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紫式部『源氏物語 二十八帖 野分』あらすじ紹介。継母の美貌にノックアウトされた夕霧。父と同じ過ちを犯してしまうのか…!?

  • 2024.12.3

平安時代の恋愛物語として有名な『源氏物語』ですが、古典作品であり難しく感じる方も多いかもしれません。身近に感じられるように、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第28章「野分(のわき)」をご紹介します。

『源氏物語 野分』の作品解説

『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

「野分」は野分(台風)が吹き荒れる六条院の女君を見舞う夕霧が、嵐のどさくさに紛れて女君の姿を垣間見ていくというストーリーです。父・源氏と違い生真面目な夕霧は、恋愛事にあまり関心がなく、初恋の雲居雁一筋でしたが、「野分」では美しい女性たちを垣間見てドキドキする15歳の少年らしい一面が描かれます。若かりし頃、父・桐壺帝の妻である藤壺に恋をして過ちを犯した源氏とは反対に、夕霧は美しい継母にときめく己を戒めます。そのわずかな夕霧の変化を見抜き、紫の上の姿を見たことを察知した源氏の抜け目ない一面も窺い知ることができます。また、夕霧が垣間見た紫の上、玉鬘(たまかずら)、明石の姫君の美しさは、桜・山吹・藤の花にたとえられ印象的でこの章の見どころにもなっています。

これまでのあらすじ

源氏に引き取られた玉鬘は世の評判となり、求婚者も多くいた。その中には、実の姉とも知らずに玉鬘に恋をする内大臣の息子・柏木もいた。一方、内大臣に引き取られた近江の君の評判は悪く、内大臣からもぞんざいな扱いを受けていた。玉鬘は、養父である源氏からの求愛に苦心しながらも、源氏に引き取られた幸運を感じ、徐々に源氏に心を許し始めていた。

『源氏物語 野分』の主な登場人物

光源氏:36歳。玉鬘への恋心を抑えることができず、玉鬘を困らせる。 紫の上:28歳。源氏の妻。六条院の南の御殿に住んでいる。 秋好中宮:27歳。冷泉帝の后。源氏の養女であり、里下がりをしている。 玉鬘:22歳。源氏に引き取られた養女であるが、実の娘ということになっている。 夕霧:15歳。源氏の実子。生真面目な性格で、初恋の雲居雁を思い続けている。 明石の姫君:8歳。明石の君と源氏の娘。

『源氏物語 野分』のあらすじ

秋を迎え、秋好中宮の住む御殿の庭には様々な秋の草木や花で彩られ、見事な眺めであった。中宮はこの景色を気に入って里下がりをしていたが、例年になく恐ろしい野分(台風)が秋の花盛りの中を吹き荒れてきた。

野分のお見舞いで六条院の南の御殿を訪れた夕霧は、散ってしまった花を残念そうに眺める紫の上の姿を垣間見てしまう。風がひどく吹く中、紛れようもなく気高く清らかな姿の紫の上は、春の曙の霞の中で咲き乱れる樺桜(かばざくら)のようで、夕霧は目を離すことができない。父が自分を紫の上に近づけないようにしていたのは、これほど美しい紫の上を目にしてはよくない感情を抱きかねないと警戒していたからだと理解した。その後、三条宮の祖母を見舞うが、垣間見た紫の上の姿が脳裏に焼き付いて離れない。自分が間違いを犯すのではないかと恐ろしくさえ感じた。

夕霧は源氏の使いとして秋好中宮を見舞った後、南の御殿(紫の上と源氏のいる御殿)に戻るが、几帳越しに感じる紫の上の気配だけで胸の高鳴りを抑えられず、思わず目をそらしてしまう。夕霧がぼんやりとしている様子に気が付いた源氏は、直感的に紫の上を垣間見たのだろうと察知した。

源氏は秋好中宮・明石の君を見舞った後、夕霧を伴って玉鬘のもとを訪れた。何とかして玉鬘を一目見たいと思う夕霧は、御簾の隙間から覗き見たふたりの姿に驚きを隠せない。源氏と玉鬘が寄り添う姿はあまりに馴れ馴れしく、親子を超えた関係なのではないかと疑ったがそんなことを考える自分の心すら疎ましいと思った。そして、紫の上には及ばないが、玉鬘もまた八重山吹が咲き乱れる中に露がかかった夕映えのような美しさであると心を奪われた。

お見舞いに回って気疲れした夕霧は、明石の姫君のもとを訪ねた。紫の上の御殿からまだ戻っていない姫君を待ちながら、雲居雁に宛てた手紙を書いて過ごした。姫君が戻ってくると、普段はそれほど興味もないのに、垣間見た人と比べてみたくなって、几帳の隙間から覗き見た。藤の花が風になびく美しさを思わせる姫君の姿は、まだか細く可憐であるが、年頃になればさぞ美しく成長するだろうと思うと、日頃は生真面目な夕霧であるが何やら落ち着かない気持ちになった。

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