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たった5分で効果を実感できる…片付けが苦手すぎる発達障害の女性が編み出した"日本一意識が低い"片付け法

  • 2024.12.2

ADHDやASDといった発達特性を持つ人は、片付けが苦手という傾向がしばしばみられる。自身も発達特性を持ちつつナレーター、声優として活躍する中村郁さんは「私たちが部屋をきれいに保つのはかなり難しい。さまざまな工夫や助けを借りる必要がある」という――。

※本稿は、中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

散らかった部屋で頭を抱えている女性
※写真はイメージです
片付けが苦手な人のためのゲーム

ADHDを持つ人は片付けが苦手な人が多い、と言われています。例外なく、片付けが苦手な私ですが、こんなゲームがあることをお片付けのプロである知人から教えていただきました。それは、「ミンスゲーム」。アメリカのミニマリストが考案した「ミニマリズムゲーム」の略です。

ルールはとってもシンプルです。その日の日付の数だけ、ものを手放していくのです。例えば、7月1日であれば1個、7月15日であれば15個、というように。そもそも、部屋が片付かない最大の原因は、ものが多すぎるから。それならば、単純にものを減らしていけばいいのです。

やるべきことを先延ばしにする私でも、ゲーム形式にしてしまえば楽しく取り組めるのではないか、と思い、早速やってみました。しかし、当然ながらすぐに挫折しました。

4日目、その日は4つのものを捨てなければならないのにサボってしまったのです。翌日に持ち越してしまったので、5日目は前日の4つと合わせて、9つ捨てなければなりません。こうなったらもうおしまいです。さぼればさぼるほど、雪だるま式に捨てるものは増えていきます。私のミンスゲームは、静かに幕を閉じました。

1日に1個自分の持ち物を手放す「1つ捨てゲーム」

そこで私が考え出したのが、「1つ捨てゲーム」です。楽しそうなミンスゲームですら挫折してしまう方のために「1日にたった1つ必ずものを捨てる」というルールに変えてみました。

何でもいいから、自分の持ち物を毎日1つ手放す。たった1個なんて簡単だわ、と思いますよね。たった1つ簡単に捨てるだけでも、1カ月で30〜31個捨てることになるのです! 十分じゃありませんか。

毎日1個捨てるというルールだから、たとえ何日か忘れてしまっても、加算されるのは1日1つずつなので取り返すことも簡単です。

とにかく私たちは、ハードルを高く設定しないことです。できることをコツコツと。ミンスゲームならぬ、「1つ捨てゲーム」で、いきましょう。

発達障害を持つ人の中には、片付けや整理整頓が極端に苦手な人がいます。子どもの頃の私は、学校の引き出しはぐちゃぐちゃ、部屋もぐちゃぐちゃ。「片付けなさい!」という言葉を何度言われたことかわかりません。今でも整理整頓に関しての悩みはつきず、インスタグラムに出てくるスッキリと片付いたおしゃれな部屋に憧れ続けています。

二つのゴミ袋を手に、ゴミ捨て場に向かう女性
※写真はイメージです
ゴミ屋敷にしないための3つのポイント

でも、現実的に整理整頓は難しい。かといってゴミ屋敷に住みたいわけではないので、発達障害の私たちにもできる重要なポイントをいくつか紹介します。

完璧を求めようとしない

完璧を求めてしまうと、少しでも乱れてきたら一気にやる気を失ってしまいます。先ほど紹介した「1つ捨てゲーム」を活用し、継続的にものを減らしながら、常に80%の状態を目指しましょう。会社のデスクも同様です。

自分一人で無理なときは人に頼る

ゴミなどが増えてきて自分一人ではもう無理だと判断したときは、人に頼りましょう。私は焼き肉をおごるからとの名目で、何度も友人に助けてもらいながら部屋を片付けたことがあります。自分では、今目の前にあるものが必要なものなのか、必要でないものなのかの判断がつかないときでも、他人の目からはさっと判断してもらうことができます。

床に落ちているものを拾う

当たり前だと思われますが、最も重要なことです。とりあえず、足の踏み場があればいいのです。床のものを拾い上げてください。そして、ひとまとめにしましょう。きっちりしなくても構いません。きっと、ゴミも落ちているはずです。拾って捨てましょう。

ただ、たとえ床のものを拾うだけのことでさえも、できない日があります。それでも、そんな自分を責めてはいけません。責めれば責めるほど、どんどん落ち込んでしまいます。

整理収納アドバイザー2級の資格を取ったのに、整理整頓することができなかった私が見つけた、日本で一番意識の低い片付け方法をご紹介しました。

苦手なことはさっさとプロの手に任せる

今、私の家は壊滅的な状態です。仕事が立て込んでいるため、散らかりまくっていて、見るも無惨な状態になっています。恐らく今の私の家の状態を見たら、ほとんどの人が泥棒か空き巣が入ったあとなのではないか、と思うことでしょう。

あれもこれも完璧にすることはできません。1つのことをはじめると他のことまで手は回りません。優先順位をはっきりさせ、目の前にある課題を確実に1つ1つ終わらせていく。それでいいのです。あれやこれや手を付けると、何ひとつうまくいかなくなります。

そんなこんなでこの部屋は壊滅的に散らかってしまったので、もはや私一人の手では片付けることができなさそうです。このようなときは、私はお掃除の業者さんに、家の中を一掃してもらうことにしています。苦手なことは、プロの手に任せることが一番です。

お掃除をプロに任せることに抵抗がある方もいるかと思います。それくらい自分でやれよ、と周りの人から思われるのではないかと。でも、そんなことを気にする必要はありません。あなたは、髪の毛を自分で切りますか? 切ろうと思えば切ることはできるでしょう。しかし、ほとんどの人がプロに任せますよね。

お料理が苦手な人が、料理を必ずしも克服しなければならないことはありません。外食したっていい。お弁当を買ってきてもいいんです。できないことは、プロの力を借りていいのです。

何にお金を使うかは、自分が決めることです。多くの人が普通にできることができない自分を責めないでください。ときには開き直りも必要です。どんな人にも、得意なこと、苦手なことはあるのです。

こんまりメソッドを反映したきちんと片付いたワードローブ
※写真はイメージです
5分間続けてみると不思議なことが起きた!

いきなりですが、今私の家の台所のシンクには、洗い物が山積みになっています。由々しき事態です。早く取りかからなければ……。

見て見ぬふりをしてしまう。あなたもそんな経験はありませんか? ADHD特有のこの先延ばし癖。かつての私は、先延ばしの天才でした。実はシンクに虫がわいたことさえあるのです……今はそういうことはありません。とっておきの方法を見つけたからです。

それは「作業興奮」を活用すること。作業興奮とは、ドイツの心理学者エミール・クレペリンが提唱したもので、「やる気がない状態でも、一旦行動をはじめると、やる気が出て、簡単に継続できるようになる心理現象のこと」です。

実際にはどうするかというと、とにかく5分だけやってみるのです。全部片付けようと思わなくてもいいので、タイマーを5分間設定し、とりあえずやってみる。

すると、あら不思議! タイマーが鳴る頃には、その作業に没頭しはじめ、作業をもっと続けたくなり、気がつけば1時間も経っている、という現象が起きるのです。

実際、私も重い腰を上げ、ようやく洗い物をはじめると、だんだん楽しくなってきて徹底的に台所を掃除したくなり、ピカピカに磨いて、さらには冷蔵庫の中まで掃除してしまうということがよくあります。

これは、掃除だけでなく、仕事や勉強、運動などにも活用することができます。締め切りが迫っている仕事を先延ばししていませんか? とりあえず、全部やらなくてもいいからタイマーをかけて、5分間やってみてください。5分経つ頃には、作業が捗ってきていることを実感できると思います。

始めてはみたが無理なときの秘策

発達障害ではないビジネスパーソンも、この作業興奮を活用してお仕事をされている方が多いそうです。ということは、「過集中」という特性のある私たちは、この作業興奮を活用することにより、他の人よりもものすごい力を発揮することができると思いませんか? 活用しない手はないですよね。

さて、作業興奮についてひとしきり語ったところで、私も今すぐタイマーをかけ、シンクの洗い物に着手したいと思います。

人は誰しもやる気がわかないときがあります。とりあえず5分だけやってみたら作業興奮により、やる気がわくことを前項でお伝えしましたが、それでもやはり、やる気がわかないことがあります。

とりあえず5分やってみて、全然エンジンがかからない場合、それは今やるべきではないことです。嫌々やってもいい成果は出ません。一旦やめてしまいましょう。私も気分が乗らないときは、散歩したりコーヒーを飲んだりして、一旦気持ちをリセットします。

ただし一旦リフレッシュしたり、日にちを変えて再チャレンジしたりしても、一向にやる気が出ないこともあるでしょう。それは、あなたには向いていないことなのかもしれません。思いきって手放してしまう勇気を持ちましょう。

ジグソーパズルの閃きのパーツがはまる瞬間
※写真はイメージです
ときには思い切ってやめる勇気も大切

私はナレーションの講師の仕事もしています。プロのナレーターになりたいという人に教えているのですが、ときどきまったく練習しないでレッスンにやってくる人がいます。そういう人は、ただちに別の道を探したほうがいい、と私は思っています。本当にやりたいことなら、必ず練習するはずです。

中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)
中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)

人間ですから、気分の乗らないときはあるでしょう。でも、まったく練習しない、いつまで経っても気分が乗らないのなら、完全に向いていない、ということです。一向にやる気が起きないことは、自分には向いていないものとして思いきって手放してしまいましょう。やめる勇気も、ときには大切です。

自分が選んだ道だったとしても、軌道修正が必要になることがあります。無理矢理しがみつく必要はありません。一度きりの自分の人生です。あなたの人生はあなたが主役です。誰に何と言われようと構いません。

思いきって「やめる」という選択をすることもまた、あなたの毎日を改善させることに繋がります。

以上が、片付けが苦手すぎる私が実践する整理術です。発達特性のある人はもちろん、そうでない人にも参考になれば幸いです。

中村 郁(なかむら・いく)
ナレーター、声優
注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)併存の診断を受けた発達障害当事者。幼小時より過剰に集中しすぎてしまう「過集中」に悩まされる。この特性が災いし数々のアルバイトをクビになり「社会不適合者」の烙印を押されるが、偶然が重なりナレーター事務所に所属。もう絶対にクビになりたくないという強い想いから、発達障害を持ちながらも大きなミスをしないための数々のライフハックを生み出した。現在は、全国ネット番組のナレーションを多数務めつつ、発達障害の理解を広める執筆、講演活動を精力的に行う。著書『発達障害で「ぐちゃぐちゃな私」が最高に輝く方法』(秀和システム)。

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