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ポメリーと日本料理、次世代のシャンパーニュを 造るイベントが京都で開かれた

  • 2024.12.4

編集部&PJフレンズのブログ

ポメリー
ユーン氏による「京都大原鹿肉」と「ミレジメ グラン・クリュ2006」

2024年、シャンパーニュのポメリーは、マダムポメリーによる史上初のブリュット誕生から150周年を迎えた。

それを記念して、過日、京都のラグジュアリーホテル「THE SHINMONZEN」にて、「京都𠮷兆」の徳岡邦夫氏と「Jean-Georges at THE SHINMONZEN」のハナ・ユーン氏による4ハンズディナーが開催された。

 

左が「THE SHINMONZEN」のハナ・ユーン氏、右が京都「吉兆」の徳岡邦夫氏
「京都吉兆」の徳岡氏と「THE SHINMONZEN」のユーン氏は見事なコンビネーションを見せた

ポメリーとのコラボについて徳岡氏が話す。

 

「コロナ後、世界中の人達の価値観に変化が現れました。それはよりヘルシーなものへの志向です。具体的には、肉も食べるが、出来るだけ野菜や魚を求めるようになりました。その思考の変化により、世界のシェフ達は、日本の感覚を取り入れたいという傾向が強くなっています。料理の世界においては、世界中が日本ナイズされたように見えます。

その一方で、コロナ後の飲料業界はあまり変わっていないように感じています。そこで、『世界中の次世代の人達が求めるシャンパーニュを、健康的で美容にも良い日本的な価値を持つ料理と共に作っていきませんか』とポメリーのオーナーであるナタリー・ヴランケン氏にもちかけました。すると、わざわざ京都吉兆の嵐山本店にお越しになり、様々な話をさせて頂き、その結果、この長期プロジェクトがスタートする事になりました。

実際には、ポメリーのオーナーや醸造責任者に、日本料理や価値を知ってもらう為に来日してもらい、季節を変えて計4回、京都吉兆嵐山本店にてガラディナーを開催予定です。1回目は昨年の秋でした。

また、各都市でその地域のトップシェフ、トップソムリエ、有識者を集めワークショップを開催して、意見交換をし、情報の共有を行ってマーケットのリサーチも実施。最初のワークショップは、嵐山本店にて、メディアを集めてスタートアップの記者会見と共に。2回目は、東京にて、トップシェフやトップソムリエ達が集まり意見交換。そして、今回の京都が3回目となります。

価値観を共有して、日本料理とシャンパーニュの相性を追求したシャンパーニュを、熟成期間も含めて14年後にリリースする事を目標に取り組んでいます」

そんな遠大なプロジェクトなのだ。ハナ・ユーン氏も、

「ジャン・ジョルジュは日本に来た時が、もっとも料理の影響を受けるということを常々話しています。そういう意味では、徳岡さんとのコラボは何よりも興味深いです」

吉兆側から白ぐじの焼き物
徳岡氏による「白ぐじ1時間昆布〆片面炭焼」と「キュヴェ・ルイーズ2006」
2.ユーンシェフの鹿料理を覗き込む徳岡氏。
ユーンシェフの鹿料理を覗き込む徳岡氏

ジャン・ジョルジュ側からは3品、有名な「エッグトースト」、大原産鹿肉のロティ、かぼちゃのデザート、京都𠮷兆側からは4品、河豚の三種、蛤汐椀、白ぐじの焼き物、温かい柿のスープが出された。

それに対して、供されたシャンパーニュは5種。ポメリー アパナージュ ブラン・ド・ブラン、ポメリー アパナージュ ブリュット1874、ポメリー キュヴェ・ルイーズ2006、ポメリー ミレジメ グラン・クリュ2006、ポメリー アパナージュ ブラン・ド・ノワールという、夢のようなラインナップだ。

 

料理は各品について述べたいところだが、各シェフからの一皿ずつに限定する。

京都𠮷兆の白ぐじだが、徳岡氏によれば、

「和歌山の白甘鯛を1時間だけ昆布で締め、水分を飛ばして昆布のうま味を程よく染み込ませ、皮目だけを炭で芳ばしく焼いてレアーに仕上げています。蕪は、京北町の無農薬有機栽培で、京都吉兆用に作って頂いているもので、鶏汐出汁でしっくり炊き上げ、仕上げに片面だけ芳ばしく焼き、白甘鯛に添えました。仕上げに、鶏汐出汁のあんを掛けています。

鶏汐出汁は、室町時代に由来する魚の汐出汁の技法を応用して、鶏と昆布で作り出した京都吉兆独自の出汁です。

そしてさらに、クリーミーさがあった方がシャンパーニュとの相乗効果も良いので、男爵イモのマッシュを加え、青味は菊菜、香りは、胡麻が主体の自家製七味をアクセントで加えました」

合わせたのはポメリー キュヴェ・ルイーズ2006。白や赤のワインと違って、シャンパーニュは香りも味も繊細だ。よって、料理とのマリアージュも繊細さを要求される。

傑作と称されるキュヴェ・ルイーズに対して、炭の香ばしさを感じさせる甘鯛、それとクリーミーなマッシュポテトの組み合わせは見事だった。

続いてジャン・ジョルジュの鹿肉の一皿。ハナシェフが解説する。

「京都大原の鹿肉を燻製したベーコンで包み、鹿のソースを添えました。付け合わせはクリーミーなキャベツです。それと梨はシナモンとアニスと共にポーチング(ブイヨンでゆっくりと煮ること)したものです」

合わせたのはポメリー ミレジメ グラン・クリュ2006だ。このヴィンテージは赤ワインを思わせる力強さがあって、鹿の血の味やシナモンやアニスとまさによい相乗効果をあげていた。

ポメリーと京都吉兆のコラボレーションは、14年後の抜栓まで続く。

 

 

文:Toshizumi Ishibashi

Profile

石橋俊澄 Toshizumi Ishibashi「クレア・トラベラー」「クレア」の元編集長。現在、フリーのエディター兼ライターであり、Premium Japan編集部コントリビューティングエディターとして活動している。

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