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何度も足しげく通う営業は必要ない…元リクルートの敏腕が最終的に行きついた「顧客訪問のベスト回数」

  • 2024.12.4

商談を成立させるために、営業はどれくらい顧客のところに通うべきなのか。元リクルートの竹内孝太朗さんは、「足しげく何度も訪問すればいいというものではない。商品の内容や市場も鑑みつつ、“最低何回行けば売れるのか”を理論的に分析することが必要だ」という――。

※本稿は、竹内孝太朗著『営業スキル検定』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

顧客訪問のベストな回数

私は「3回目の商談でクロージングする」のがベストだと考えています。

必ずしも3回目でクロージングしなければならないというわけではありませんが、3回目を目標にクロージングすることをまず考えるのがよいというのは、これまでの私の営業経験に基づく裏づけがあるのです。

私のキャリアは、リクルートのカーセンサーという中古車関連事業からスタートしました。中古車の領域は、既存顧客が8~9割で、新規顧客は1~2割という世界です。

現在、独立後に創業した弊社「モノグサ」はSaaS(Software as a Service)事業をしており、既存顧客の対応はカスタマーサクセスが担当していますが、当時、私がリクルートに在籍していたころは、既存顧客も営業が担当していました。

売約済みの札が貼られた車
※写真はイメージです
何度も足しげく訪問した新人時代

既存顧客がほとんどで、しかも競合劣位の状態でしたので、そのころはとにかく足しげく顧客のところに通って、顔を見せるという営業スタイルで仕事をしていました。

なぜそうしていたかと言うと、「顧客のことを気にしている」というアピールのためもあったのですが、本当の目的は、現場に赴くことで顧客の一次情報を集めたかったからです。

競合劣位ということは、自社が提供する商品だけでは顧客の課題を解決できない状況であることを意味します。当時の現状としては、競合商品のほうがよいということですから。

そのような状況だったため、顧客に対して、商品からは独立した問題解決を提案することで信頼関係を構築したいという考えがあって、そのためにはどれだけ顧客のことがわかっているかが大切だと思ったのです。

また、私はまだ新人だったこともあり、担当する顧客数に制限がありました。

20社も回れば、すべての顧客を回れてしまうような感じでした。

そのような状況で取れる行動は、足しげく、何度も訪問するくらいしかなかったのです。ですから営業としてキャリアを歩み始めた初期のころは、「3回」どころか、それをはるかに超える、かなりの訪問回数をこなす営業をしました。

最低何回行けば売れるのか

その後、高校向けの教育事業(現在のスタディサプリ)に移ったのですが、20社どころか、取引先が1校もない状態から始まりました。要するに新規事業で、私は一人で商品販売と事業開発に従事していたのです。

全国に高校は約5000校あります。一人で全部回るのは不可能です。しかも、商品を作っていた最中でしたので、オンラインで広告を打てば売れるという状況でもありません。高校に直接訪問させてもらって、商品の説明をしつつ、ニーズも探らないといけないフェーズでした。

営業が訪問するしかなかったので、「では一人あたりどのぐらいの効率で回ればいいか」ということを真剣に考えました。もちろん1回の商談で受注することが理想なのですが、もしも商談1回で売れる商品なら、それこそマーケティングツールを活用してオンラインで売ればよいのです。

それができないので人が営業することにしたわけであって、「では最低何回行けば売れるのか」ということを考えたのです。

まずいったん顧客に情報を伝えなければならないし、導入する価格もそれなりに高かったので、伝えた情報を顧客が吟味する時間も必要です。

これらの事情をすべて考慮したうえで、「だったら何回がよいのか」といったふうに考えていき、3回目の商談で受注するのが最も効率的だろうという結論に至りました。これが、弊社で実践している「営業スキル検定」の原型になっています。

ただし、これは今の弊社の営業スタイルであり、弊社の市場に合ったやり方です。「これが唯一絶対の正解」ではありません。

あくまで一例ですが、具体的な進め方を以下に説明したいと思います。

オフィスで握手する2人のビジネスマン
※写真はイメージです
初回訪問で話すこと
初回訪問は顧客に自覚的になってもらう

初回訪問では、商談に1時間いただくというのを前提として、営業活動を設計しています。

最初の20分ほどは、ほぼ一方的にこちらがしゃべります。その20分では、プロダクトと自社の価値を伝えます。その後20分、Q&Aの時間を設けたあと、最後の20分でヒアリングを行います。

ヒアリングでは、顧客の目標、現状などを聞いていきます。

ここで重要なことは、情報を聞き出すことよりも、「課題に対して顧客に自覚的になってもらうこと」です。すなわち、顧客に自身が課題に気づいたと感じてもらうということですね。

「ああ。自分は困っているのかもしれない。そしてその困りごとの解決に、この人が提供してくれるものが役に立つのかもしれない」と思ってもらった状態で初回訪問を終えるのが、初回訪問の目標になります。

初回訪問で1時間半も2時間も時間をもらうというのは難しく、私の感覚では30分から長くて1時間です。

30分であれば、以上のプロセスを10分ずつに区切って実施することになります。

「なかなかやるな」と思わせる提案が必要
2回目は実現時の障害について合意し、対応策を話す

初回訪問で顧客が課題に対して自覚的になれば、次回訪問のアポ(アポイントメント)を取ることができます。1週間後など、2回目の訪問について具体的な日時を決めて、それまでにヒアリングした情報をもとに提案を用意します。

初回訪問でもらった質問に対して「なかなかやるな」という期待を超えた提案が必要になります。この提案で確実に期待を超えることが求められるのです。

その提案によって、顧客から「それならぜひやりたいね」という合意を取りつけることが目標になりますが、そのためのポイントがあるのです。

顧客の期待を超える提案を持っていけば、必ず「それはいいね」となるのですが、しかし「いいんだけどね」とも言われるのです。営業が提案したことを、顧客の社内で実現しようとすると、必ず障害が出てくるということです。

その障害について合意形成しながら、どうやって乗り越えるかを説明する(カウンタートークと言います)ことが、2回目訪問後半における最大のポイントになるのです。

2回目の訪問も、おそらく最長で1時間ぐらいになるかと思います。前半30分で提案、後半30分は実現時(営業の提案導入時)に発生する障害とその対応について話をするという内訳になります。

その中で、顧客の社内における意思決定フローや組織図、稟議りんぎの進め方、(商談に参加されている方以外で)他に誰に説明する必要があるか、なども確認します。

打ち合わせをするビジネスマンのグループ
※写真はイメージです
担当者に「営業のフォロワー」になってもらう

商談で対面している相手が意思決定者であれば、2回目でクロージングすることも可能ですが、だいたいにおいては担当者であり、その後社内検討と意思決定者への説明があることが普通です。

そこで2回目の訪問の商談後半が重要になってくるわけです。実現への障害とその対応策について一緒に検討した相手であれば、「営業のフォロワー」になってくれることが普通だからです。

そうなれば、3回目の訪問の場をセッティングしてもらえますし、3回目で、営業と一緒になって、意思決定者を口説いてくれるようになります。「3回目に向けての作戦会議」のようなことが2回目の終わりに行われれば、2回目訪問の目標が達成できたと言えるでしょう。

絶対的な営業スタイルは存在しない

以上が、営業が対面で商談をする際に最も効率的なパターンです。逆に、1回で商談が決まるような商品であれば、わざわざ営業が商談しなくても、営業をつけずオンラインで売るほうが効率的だと言えます。

竹内孝太朗『営業スキル検定』(かんき出版)
竹内孝太朗『営業スキル検定』(かんき出版)

また商談が2回で決まることもありますが、そのような場合は、最初から意思決定者に会えたという例外的なケースがほとんどです。

ということで、対面営業が必要な商品では、3回でクロージングするのが理想的な展開であり、まずはそれを目指すのがよいでしょう。

ただし、重要なことなので繰り返しますが、絶対的な営業スタイルというものは存在せず、商品の価格や顧客側の意思決定の階層数など、様々な条件で訪問回数も変わってきます。

以上の3つの段階を踏むのが一般的ではありますが、例えば2回目訪問で実施すべきことを、何回かに分けて行うこともあります。

ぜひ、以上の弊社の実践例をみなさんにとって最適なものにアレンジし、取り入れてみてください。

竹内 孝太朗(たけうち・こうたろう)
モノグサ代表取締役CEO
名古屋大学経済学部卒業。2010年に株式会社リクルートに入社し、「カーセンサー」領域にて広告営業を担当。2011年に中古車領域として初めて、かつ最年少で全社営業部門の表彰である「TOPGUN AWARD」を受賞。2013年からは「スタディサプリ」にて高校向けサービスの立ち上げに関わり、営業として2度目の「TOPGUN AWARD」を受賞。2016年に畔柳圭佑(モノグサ株式会社 代表取締役CTO)と共にモノグサ株式会社を共同創業。モノグサ株式会社では、営業パーソンのスキルを体系化し、営業に必要な42のスキルを言語化。それに基づく独自の育成スキーム「営業スキル検定」を考案し、メンバーの育成に活用している。

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