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紫式部『源氏物語 二十七帖 篝火』あらすじ紹介。少しずつ変化する玉鬘の源氏への思い。父娘の危うい関係はどうなるのか?

  • 2024.12.2

平安時代の恋愛物語として有名な『源氏物語』ですが、古典作品であり難しく感じる方も多いかもしれません。身近に感じられるように、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第27章「篝火(かがりび)」をご紹介します。

『源氏物語 篝火』の作品解説

『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

「篝火」とは、夜間の照明や警護のためにたく火のことです。消えかかった篝火のほのかな明かりに照らされた玉鬘(たまかずら)に、源氏は「篝火に立ち添ふ恋の煙こそ世には絶えせぬ炎なりけれ(篝火とともに立ちのぼる恋の煙は、私の永遠の恋の炎なのです)」と熱烈な恋の歌を詠み恋心をアピールします。それに対し、玉鬘は「行方なき空に消ちてよ篝火のたよりにたぐふ煙とならば(篝火の煙のついでに立ちのぼる程度の恋の煙なら、空に消し去ってください)」とさらりとかわすあたりに、玉鬘のセンスを感じます。聡明で機転の利く女性は、平安貴族にも魅力的に映るのですね。

これまでのあらすじ

源氏に引き取られた玉鬘のもとには多くの求婚の手紙が届けられていたが、養父の源氏は玉鬘の婿を決めかねていた。源氏自身も玉鬘に惹かれ、ことあるごとに玉鬘に近づいて口説いては、彼女を困らせていた。一方、内大臣に引き取られた近江の君の評判はよくない。早口でせっかちな言動を厄介に思った内大臣は、弘徽殿女御に教育を任せることにした。

『源氏物語 篝火』の主な登場人物

光源氏:36歳。玉鬘への恋心を抑えることができず、玉鬘を困らせる。 玉鬘:22歳。夕顔と頭中将(現内大臣)の子。現在は、源氏の養女となっている。 内大臣:玉鬘の実父。源氏とは若い頃から友人でありライバルでもある。 夕霧:15歳。源氏の実子。初恋の雲居雁を今もなお思い続けている。 近江の君:内大臣の娘として引き取られたが、品がなく評判が悪い。 柏木:21歳。内大臣の息子。玉鬘が実の姉であることを知らずに恋心を抱いている。

『源氏物語 篝火』のあらすじ

内大臣が実子として引き取った近江の君は、世間のお笑い種になっていた。よく調べもせずに引き取ったのに、都合が悪くなると大切に扱わない内大臣のやり方を非難する源氏の話を聞きながら、源氏に引き取られた自分の幸運を感じる玉鬘であった。玉鬘は源氏の求愛に困ってはいたが、強引に迫ることはなく思いやりを持って接してくれる姿に、次第に心を許し始めていた。

秋の風が吹き、物寂しくなった源氏は玉鬘のもとに足しげく通い、琴の手ほどきをしながら過ごすことも増えた。その日も、ふたりは琴を枕にして寄り添っているうち、夜が更けてきた。人目を気にして源氏が帰ろうとすると、庭の篝火が消えかかっていた。ほのかな光に照らされた玉鬘の美しい髪に触れ添い寝をしながら、それ以上進まない関係の苦しさを歌に詠んだ。

その時、花散里のいる東の対で夕霧と柏木たちが笛と箏(そう・琴の一種)を鳴らしている音が聞こえた。使いを出して彼らを呼び寄せ、夕霧が笛を吹き、源氏も交じって琴を弾いた。御簾の中で、実の姉とも知らず思いを寄せる玉鬘が聞いていると思うと柏木は思うように琴を弾くことができないが、玉鬘は柏木の父譲りの見事な演奏に聞き入っていた。

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