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平安時代の移動手段で「丸見え」になるものって何?貴族が使う「牛車」の乗り心地ってどうだったの?

  • 2024.12.18

*TOP画像/隆家(竜星涼)、武士たち 大河ドラマ「光る君へ」 46話(12月1日放送)より(C)NHK

 

『光る君へ』ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は平安時代における「移動手段」について見ていきましょう。

 

「牛車」に乗ることが認められているのは貴族だけ。乗れる牛車は身分によって違う

牛車(ぎっしゃ)が日本に広まったのは9世紀頃といわれています。牛車は従五位下以上の貴族のための乗り物でした。当時の貴族にとって牛車は現代でいうところの自動車のようなもので、牛車で内裏に出勤したり、恋する女性のもとに遊びに出かけたりしていました。

 

牛車と一括りにしてもいくつかの種類があるだけではなく、乗る人によって付き添い人の数も違います。また、今でこそお金があれば誰でも高級車に乗れますが、身分制度が根付いていた当時は身分によって乗れる牛車が決まっていました

 

ここで、平安時代における牛車の種類を見ていきましょう。

 

・唐車(からぐるま)

唐車は最上位の牛車で皇后、関白などが乗る牛車。屋根のようなかたちが特徴。

 

・檳榔毛の車(びろうげのくるま)

檳榔毛という植物を糸状にしたもので車体を編んだ牛車。白っぽいカラーが特徴。大納言や中納言といった公卿が乗っていた。

 

・糸毛車(いとげのくるま)

車体が色糸で覆われており、柄が入った洒落た見た目が特徴。女性らしいデザイン。中宮や東宮、高位の女官などが乗っていた。

 

・網代車(あじろぐるま)

平安京内をもっともよく走っていた牛車。檜皮や竹で車体が覆われていた。大臣以下の公卿が乗っていた。

 

【牛車の乗り心地ってぶっちゃけどうなの?】

牛車は乗り心地がよいものではなく、酔いやすかったそうです。タイヤは木製ですので、走行中は車輪のギーギーという音が響きます。

 

また、牛はゆったりと歩く動物なので牛車の速度は遅く、牛車に乗るよりも自分で歩いたほうが速いと思われます。

 

牛車が集まるエリアでは牛同士がケンカすることもあったそうですよ。貴族たちは祭りを牛車の中から見物することもありましたが、こうした場では牛同士のケンカが起こることもあったそう。

 

【家紋のはじまりは牛車だった!?】

かつて、日本人は着物や道具入れなどさまざまなものに家紋を入れていました。家紋のはじまりは平安時代で、公卿たちが自分の牛車に目印としてつけた印であるといわれています。

 

当時、公卿はどこかに行く際に牛車に乗って移動していたため、多くの人が集まる場所では牛車が集まることもありました。自分の牛車がどれかすぐに分かるように家紋をつけたのです。

 

平安時代には牛車以外にもさまざまな移動手段があった!

平安時代においても貴族を中心に人の移動は多くありました。例えば、中下級貴族は紫式部の父・為時とその家族のように国司の任務に就くため長距離の移動をしていましたし、貴族の中には都から現在の滋賀県や奈良県までお参りに出向く人も多くいました。

 

『光る君へ』にも旅の場面はいくつも描かれており、まひろがほとんど整備されていない道を歩くシーンや船に乗るシーンもありましたよね。また、現在、まひろは都を離れ、大宰府を訪れています。

 

ここでは、平安貴族がどのような乗り物に乗っていたのか見ていきましょう。

 

・船

川を渡るときは船に乗っていた。平安時代、石山詣が流行していたが、都から石山寺に行くときは逢坂山を越えた後、琵琶湖の打出浜から船に乗るルートが一般的。貴族の船には屋根がついている。まひろたちが越前に向かうシーンでは、彼女らが乗る船には当時の船に倣って屋根がついていた。

 

・輿

女性が長距離の移動をするときは、人が担ぐ輿に乗っていた。

 

・輦車(れんしゃ)

内裏の中で皇太子が移動する際に使われた。輦車は人が引いていた。

 

・馬

貴族の男性が急用で出かける際は準備がほとんど必要ない馬に頼っていた。また、女性は旅中に馬に乗ることもあった。

 

参考資料

池沢理美(著)、 遠藤慶太(監修)『学習まんが 日本の歴史(5)貴族の栄華』講談社、2020年

砂崎良 (著)、承香院 (監修)『平安 もの こと ひと事典』朝日新聞出版、2024年

京樂真帆子『牛車で行こう!: 平安貴族と乗り物文化』吉川弘文館、2017年

網本光悦『決定版知れば知るほど面白い!家紋と名字』西東社、2011年

 

 

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