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大切なのは固定観念の払拭。私の世界を明るくした「ボディポジティブ」

  • 2024.12.4

自分の身体に自身がある人って、いったいどのくらいいるんだろう。私は自分の顔も身体も一向に好きになれない。「ルッキズム」なんて言葉が日本でも市民権を得て他人の見た目に対してとやかく言ってはいけない、という考え方が浸透しつつあるとは言え、SNSでは外見至上主義の人たちの主張が毎秒飛び交っている。

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成人して見た目をからかわれる機会はぐっと減ったものの、小学生の頃は毎日のように見た目に対して悪口を言われていたのでそもそも「自分のことを好きになるなんて、どんだけ自分に自信がある人なんだろう」と思っていた。

私は物心つく前からとにかく太っていた。いや、現在進行形で太っている。標準サイズが着れないぐらい、と言えばなんとなく理解してもらえるだろうか。ぽっちゃり、なんてかわいらしい言葉では片づけられないくらいにデブだ。自分でもその自覚はあるし、だからこそ「太っているからみんなからからかわれるんだ、太ってる自分が悪い」と本気で思っていた。現に「痩せれば文句言われないんだからダイエットすればいいじゃん」と言われた事は何度かある。ぐうの音も出ない正論ではあるものの、その正論に傷ついてきた。ダイエットをした事がないわけじゃない。大人になって順調に体調を落としていた時期があったものの、体調を崩してしまいその治療に伴う服薬であっという間に減った分の体重は戻ってしまった。どんなに苦労しても痩せられないのかと悲しくて、泣いてばかりいた時期もある。そんな頃、ボディポジティブという言葉を知って、自分の世界が少しずつ明るくなり始めた。

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体のサイズや肌の色にとらわれず「ありのままの自分の身体を愛そう!」という力強いメッセージは自己肯定感の低い私にとって本当に衝撃的だった。痩せていて肌の色が白く、綺麗にメイクをして身だしなみも抜かりない人こそ美しい、私はその対偶にいる、と思い続けてきたから「どんな自分でもいいんだよ」と言われてもそんな風にはどうしても思えない。

「太っているのにおしゃれしてるなんて」と思われるのが怖くて、制服以外でスカートは履いた事がなかったし、メイク用品も手にした事がなかった。それでも興味がなかったわけじゃない。本当はずっとかわいい服を着てメイクをしてファッション誌を読みたかった。

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他人からの視線が気になって大人になっても出来なかった事に取り組んでみる事にした。ファストファッションの大きいサイズを取り扱うコーナーには様々な年齢層の人がいてみんな楽しそうに服を選んでいる。それを見てクスクス笑っている人なんていなかったし、それぞれが思い思いに買い物を楽しんでいる姿を見て「私もおしゃれしていいのかもしれない」とほんの少し勇気をもらう事が出来た。

今も自分の身体が大好き!とはどうしても言えないけれど、昔の私と比較して女性らしい服装を楽しめるようになった。メイクはまだ苦手意識が強いので勉強中だ。最近ではプラスサイズの服を取り扱うブランドも、ふくよかな体型のモデルさんも増えた。体型だけでなく「メイクをしない自由」や「ヒールを履かない自由」も少しずつ市民権を得て見た目に対する多様性が増えてきたと肌で感じる。

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大切なのは個人の意思であって「こうでなければいけない」という固定観念を取り払っていく事だ。何色が好きでもどんな体型であっても人に迷惑をかけない「好き」のカテゴリーをのびのびと表現できる世の中であって欲しい、と苦しい十代を過ごしてきたひとりとして心から思っている。

■仲村 和華のプロフィール
本と美味しいものが大好き、カラオケの十八番は欧陽菲菲の「ラブ・イズ・オーヴァー」。曲の好みにしてはまだまだ子供舌の持ち主のアラサー。

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