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「大切なお知らせがあります」私を大人にしてくれた彼らの選択

  • 2024.12.3

2021年3月。あの時の温度、匂い、空気は一生忘れないと思う。

◎ ◎

3月のある金曜日、私が人生で一番愛しているアイドルのファンクラブから「本日16時に大切なお知らせがあります」とメールが来た。

「大切なお知らせ」、この文字だけでは詳細な内容まではわからない。
きっといい知らせなはずだ、大丈夫、めちゃくちゃ嬉しい"いい"お知らせに違いない。
そう自分に何度も言い聞かせたが、心のどこかではもうわかっていた。
いつか来ると思っていた"その時"がついに、まさに今、来てしまったのだと。

◎ ◎

体温がどんどん下がり、目の前が暗くなり、匂いも何も感じなくなる中で、16時から上司とのミーティングを終わらせた。リモートだったけど「顔白くない?大丈夫?」と思いやってくれた上司ありがとう。

定時までの2時間、考えないようにするためにひたすら手を動かした。週明け月曜日に有給休暇を取っていたので、その分の仕事も終わらせた。
今考えると、用事も特にないけど取った有給休暇だったが、何か本能的に感じていたのかもしれない。

◎ ◎

そして18時、仕事を終わらせてファンクラブサイトのお知らせを見た。
信じたくはなかったが、思っていたとおり、解散のお知らせだった。
アイドルが嫌になったわけではない。不仲なわけでもない。それぞれがそれぞれの人生を尊重したからこその、前に進んでいくための選択。
文句の付けどころのない、完璧なお知らせだった。
大好きな人たちがグループを、ファンを愛してくれているのだと、改めて実感させてくれる文章だった。

大好きな人たちが下した決断への納得の気持ち。
どんな風になってもずっと一緒にやっていてほしかったな、でも中途半端なことを許さないプロ集団である彼らはそんなことしないよなという諦念。
彼らが揃って何かをする姿は、もう期限付きでしか見られないのだという寂しさ。
こうして誠実に言葉にして伝えてくれる彼らのことが大好きだなと思う気持ち。
これらがないまぜになって、ただひたすらにお風呂で泣いた。

◎ ◎

母には「いい大人が泣いて~」と茶化されたが、その"大人"になれたのは彼らのおかげなのだ。
背伸びして入った高校で課題がつらいときも、孤独に大学受験の勉強をしていたときも、就職先が決まらなくて絶望していた時も、いつだって彼らと彼らの音楽に救われてきた。
なんで、どうして、と縋り付いて泣きたい気持ちもあったが、彼らのおかげで、彼らの決断を応援できるくらいには大人になれたのだ。

翌日には、同じグループが好きな友人と別のグループが好きな友人たちと遊んだ。
同じグループが好きな人としか分かり合えない語らいも、別のグループを好きだからこそ出てくる新しい視点の意見も、解散を飲み込むためには必要だった。
おいしいイタリアンで泣きながら食べたパスタの匂い、カフェでミックスジュースをかき混ぜながら「解散しないでほしいよぉ~」と管を巻いたときの景色。
3年以上経った今も、鮮明に思い出せる。

泣いて泣いて、気持ちを整理して残ったのは、彼らに幸せでいてほしいという気持ちと、彼らを心配させないようにしっかりと生きないといけないなという決意。
その気持ちで胸がいっぱいになって上を向いた時の空、吸い込んだあの冷たい空気や匂いを私は忘れない。
忘れたくても忘れられない気持ちを教えてくれた彼らが、ずっとずっと幸せでいてくれることを願う。

◎ ◎

追伸

解散から3年経った今、あのときは想像もしてなかった未来が広がっているので、みなさん、やっぱり人生って生きてみるもんです!

■みーこのプロフィール
現実と非日常の反復横跳びに勤しむ会社員。

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