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【鶴田真由さんインタビュー】腹を決めて向き合った後は人生が好転していく

  • 2024.12.5

鶴田真由さんが出演するドラマ『連続ドラマW 誰かがこの町で』は、集団の同調圧力がもたらす恐ろしさを生々しく描いた社会派ミステリー。作品のどんな部分に恐ろしさを感じ、どんなメッセージを受け取るのか……。物語のカギを握る弁護士役を演じた鶴田さんに、作品のテーマや役へのアプローチについて尋ねました。

いい作品であればあるほど、多くの要素が散りばめられている

「ドラマは観る人の“鏡”。観る方がどこにフォーカスして、どこに感情移入するか。それによって、受け取るメッセージも変わると思います」

鶴田真由さんがそう話すのは、12月8日よりWOWOWで放送・配信される『連続ドラマW 誰かがこの町で』のこと。とある新興住宅地を舞台に、集団による同調圧力と忖度がもたらす恐ろしさを描いた社会派ミステリーです。

鶴田さんが演じるのは、横浜で法律事務所を構える弁護士・岩田喜久子。彼女のもとに、大学時代の友人の娘だと名乗る若い女性が訪れ、「家族を捜してほしい」と依頼されたことから、ある町での家族の失踪事件と、同じ町で過去に起きた少年誘拐致死事件の真相が明らかになっていきます。

「ドラマで描かれている人間の同調圧力も恐ろしいですし、それが集団になればなるほど膨れ上がっていく怖さもある。一方で、『自分が犯してしまった罪といつかは向き合わなきゃいけないんだ』と感じる方もいるかもしれません。シンプルに、ミステリーとしての構成や展開の面白さで見る方もいるでしょうし。いいドラマであればあるほど、たくさんの要素が散りばめられているので、ドラマの受け取り方は人それぞれで楽しんでいただければなと思います」

「自分と向き合った」という実感が何かを変えていく

ドラマの舞台となる「福羽(ふくは)地区」は、過去に起きた事件をきっかけに“安全で安心な町”を掲げ、住民らが過剰な防犯意識を抱くようになった新興住宅地。よそ者を排除したり、住人にも厳しい生活ルールを強要したり……といった同調圧力が次第にエスカレートしていくさまは、フィクションでありながらも、実際にどこかの町で起こってもおかしくないと思わされる怖さがあります。

「人間は同調することで空間になじもうとする因子みたいなものを、生き延びる手段として持っているのかなと思いましたね。でもそれが間違った方向に行くと、強い集団であるほど、その間違いが大きくなっていく。しかも集団の中にいる人はだんだん麻痺してしまって、間違ってることすらわからなくなる。動物だって集団で生き延びるという本能は持っているはずなのに、間違った方向には行かないですよね。人間だけが間違った方向へ進んでしまうのはなぜなんだろう、人間ってややこしいな……と思ってしまいます」

喜久子をはじめとするそれぞれの登場人物たちが、過去のあやまちや自分のついた嘘をどう清算していくか……というのも、本作のテーマ。大なり小なり、誰もが後悔を抱えて生きているからこそ、自分を投影しながら観る方も多いのではないでしょうか。

「みんなが黒い染みのようなものを持っていて、他人はごまかせても、自分はごまかせない。でも人生ってプラマイゼロでできているから、結局はどこかで向き合わないといけないんですよね。どんなにつらくても、どんなに痛くても、どんなに怖くても、ちゃんと腹を決めて向き合った後は人生が好転していくと思います。何よりも自分が気持ちいいと思うんです。もちろんやってしまったことは消えないけれど、向き合ったということが何かを変えていくと思うので」

慌ただしかった2024年。でも、来年も落ち着いた気持ちで

多くの作品を経験してきた鶴田さんですが、本作の喜久子のように「出番は多くなくても、物語のカギとなる役」が最も難しいと話します。

「主役の場合は撮影が進むにつれて役としての疑似体験が増えていくので、物理的に大変なことはあっても、お芝居は作りやすいと思うんです。でもその積み重ねがない場合、役の人格や背景を自分で埋めていく必要があるので、そこが難しいんですよね。今回のドラマは過去の事件を説明するせりふが多かったのですが、その説明を裏付ける感情の動きまでしっかり表現しないといけない。ただ原作の小説を読むと、喜久子が自分の行為をどれだけ重く受け止めているか、細かく描写されていたんです。それによって、台本には書かれていない記憶の疑似体験ができたと思います」

対して、原作のようなヒントがない場合は、想像でその「間」を埋めていかなければならない、と鶴田さん。

「こういう人なんじゃないか、こういう出来事があったんじゃないか……と想像する。たとえば台本には書かれていないけれど、一緒に働いている同僚を好きっていう設定にしてみよう、とかね。以前、ドラマ『相棒』に、反町隆史さんが演じる刑事の昔なじみという役でゲスト出演したことがあったんです。そのとき監督に『このふたり、前に付き合っていたような感じがするよね?』と言われて。確かに若い頃に相手役として反町さんと共演したこともあったので、時間が経っても役の上でそういう雰囲気が出たのかも、と思って。長く続けていると、そういう面白いこともあるんだな、と感じました」

まもなく2024年も終わろうとしていますが、鶴田さんにとって今年1年は、「なんとなくバタバタした年だった」そう。

「ようやくコロナ禍が収束して、世の中が活発に動き始めて。そういう時代の流れに自分が影響されて、よくも悪くも慌ただしかった気がしますね。そのバタバタした感じがきっと来年も続くんだろうなあ、という予感もあります。でも、そんな中でも私自身は淡々と、落ちついた気持ちで過ごしたいと思っています」


PROFILE:

つるた・まゆ 1988年俳優デビュー。その後、ドラマ、映画、舞台、CMと幅広く活動。凛とした力強さとしなやかさを併せ持つ演技で注目され、1996年には『きけ、わだつみの声』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。近年は、ドラマ『個人差あります』『らんまん』『自転しながら公転する』、映画『ノイズ』『やがて海へと届く』『かぞく』など話題作に出演。旅番組やドキュメンタリー番組の出演も多く、2008年には第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)の親善大使の委任を受ける。著書に旅エッセイ『神社めぐりをしていたらエルサレムに立っていた』(幻冬舎)、写真集『Silence of India』(赤々舎)など。

鶴田真由さん出演ドラマ 『連続ドラマW 誰かがこの町で』

佐野広実の同名小説を、『シティハンター』『ストロベリーナイト』シリーズの佐藤祐市監督により実写化。2001年、埼玉県の新興住宅地・福羽地区で6歳の少年が殺害される。犯人が捕まらないなか、住民の防犯意識が異常なまでに高まった同地区は、“安全で安心な町”を標榜するように。そして事件から23年が経ち、弁護士・岩田喜久子(鶴田真由)のもとに望月麻希(蒔田彩珠)と名乗る女性が訪ねてくる。麻希は喜久子の大学時代の友人・望月良子(玄理)の娘で、自分の家族がどうなったのか知りたいと訴える。喜久子からこの件を託された調査員の真崎雄一(江口洋介)は、かつて望月一家が暮らしていた福羽地区へと向かうが……。

12月8日よりWOWOWで放送(日曜22時〜)。WOWOWオンデマンドでは第1話の放送・配信後に全話を一挙配信。
第1話まるごと無料配信中:https://youtu.be/uFsYXe3j0Bk

 

撮影/白井裕介 スタイリング/平井律子 ヘアメイク/伏屋陽子(ESPER) 取材・文/工藤花衣

ニット¥48,400、ブラウス¥48,400、スカート¥42,900/すべてスズキ タカユキ(03-6821-6701)、リング¥99,000/リニエ(linieinfo@gmail.com)、ピアス¥14,300/アペルディエム(アテンション・ジャパン・プロダクツ 03-5724-3730)、ブーツ/スタイリスト私物

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

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