私はこう呟くようにしています。「萎えるわ〜」。「萎える」という言葉を聞くと、皆さんはどのようなイメージを持たれますか?

私は、植物がしおしおにしおれて、葉が垂れて元気がなくなっている非常にかわいそうな状態が目の前に浮かびます。しかしまだ枯れてはいません。枯れてしまったらそこで終わりですが、萎えている状態の植物は、水を与えたらまた復活します。

なので私は、あまりにもショックなことがあったときや、とてつもなく腹が立つことがあったとき、深く傷ついたときなどには、復活する余地のある状態の「萎えるわ〜」という言葉を口にするようにしています。

「私は大丈夫」とか「ピンチはチャンスだ」とか、プラスに変えることができたらいいのですが、そこまで持っていけないくらい気持ちが落ち込んだときは、「萎えるわ〜」がいい。「萎える」という言葉には不思議な力があり、ひどく腹が立っていても、どんなに悲しいことがあっても、一旦心を逃がすことができるのです。

「腹立つわ〜」と言ってしまうと怒りの感情に飲まれてしまいますが、「萎えるわ〜」だと脱力感と共に不思議と穏やかな気持ちになります。自己完結するための手段として用いるには「萎える」は最高の言葉なのです。

カレンダーに、大きな付箋で「お休み」
※写真はイメージです
あえて鈍感でいることも大切

この言葉を口にするときには、顔の筋力もすべて脱力し、どこにも力を入れずに、「ら行」さえ言えないくらいのだらけた滑舌で「なえぅわぁぁぁ」と、へなへな感を最大に出しながら言うのがポイントです。

しおしおに萎えた植物になりきり、少し休みましょう。大丈夫です。萎えても必ず復活できます。枯れていないのですから。

「鈍感」と聞くと、どのようなイメージを持たれますか? 人の気持ちがわからない、気が利かない、空気が読めない……そんなマイナスな言葉が連想されますよね。しかし、私は、「あえて鈍感でいる」ことも大切だと思っています。

発達障害を持つ私たちは、日常生活の中で些細なことに傷ついたり、深く落ち込んでしまったりするところがあります。これはミスにより叱られた経験などが多くて、自己肯定感が低くなってしまっていることが原因としてあげられます。何か問題が起きたときに、過去の記憶がフラッシュバックしてしまうのです。

鈍感であることは、自分の心を守ることに繋がります。何か物事が起きたとき、それを重要なこととして捉えるのではなく、あえて「たいしたことないぞ」と捉えるようにしてみてください。

誰かから何かを言われて傷ついたとき、深く考えないようにしてください。なんでそんなことを言うんだろう、とさまざまな憶測をすることはやめましょう。

うまくできなくて叱られてしまったとき、「知らんがな」と心の中で呟いて受け流してください。私たちは自責の念に駆られると、本来できるはずだったことまでも、できなくなってしまいます。

柳の木のようにそよそよと揺れながら生きよう

誰かから嫌われていると知ったとき、なぜ嫌われたのか深く考えるのはやめましょう。へーそうなんだ、とあっさり切り捨てましょう。人の気持ちなど、自分の力ではどうすることもできません。生きていれば嫌われることもあります。嫌われたっていいのです。あれこれ考えるとどんどんよくない方向に思考は向いていき、私たちは闇に落ちてしまいます。

何かにつけて自分と他人とを比べてしまう人は、SNSの情報にも、鈍感でいることを心がけましょう。そして辛くなったときは、そっとSNSを閉じましょう。

あの人鈍感だよね、と思われても構いません。本当のあなたはとても優しくて繊細な人です。繊細すぎる人は自分自身を責めてしまいやすいのです。完璧な人間などこの世にはいません。何が起きても「へーそうなんだ」くらいで丁度いいのです。

私が生きる上で大切にしている考え方。それは「柳のように生きる」ことです。「柳に風」という言葉があります。辞書で調べると、このようにあります。「柳が風に従ってなびくように逆らわないこと。また逆らわずにうまく受け流すこと」

私は発達障害の特性からか、自分の意見を曲げることができず、何度も人とぶつかってきました。ディレクターさんと関西弁の発音について喧嘩になり、仕事を下ろされたこともあります。居酒屋で知らない人と、くだらないことで口論になったことも何度かあります。なぜ、自分はうまく生きられないのだろう。ずっとそう悩みながら生きてきました。

そんなとき、柳に風、という言葉と出会いました。風が吹いたらその風に身を任せて、そよそよと揺れる。そのほうが楽に生きることができます。風に逆らって無理をしたら疲れてしまいます。そよそよと風に揺れる柳のように、いちいち反発せず、風に身を任せて、人の意見をうまく受け流していくようになってからというもの、人間関係のトラブルがずいぶん少なくなりました。

歌川広重「東都名所 両国夕すずみ」より
※写真はイメージです
他人の意見をうまく受け流す術

また、「柳に雪折れなし」という言葉もあります。柳の枝はよくしなるので、雪が降り積もっても振り落として、枝が折れることがないのです。暴風が吹いてもへっちゃら。堅い木ほど、雪が降り積もったらポキッと折れます。強風で折れてしまうこともあります。

中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)
中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)

柳の木のように、そよそよと風に揺られながら、決して折れることのない、しなやかな強さをイメージして生きることで、発達障害の特性ともうまく付き合えるようになりました。

仕事場でも、プライベートでも、自分の置かれている立場や境遇に反発するのではなく、まずは身を任せて見ましょう。そよそよとなびいてみましょう。他人の意見をうまく受け流しながら、心の中には決して折れない強い信念を持って、目の前のことに向き合いましょう。

柳は一見弱く見えますが、本当はどんな大木よりも強いのです。普段からその強さを表に出す必要はありません。柳のようなしなやかな強さを身に付けて、にっこり笑って生きていきましょう。

中村 郁(なかむら・いく)
ナレーター、声優
注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)併存の診断を受けた発達障害当事者。幼小時より過剰に集中しすぎてしまう「過集中」に悩まされる。この特性が災いし数々のアルバイトをクビになり「社会不適合者」の烙印を押されるが、偶然が重なりナレーター事務所に所属。もう絶対にクビになりたくないという強い想いから、発達障害を持ちながらも大きなミスをしないための数々のライフハックを生み出した。現在は、全国ネット番組のナレーションを多数務めつつ、発達障害の理解を広める執筆、講演活動を精力的に行う。著書『発達障害で「ぐちゃぐちゃな私」が最高に輝く方法』(秀和システム)。

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